2021年1月10日に開幕を果たした日本発、そして世界初のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」(Dリーグ)の記念すべきファーストシーズンは、現時点で早くも全12ラウンド中の8ラウンドが終了した。
このシーズン真っ只中に、Dリーグ唯一のガールズチーム、「USEN-NEXT I’moon」のディレクターRuuと、チームメンバーのAIRIの取材が叶うということで、自称“心のダンサー”である筆者はまさに胸を踊らせて、この日を待った。
取材準備として「I’moon」の数々の演技動画やドキュメンタリー映像を繰り返し見ているうちに、心がループを描きながらぐんぐんと「I’moon」を好きになってゆくのを感じ、動画を通してメンバーの息づかいや、発散されるパワーがリアルに迫ってきて胸が高鳴る。久しぶりに、何かをとても好きだと思える幸せな感覚を思い出し、取材日の朝、晴れやかに自覚する。「今、自分はI’moonに夢中なのだ!」と。
◆【インタビュー後編】Dリーグ唯一のガールズチーム「I’moon」が超えていくもの 「ダンスで新しい世界を」
■チームディレクター・Ruuが歩んできた道のり
「I’moon」を率いるディレクターのRuuは3歳からダンスを始め、2016年に世界最大のダンスコンテスト「WORLD OF DANCE」で日本人として初優勝、翌2017年には2連覇を果たし、その後も「Britain’s Got Talent」や「Asia’s Got Talent」、「インド国際映画祭」など世界各国でパフォーマンスを行ってきた、名実ともに日本髄一の名ダンサーである。
また、コレオグラファーとしてもAKB48やIZ*ONE、GFRIENDを始め、多くの舞台やミュージカルを手掛けてきた。だがこの華やかなる経歴はもちろん、生半可な努力や覚悟では到底獲得できるものではない。これまでの道のりはいったいどんなものだったのか。
Ruuは麗しい笑顔で語る。「10代から25歳くらいまでは、まず自分で行動するしかない手探りの連続で、どうしたら知ってもらえるのか、どうしたら生き残っていけるかと、とにかく挑戦の日々でした。日本でも海外でもひたすらコンテストに出て踊って結果を出し、闘い続けなければ道はなかったです。でも、自分の負けず嫌いな性格が功を奏して、なんとか続けてこられたと思っています」
ダンスに言葉はいらない。しかし10代の若さで、異国で開催される世界最大のダンスコンテストに、特に大きな後ろ盾もなく乗り込む日本人女性としての心構えはいかほどのものだろうか。頼れるものは修練を重ねた肉体と、自分を信じる心だけ。挑む先で待ちかまえるのは、トップレベルの挑戦者達が集結した、実力のみが試されるいっさい甘えのない世界だ。
「挑戦をつづける中で、時には負けてしまい、色々なことが上手くいかず本当にメンタルの危機を感じた事もありました。そんな時は、日本で応援してくれている親や仲間を想うことでなんとか心を支えていたと思います」
■「こんなに可愛くて踊れる人たちがいると世界に知らしめたい」
Ruuが発するバイブレーションは、やわらかで女性的ながら非常にポジティブで力強い。これからDリーグでプロフェッショナルとして活躍していく、AIRIを始めとした平均年齢17歳の「I’moon」チームメンバーに、ディレクターのRuu自らが切り開いてきた、経験と実績に裏打ちされたプロフェッショナリズムが大いに伝播し、影響することは間違いない。素敵なメンターと共に進む「I’moon」への期待感が高まる。
前述したとおり「I’moon」はDリーグで唯一のガールズチームである。
他のチームが男性のみ、もしくは男女混合で試合に臨むなか、スピードやスタミナ、ダイナミズムなどの点において、男性の持つ筋肉や身体能力との違いがハンデとはならないのだろうかと率直な疑問が湧く。当たり前だが、これが短距離走やジャンプ、もっと顕著な例としては重量挙げなどの比較的シンプルに身体能力を争うスポーツ競技だとしたら、男女の差は歴然なのだから。
しかしRuuはここでも、にこやかな笑顔で言い切る。
「まだ、思ったような結果を出せていませんが、いつだって絶対に勝つつもりで、一番になるつもりで臨んでいます。男女の筋肉の違いはあっても、女性の武器である美しさやしなやかさで、どのように人を惹きつけられるかを考え、それを最大限につかいます。
日本でこんなに可愛くて踊れる人たちがいると世界に知らしめたいし、これまで男性が多かったダンス界にガールズチームを作ることは長年の夢でした。そして何よりも、頑張る日本の女の子たちのために、夢の選択肢を増やしたいのです」