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【スーパーGT】ARTA NSX優勝の陰で粘るニスモGT-R シーズン中ハンデ差が最も大きい第6戦のドラマ

【スーパーGT】ARTA NSX優勝の陰で粘るニスモGT-R シーズン中ハンデ差が最も大きい第6戦のドラマ
写真は2014年の10月5日、SUPER GT第7戦から (C)Getty Images

秋が一気に深まり、スポーツシーズンは終盤戦へと突入、スーパーGTも第6戦を迎えた。

8戦中の第6戦は、シリーズの分水嶺となる1戦だ。なぜなら順位に応じて課せられるサクセスウェイトハンデが第7戦、第8戦では軽減ざれるため、この第6戦が最もハンデ差が大きくなるから。

ランキング下位でハンデの軽いチームにとっては、チャンピオンの権利を残すことができるほぼラストチャンス。ランキングが上のチームにとっては、上位入賞が困難な状況でポイントを積み上げることができれば、それは非常に価値あるポイントとなる。

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■注目したチームは

今回注目したのが、開幕2戦をノーポイントと最悪のシーズンスタートを切ったニッサンのエースチーム、ニスモGT-R松田次生ロニー・クインタレッリ)。3戦目も2ポイントのみで、もはやこれまでかと思った次の4戦目で優勝し、崖っぷちから蘇った。

今季ニッサン勢が全体的に不振な中でさすがエースといったところだが、そこまでのポイントがほぼないに等しかった。その中で、タイトル争いに残るためには最低でももう一度、表彰台クラスの結果が必要になっていた。

過去のレースを見る限り、GT-Rは今回の舞台オートポリスが得意であるはず。本命は開幕から速さを見せるホンダ勢の中で運悪く結果に恵まれずランキング下位にいるARTA NSX野尻智紀福住仁嶺)、無限NSX笹原右京大湯都史樹)、ナカジマNSX伊沢拓也大津弘樹)あたりと見るが、果たしてこの中に食い込めるかどうか……。

■トップタイムを出したタイヤを温存

ニスモGT-Rは早速土曜日午前中の公式練習で期待に応え、トップをマークし本命のホンダ勢を上回った。その要因といえるのが、気温が低かったことと昨年オートポリスでGTは開催されずデータ不足だったことで多くのチームがタイヤに不安を抱えていた中、ミシュランタイヤが絶好のパフォーマンスを発揮したことだ。この勢いで予選でもポールが獲れれば、表彰台はおろか今季2勝目を挙げランキングトップに迫れる可能性は高くなる。

ところが予選は意外にも5位。終わってからドライバーに話を聞いたところ、2種類持ち込んだタイヤの中で、公式練習でトップタイムを出したタイヤを予選では使わなかったという。トップ8のグリッド順を決めるQ2でアタッカーをつとめたロニー・クインタレッリはこう語った。「最後まで悩んで決めた。公式練習でトップタイムを出したタイヤのフィーリングは非常に良かったが、決勝のロングランに不安があった。今回はタイトル戦線に残るためにとても大事な1戦。安定して上位を狙うためには、この方が良いと判断した」。絶対に落とせない戦いだからこその判断だったのだ。

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■2位以下の混戦でニスモGT-Rの強さ

こうして迎えた決勝。序盤はホンダ勢がトップを争うことになり、その中から後半になりARTA NSXが完全に抜け出し、スーパーフォーミュラにて王者決定となった野尻智紀組が優勝。2位以下は混戦。そこで強さを見せたのがニスモGT-Rだった。

実はニッサン勢はレース中エンジントラブルに悩まされていたらしく、時折ストレートで失速するシーンを複数のGT-Rで見た。想定外のトラブルにより目標の表彰台に赤信号が灯っていたのだ。それを補ったのが、決勝を見据えた的確なタイヤ選択とドライバーの強さ。混戦の中、エンジンの不調でポジションは上下することになったが、要所要所で持ち前の強さを発揮し最後は3位到達。ランキングはこれで5位に浮上した。

トップとは23ポイントの大差があるが、トラブルがありながらもしっかりと使命を果たしたその強さを見る限り、大逆転タイトルの可能性もあるかと思えた。

残り2戦、この日の結果がものを言うか、まだまだ見ものだ。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。