■「アースのパスセンスは特別」
宮澤は、優勝を請け負うために富士通に来たといっても過言ではない。もっとも、彼女の富士通で求められた役割はENEOSでのそれとはかなり様相を変えていた。
宮澤がいた時のENEOSには渡嘉敷来夢や大崎佑圭さんらがいて、よりインサイドを強調したスタイルだった。つまりは、渡嘉敷らがリング近くでボールを持てば相手のディフェンダーが複数彼女に寄る。宮澤はそういった時にオープンとなって、磨いてきたワンハンドでの3Pシュートを放ち、それを決めてきた。
しかし、富士通はまったく異なるゲームを展開するチームだった。オフェンスではより流動的に人とボールが動きながら、かつトランジションから相手の守備体制が整わないところからの得点機を図っていた。BTテーブスヘッドコーチは、自ら指揮を執る富士通には「めちゃくちゃ強い選手はたくさんいない」とし、その中で宮澤にはそれまで以上に攻守でオールラウンダーになることを要求してきた。
Wリーグ入り前はセンターとしてプレーしていた身長183cmの宮澤は、リング近くでのポストアップからの得点を必要とされない富士通ではより様々な形での得点などが求められるようになった。
「アース(宮澤のコートネーム)にはコーナーステイ(コートの隅に位置取りノーマークの3Pを打つのを待つこと)とか単純な役割じゃなくてもっとやらないとだめだと思っていました。そのためにはスキルアップが必要で、そのへんはアシスタントコーチの2人とよく頑張ってくれました」(テーブスHC)
テーブス氏はまた「アースのパスセンスは、このサイズの選手としては特別だと思う」と述べながら、彼女パス能力の向上がチームを底上げしたと示唆した。富士通は宮澤が加入したばかりの2021-22にもファイナルに進出し、トヨタ自動車アンテロープスを相手に力の差を見せつけられて、0勝2敗で敗れ去っている。このシリーズでの宮澤は平均18.5得点、8リバウンドは記録したものの、アシストは平均0.5を挙げたにすぎなかった。今回のファイナルでは、同4本のアシストをマークした。
■「富士通の宮澤」へ変貌
以前の富士通は町田の「パッシングに頼りすぎていた」とテーブスHCは話したが、ファイナルでのアシストの数を見比べても、宮澤が真の意味で「富士通の宮澤」へと完全に形を変えたことを意味すると言えるかもしれない。
10日にWリーグは、レギュラーシーズンの各賞受賞者を発表したが、町田と林が選ばれた一方で宮澤は「ベスト5」から漏れてしまい、いくらかの議論が起きた。これを受けてテーブスHCは自身のX(旧ツイッター)で「彼女は私たちのMVPであり最優秀コーチでもある。チームのみんながわかっている。彼女は他人の評価など来にしていない。彼女はチャンピオンシップで勝つことしか考えていない。それが彼女を特別な存在にしている」とポストした。
受賞ができなかったことを宮澤が特段気にしたところはなかったものの、テーブス氏のポストは彼女への最大限の礼賛だったし、プレーオフのMVPを手にしたことで「宮澤夕貴、ここにあり」を改めて示した。
宮澤だけでなく、同じくENEOSでプレーした林も富士通移籍1年目であらたなページを開いてみせた。彼女も宮澤同様、「単なる3Pシューター」からより多くの仕事を与えられたことで、一段上の高みに到達した感があった。林はENEOS在籍時の昨季もファイナル優勝を遂げているものの、平均得点は6.3点と大きく目立ったものではなかった。今回のファイナルでは同14点。さらにアシストも同3本を記録するなど、宮澤と同じくプレーを幅を広げ、よりチームに欠かせない存在だということを証明した。















