【モータースポーツ】三菱自動車「ラリーアート」復活の青写真予想

1981年からの三菱自動車のモータースポーツプログラムの呼称となったRALLIART

三菱自動車がかつて同社のモータースポーツブランドとして使用していた名称「ラリーアート」を復活させると発表しおよそ3カ月。しかしその全容については、いまだ何も聞こえて来ない。そこで、三菱パジェロが大活躍した「パリダカ」などの事情に詳しく「SPREAD」へも寄稿している三菱自動車OB、コラムニストの中田由彦さんに、気になる点を編集部が聞いた。

◆三菱自動車の魂 RALLIART がラリーに還る日

■ラリーアートブランドの戦略とは……

「おそらく慎重にタイミングを計っているのだと思います。以前の記事でも書いたとおり、まずは用品ブランドとしての再スタートとのことですが単独ではインパクトが弱いと思います。おそらく……この冬に日本でも発売するという」新型アウトランダー」に絡めて何かしらの動きが見えるのではないかと思います」。

となると、新型アウトランダーにラリーアート・バージョンが登場するのだろうか。

「十分に考えられると思います。それを更にユーザー自身が手を加えられる余白も作って、ラリーアートブランドのパーツでグレードアップしたりカスタマイズしたりと。アウトランダーの発売だけ、ラリーアートパーツの発売開始だけと別々にトピックを立てるのではなく、相乗効果を狙ってくる気がします」。

2007年、ダカール・ラリーに参戦した三菱のパジェロエボリューション (C)GettyImages

それだけでは、まだまだインパクトに欠ける気がするが、さらなる戦略はあるのだろうか。
「そうですね。ラリーアートブランドの用品は『幅広い車種に設定したい』ということも株主総会で発表されています。貴重な売れ筋のデリカD:5エクリプスクロスなどは同時、あるいは短いタイムラグで設定されると思っています。さすがに商品ラインアップが少ないとは言え全車種にラリーアートパーツを設定するのは無理があるでしょう。しかし同時に、現行車種ではありませんがランサーエボューションシリーズのユーザーのフォローにパーツの復刻も望みたいですね。これからも大事に乗ってくださいと」。

■三菱ラリーアートチームの実戦復帰

三菱自動車の「エース」と言えば、「ランエボ」ことランサー・エボリューション。果たして、その復活はあるのだろうか。「ハイパフォーマンス車の復活はまだまだ先じゃないでしょうか。そもそもエボリューションを名乗らせるとしても、何に対してのエボリューションなのかも大事です。ランサーなくしてランエボなし……でしょう」。

その先にあるのは、もちろん三菱ラリーアートチーム実戦復帰。ファン待望の復帰はあるのかだろうか。
「ファンの最大の関心はそこでしょうね。私は『ある』と考えています。5月にブランド復活を発表した時点で具体的な実戦復帰の青写真もできていると思います。おそらく技術センターで、かつてモータースポーツ車両開発を行っていたスタッフを中心に少なくともリサーチは先行していると思いますし、スケジューリングもされているでしょう。末端ながらも三菱自動車の企業文化に触れたOBの一人として言わせてもらえば当然やっているはずのことです。業績回復から成長軌道に乗せるためにラリーもやる。そのためにウェポンとしてラリーアートの復活を選んだ。三菱自動車らしさを具現化すると言うのはそういうことだと思います」。

ランサーエボリューション VI 2001 モンテカルロラリー優勝車 撮影・2002 年パリダカ増岡浩優勝報告会/茨城県土浦市)

そうなると、やはり実戦復帰の舞台は、もっとも得意とする「ダカール・ラリー(元パリダカール・ラリー:パリダカ)」か、それとも1年間を戦う「世界ラリー選手権WRC)」だろうか。「さすがに企業としてそこまでの体力が回復しているとは言えないでしょう。そして、ダカール・ラリーもWRCも基本的に『ヨーロッパのためのイベント』なのです。個人的にはダカール・ラリーやWRCに出場して欲しいとは思いますが、ヨーロッパでの販売網を整理…三菱車を販売する国をほぼ半減させる経営計画が進行中では厳しい、と」。

そうすると、復活の舞台に三菱はいったいどのステージを選ぶだろうか。「私はアジア、ASEAN地域のクロスカントリーラリーではないかと想像しています。三菱はASEAN地域を現在の経営計画でも成長エンジンと位置づけています。早くからASEAN各国での販売網の整備や生産設備の増強、輸出拠点化と投資を行ってきたことから三菱へのシンパシーも強く、それはモータースポーツにおいても同じで強力なラリーアートの支持基盤です。また電動車開発の一環として2013年から15年まで、技術支援という形態でしたがアウトランダーPHEVを送りこんでいますから一定の情報の蓄積もあるでしょう。成長エンジンのASEANにラリーアートというブースターを投入する、もうこれしかないだろうと。だとすれば、『実戦復帰は2023年のアジアクロスカントリーラリー(AXCR)』というのが私の予想です。コロナ次第、という前提はありますが……」。

実戦復帰となると、出場車両は新型アウトランダーが最有力と見るべきだろうか。「日本だけを考えたらそれがベストかもしれませんが、ASEAN地域での実戦復帰となれば現地で生産している人気のピックアップトラックトライトン」が有力だと思っています。三菱は以前少量ですがトライトンをタイから輸入し販売したことがあります。現行車も日本への輸入を求める声はありますが実現には至っていません。そのトライトンも2022年にモデルチェンジが計画されているのが明らかにされており、新型では日本の法規対応を行って台数限定で販売されるのではないかと。ラリー出場は当然そのプロモーションのためにです」。

最後に実戦復帰の青写真として、その時期はいつになるのか。2022年か、はたまた2023年か。「モータースポーツは『1年休めば3年は遅れる』と言われています。今はそれ以上かもしれませんし、逆に電動化で差は小さいのかもしれません。しかし組織も解体してしまった三菱の場合、その立て直しからになります。ダカール・ラリーやWRCのためのヨーロッパの実戦部隊と運営を担ったラリーアート(旧)は既にないので、技術センターのスタッフが実績のあるチームとのジョイントでの参戦が現実的だと思います。また2023年は、実戦復帰に向けたマーケティング上のターゲットにもできるのではないかと。それは2023年が1983年のパリダカに三菱が初出場してから40周年の節目の年です。このタイミングは狙ってくるのではないか、という希望的観測に過ぎませんが……」。

日本の主要産業と言えば、やはり自動車。そして、かつてはトヨタ、三菱、日産と3大メーカーとして並び称された一角、三菱がモータースポーツに復帰する意味は大きい。ましてや、ラリーアートというブランドを復活させての動きだけに、わくわく感は隠せない。ましや順当に行けば2021年、「ラリー・ジャパン」の再開が見込まれるだけに、その大舞台での走りも期待される。三菱自動車の「ガッツ」が見られるのか、今しばし待ちたい。

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◆【著者プロフィール】中田由彦 記事一覧

著者プロフィール

中田由彦●広告プランナー、コピーライター

1963年茨城県生まれ。1986年三菱自動車に入社。2003年輸入車業界に転じ、それぞれで得たセールスプロモーションの知見を活かし広告・SPプランナー、CM(映像・音声メディア)ディレクター、コピーライターとして現在に至る。


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