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「彼女は私たちのMVP」富士通に16年ぶり2度目の歓喜 宮澤夕貴がもたらした意識改革とプレーオフで示した存在価値【Wリーグ】

「彼女は私たちのMVP」富士通に16年ぶり2度目の歓喜 宮澤夕貴がもたらした意識改革とプレーオフで示した存在価値【Wリーグ】
ファイナルで平均19.7得点を記録した宮澤 写真:永塚和志

毎年、優勝がなかば宿命づけられたチームでは自分が脇役に徹していても十分に勝ちきれるだけの、圧倒的な”スターパワー”が揃っていた。

しかし、2021−22シーズンに移籍をした彼女は、新天地の富士通レッドウェーブを王座につかせるために主役の1人になることが求められた。

15日夜。Wリーグファイナルの最終・第3戦目が行われ、初優勝を狙うデンソーアイリスを89-79で破った富士通が16年ぶり、通算2度目のリーグ制覇を果たした。

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■溢れ出た万感の思い

このファイナルで平均19.7得点を記録した「彼女」、宮澤夕貴はENEOSサンフラワーズ所属時の2018-19シーズン以来、2度目のプレーオフMVPを受賞した。

万感の思いが、溢れ出た。ファイナル挑戦4度目にしてようやく頂点に立ったチーム13年目の生え抜き、町田瑠唯は湧き出してくる涙を抑えることができない。その町田を、宮澤と林咲希が互いの隙間がなくなるほどに固い、喜びの抱擁を交わす。

林も町田と同様に感極まっていた。宮澤は試合中には見せない大きな笑顔と長い腕で2人を包みこんだ。

富士通に来て3年目。30歳の宮澤は、7度もリーグ優勝をしているENEOSでの経験を生かしながら、2014−15以降、3度ファイナルの舞台に立ちながらいずれも敗れていた富士通を、頂点に立たせてみせた。12月の皇后杯(全日本バスケットボール選手権大会)を制したデンソーも、初のリーグ優勝に向けて激しい戦いぶりで挑んできたが、同軍の中心・髙田真希は宮澤や林といった王者になる術を知る選手たちが差を生んだと語った。

「町田選手もそうですが、宮澤選手、林選手など優勝を経験している選手たちは勝負どころがわかっています。宮澤選手は(ファイナルで)3Pを落とさなかったイメージがあり、気迫も感じましたしプレーも乗っていました。3戦とも出だしで自分たちが後手に回ってしまうことも多かったですし、決めるべき選手が決めています。自分たちとは違って優勝の経験をしている選手がいるというのは、こういう場面では強いと感じました」(髙田)

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プレーオフを制した富士通レッドウェーブ 写真:永塚和志

■取り組んだ意識改革

では「優勝の経験」というのは、いかなるものなのか。宮澤らがもたらしたものの1つが、勝者の心構えとでも呼べる厳しさではなかったか。常勝チームから来た宮澤は当初、富士通でのチームの取り組みに甘さのようなものを見た。勝つためにはそれを変える必要があると感じ、実行した。

例えば、練習の中では選手間の声は通りやすいかもしれないが、声援や音楽のある試合時に同じように行くかはわからない。だから「もっと声を出さないと通らないよね」(宮澤)と、伝えた。また、1本のリバウンドやルーズボールを実直に取りに行くことなど、細かいことの徹底もした。

富士通のホームページの選手紹介では、チームメートの伊森可琳が宮澤のことを「バスケに対する意識はチーム1」と評しているが、今年の宮澤はコートを離れた普段の生活態度も競技につながるのだとチームに話していたそうだ。

「プライベートでも気を使えないとディフェンスもできません。例えば飲み物を飲んだら片付けるとか、これまでは細かいことをしっかりできていなかったので、やろうと」(宮澤)