【スーパーフォーミュラ】主役が次々と移り変わる、2021年最終戦の“濃い”2日間

チームタイトルを勝ち取ったインパル(C)JRC

ドライバーズタイトルが既に決定し迎えた今季最終戦、他のスポーツでは“消化試合”という言い方を良くされるが、そんな退屈な1戦とはならないのがスーパーフォーミュラ。予選、決勝と、興味深いドラマが連続で展開され、実に内容の濃い週末となった。

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■松下信治、第2戦から1台体制で参戦するも大健闘

最初のドラマの主役は松下信治ビーマックス)。ビーマックスはまだ参戦5年目の新興チームで、F3では強豪チームであったもののトップフォーミュラの壁は厚く、初年度はテールエンダーのポジションを余儀なくされた。そこで何か改革が必要だと考えたチームは2年目からレース界のレジェンド本山哲を監督に招き、3年目はドイツのモトパークとタイアップ。そのあたりから徐々に上位に顔を出すようになる。4年目の去年はポール1回と表彰台1回。だが、その結果にはラッキーな一面もあり、まだ強さは感じられなかった。

今季はコロナ禍により予定していた外国人ドライバーの来日目途が立たず、オフのテストも不参加。シーズン通しての不参戦も示唆された中、ビーマックスは松下を起用し1台体制で第2戦から参戦を開始した。その出遅れはトップフォーミュラでは致命傷で、第2戦はそこまで積み重ねてきたものがすっかり崩れてしまった印象だった。

ところがその逆境が力になったのか、第3戦からは目覚ましい活躍ぶりを見せ表彰台を2度獲得。そしてこの最終戦では、チャンピン野尻智紀無限)を中心とする拮抗した戦いの予選で見事、ポールを奪取した。松下の今回の速さは本物で、ドライコンディションの下での30周のスプリントレースということであれば、チーム初優勝の可能性はかなり高いと思われた。

ところが迎えた決勝では、スタートから4周目までは順調にトップを走るも、そこからドラマは急展開。あろうことかジャンプスタートの判定が下され、ドライブスルーペナルティで一気に最下位へ。松下本人も気づかなかったほど、それは微妙なものだった。かくして「逆境を盛り越え、シーズンの最後に栄冠をつかむ」という美しいドラマは、わずか4周後に終焉を迎えた。

■インパルとダンディライアンのタイトルをかけた熱戦

そのドラマを誰よりも期待していた私はここで一時放心状態となったのだが、そこから始まったもうひとつのドラマに再び釘付けとなった。まだ決定していなかったチームタイトルの争いが、ヒートアップしていったからだ。トップのインパルと、追うダンディライアンの差は4ポイント。ダンディライアンは福住仁嶺が3位スタート、牧野任祐が4位スタート、インパル平川亮が9位スタート、関口雄飛が14位スタートということで、流れはダンディライアンの逆転タイトルに傾いていた。

だがレースは、徐々に様相を変えていく。ダンディライアンは牧野が後退も福住がトップ浮上、対するインパルは平川が2位、関口も健闘していたことでチームタイトル争いは接戦となっていった。関口はオーバーカット狙いでピットインを引っ張ったため、実質どのポジションにいるのか分からなかったからなおさら。ペースは良かったのでポイント圏内にいることは間違なさそうだったが、ギリギリタイトルを守れるかどうか、計算上はかなり微妙だった。

そして関口がラスト4周のところでピットインし、4位で復帰したところでインパルのチームタイトルが決まった。名将、星野一義監督のインタビューでシーズンが締められたというのは、筆者世代は特に感無量。予選からレース後のフィナーレまで興奮しっぱなしの最終戦だったが、思えば開幕戦からスーパーフォーミュラではずっと、そんなスリリングな戦いが展開されてきた。

シーズンわずか7戦しかないというのが、実にもったいなく思う。来季のカレンダーに勝手ながら期待を寄せるのだった。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。


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