松岡修造がテニス解説中に”黙る”理由…「会場でポツンと見ている感覚にするのが、僕の役割」

2018シーズン最後のグランドスラム、全米オープンテニス。8月27日~9月10日までWOWOWが連日独占生中継する。同中継の解説を担当するのはおなじみ、松岡修造さんだ。

修造さんは、様々な層にテニスの楽しさを伝えるために解説にも工夫を加えている。それは、メディアに対する姿勢からも読み取れた。

インタビューが始まる前に、「参考までに、説明するうえでこういう言葉があったら嬉しいな、というのがあったら教えてください。僕がもしそちら(取材する)側だったら、どういう言葉があると嬉しいのかを知りたいんです」と記者に尋ねてくれた。

「伝える」側としての矜持(きょうじ)。どうすれば幅広い層に適切に伝わるのか、修造さんは常に考え続けている。

全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、そして全米オープン。国際テニス連盟が定めた上記4大会の総称「グランドスラム」。

これらの大会の存在は知っていても、試合自体はまだ見たことがないという人は意外と多い。そうした人にどういったアピールができるのかを尋ねてみた。

解説に正解はない

修造さんにとって、「真面目にテニスを伝えるのは一番簡単」なのだという。しかし、WOWOWの番組では「あえて」解説を特殊にやっているのだとか。

「日本人選手の活躍でテニスを初めてみてくれる人が多くなってきた。その人たちが面白く、わかりやすく感じなければだめ。そこは僕がポイントとしておいているところ」

解説も、手探り状態だ。「何が正解なのかわからない」状態の中、伝える方法を紆余曲折しながら手繰っている。

「僕はテニスをしていたからテニスの面白さを知っていますが、テニスをしたことのない人からすればテニス専門番組を楽しんで見ることは難しいと思う。そこが今後、雑誌も含めてどうすればもっとテニスを見てもらえる方向にいくのか。それが僕の役割だと思っている」

「僕はテニスの才能はないけれど、解説に関してはオールマイティにできると思っている」と修造さん。どういったやり方でも解説できるからこそ、どういった方向で解説すべきか悩むのだ。

「例えば、熱い感じを好む人もいるし、WOWOWさんのような番組では昔からのやり方で番組を見続けている人がいる。そのあたりを邪魔しない中間ラインを保つべきなんでしょうけれど…」

自分なりの答え探しは、これからも続いていく。

一つの「手応え」

修造さんが現段階で有効だろうと感じているやり方が一つある。それは、試合を解説する上で「予測」をしっかりとすることだ。

「今はこういうゲーム展開で、次はこういう風になります、と。このショットがここで決まればどうなるとか。そういったことを誰にでもわかるように説明すれば、(試合を)また見てくれるようになるはずです」

見ている人が、(テレビの前で)止まってくれる瞬間をつくること。それが、伝える上での義務になりつつあると思います」

「たとえ相手選手が得点でリードしていても、錦織圭選手が実は主導権を握っていることなどが、僕は経験や雰囲気から分かりますが、一般の人は分からない。それを、僕ははっきり言う。感覚から予測するのではダメ。理由を説明する。『今、彼の心はこうなっていて、彼のテニスはこうなっていく。だから、必ず今の打ち方でコートにボールが入ってくるようになる』といったように。数字や確率も大事です」

最終的には、「一緒に松岡修造になって選手の中に入っていける」ようになることが理想形だという。錦織選手を応援しているのであれば、もはや錦織選手に「なる」感覚だ。

「ミスしたら、ため息をついて『何をしているんだ』と文句を言ってもいい。もちろん、圭はそうなっちゃだめ。ラケットを投げたくても、一所懸命ガッツポーズして気持ちを作らなければいけない」

「でも、見ている人はOK。悔しいだろうな、とかそういうのを感じながら試合を見て欲しい。(選手に)感情が入ってくれたら、試合の流れとか、なぜ試合がこうなっているんだ、と深いところを解説する可能性もある」

また、修造さんが「いつ黙るか」という部分にも注目だ。修造さんは試合中に突如解説をやめ、黙る瞬間があるのだとか。

これは、修造さんが一言も発しなくても「お客さんが試合の雰囲気を感じられている」瞬間なのだという。この時間に突入したときは、実況からの呼びかけにも反応しないことがあるのだとか。

「この瞬間は、言葉がいらないところだと僕は思っている。本来、見ている人には解説が存在しないわけです。会場でポツンと見ている感覚にするのが、僕の役割です

全米オープンと他の大会の違い

現地まで赴き、雰囲気を伝えていく修造さん。他の大会とは異なる、全米オープンならではの魅力を語ってくれた。

「全米オープンは、(会場だけではなく)テレビを見ている人にもわかるほど会場がザワついているんですよね。静かなウィンブルドンとは違ってガヤガヤしている」

「大人であればビール片手に試合を見たくなるような雰囲気がある。それは、アメリカが作ってきた自由にエキサイトしていく文化というか。エンタメ性をお客さんが作り出していくんです

2016年全米オープンの様子 (c)Getty Images

「観客によって作りあげられる試合」

アメリカの雰囲気、考え方、文化を13歳から知っている錦織選手は、この大会に「ピタッとはまる」のだという。アメリカ人から深く認識されていることも、大きな要素だろう。

テニスの良さとは何か

改めて、テニスの良さを修造さんはこう語る。

「テニスは、『ミスしてもオッケー』というスポーツ。そのミスが、どういうミスであるか。そこが見どころ。希望が見えないミスもあれば、『ナイスショット』というミスもある。失敗をどう自分の中で受け止め、次に生かすか。それが大事。サービスエースよりもミスが多くて勝つことだってあります。試合の流れや相手の調子もある。数字を大事にするけれどもそれだけじゃ評価できないところもある」

「見てもらえるとわかりますが、あんな小さいボールを、体を動かしながら時速200kmで打つなんて本当に難しい。そもそもミスするのは当たり前。普通に狙って入るのが奇跡に近いんですよ」

≪全米オープンテニス放送予定≫
・全米オープンテニス
・8/27(月)~9/10(月)WOWOWにて連日独占生中継
※第1日無料放送
※9/1(土)の第5日(7:30~15:00)無料放送

《取材・撮影・編集:大日方航》

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