「彼女は私たちのMVP」富士通に16年ぶり2度目の歓喜 宮澤夕貴がもたらした意識改革とプレーオフで示した存在価値【Wリーグ】

■主役の座を張ってきた町田

ファイナル後に先発の5人すべてが登壇した記者会見では、テーブスHCが林に向けて「キキ(林のコートネーム)、オールラウンダーになったよ」と労いの言葉をかけた場面も、印象的だった。

富士通は、生え抜きとして13年間プレーをしてきた司令塔・町田が長らく「主役」を担ってきた。卓越したパス能力を持ち彼女こそがこのチームのオフェンスを回す、絶対的な選手であるということに変わりはない。

しかし、今はここに宮澤と林というまた別の、特別な質を持った選手たちが加わり、他とは違う富士通のバスケットボールの中で「脇役」からやはり「主役」へとなり町田と並ぶ柱となったことで、チームは強さを得た。今季のリーグ制覇は、何よりもその証左だ。

一方で、富士通が圧倒的な強さで頂点にまで駆け上ったわけではなかった。今季のレギュラーシーズンで17年ぶりに全体1位の戦績(23勝3敗)を挙げはしたが、下には4敗のチームが3つ(デンソー、ENEOS、トヨタ自動車)が並び、その下だったシャンソンもポストシーズンでセミファイナルまで勝ち残った。富士通はそのセミファイナルでシャンソンを相手に、そしてファイナルではデンソーに対してそれぞれ2勝1敗でなんとか勝利を収めたのだった。

レギュラーシーズンで「ベスト5」入りした林咲希 写真:永塚和志

■潮目が変わりつつあるWリーグ

Wリーグは2008−09からENEOSがリーグ11連覇を果たし「一強」の時代から、次の領域に入っている。選手の移籍が容易にしたり、日本の在留期間が通算5年以上ある外国籍の選手を日本人と同等に扱う規則ができたことなどで、より多くのチームにポストシーズン進出や優勝の可能性が与えられるようになている。

このことは、裏を返せば優勝などが簡単には手に入らないことを意味するが、選手たちもより激しい競争に勝ち抜いてこそ掴む栄冠にこそ意義があると考える。

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「ファンとすれば一強よりも見るのが面白くなりますし、やってる私たちも勝つか負けるかわからない勝負のほうがやりがいを感じます。ENEOSにいた時は勝って当たり前でした。もちろん勝てば嬉しいのですが、(今は)1つの勝ちに対しての思いの種類が違います」(宮澤)

女子バスケットボール界随一の「言葉を持つ」選手として知られる髙田は、選手移籍を容易にする規則の変更などを彼女たち選手らが求めてきたことが、今につながっていると強調した。

「移籍の問題とかいろんなことがあるとは思いますが、自分たちで変えていく、変えなきゃ盛り上がらないと思いながらやってきましたし、そういう信念を持った人たちがたくさんWリーグに集まっているからこそ変えられたのかな、強い気持ちを持って戦えているんじゃないかなと思います」(髙田)

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