Advertisement

【WBC】14年ぶり戴冠“侍ジャパン戦士”シーズン序盤通信簿・投手編 MLB関係者を驚かせたピッチャー陣の活躍

 

【WBC】14年ぶり戴冠“侍ジャパン戦士”シーズン序盤通信簿・投手編 MLB関係者を驚かせたピッチャー陣の活躍
WBC全勝優勝を成し遂げた侍ジャパン(C)Getty Images

「日本にこんなに素晴らしい選手がいたのか? 今すぐアメリカに連れて帰りたい」。

かつて、メジャーリーグの選抜チームを日本プロ野球のオールスター選手が迎え撃つ形で行われた日米野球で、メジャーリーグの監督はよくこう言ったものだ。

他球団に移籍できるフリーエージェント(FA)制も日米間のポスティング移籍もなかった時代の、決まり文句。

「メジャーリーグでプレーはできないけど、いい選手はいる」。
――そういう意味のコメントだった。社交辞令でもあったと思う。

1995年、野茂英雄(元近鉄バファローズ)がロサンゼルス・ドジャースで〝トルネード旋風〟を巻き起こした後、イチロー(元オリックス・ブルーウェーブ)や松井秀喜(元読売ジャイアンツ)も海を渡った。

数多くの選手が好成績を残したことで、日本人がメジャーリーグでプレーすることも、人気チームの看板を背負うことも珍しくなくなった。今回のワールド・ベースボール・クラシックWBC)は、彼ら以外にも素晴らしい能力を秘めた選手が日本にいることを知らしめる大会となった。

◆14年ぶり戴冠“侍ジャパン戦士”シーズン序盤通信簿・野手編 好調のMLB組と不調かこうプロ野球組

■MLB関係者を驚かせた侍ジャパンの投手陣

メジャーリーグ関係者を驚かせたのは、侍ジャパンのピッチャーたち。160キロ中盤のストレートをコンスタントに投げる佐々木朗希(千葉ロッテマリーンズ)、決勝戦で先発登板し好投した今永昇太(横浜DeNAベイスターズ)、アメリカを代表する強打者、マイク・トラウトに真っ向勝負を挑んだ20歳の髙橋宏斗(中日ドラゴンズ)が強烈なインパクトを残した。

ほかにも、戸郷翔征、大勢(いずれも読売ジャイアンツ)、伊藤大海(北海道日本ハムファイターズ)など力強いストレートで押すピッチャーがスタジアムを沸かせた。

Advertisement


彼らがFA権を獲得するまでには数年の時間が必要となるが、そのピッチングはメジャーリーグ関係者の記憶に刻まれたはずだ。日本のチーム防御率2.29は、出場20チームのなかで1位だった。

■優勝後も活躍する侍ジャパン

侍ジャパン投手陣は、36歳のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)を中心に、これまでにないまとまりを見せた。2月の宮崎キャンプでは、ひと回り以上年齢の違う選手たちがにこやかにピッチング談義を繰り広げるシーンが見られた。日米で188勝をマークしたベテランの言葉が若い選手たちの刺激となったことは間違いない。

佐々木はスライダーの投げ方を伝授され、髙橋はツーシームを、戸郷は高めのストレートとスライダーの組み合わせ方を教わったという。その後、若いピッチャーたちの投球の幅は格段に広がったように見える。

チェコ戦、準決勝のメキシコ戦のマウンドに上がった佐々木。メキシコ戦で本塁打を打たれたため防御率は3.52だったが、先発投手としての重責を十分に果たした。帰国後はマリーンズのローテーションを守り、ここまで4勝無敗、防御率は1.18。規定投球回数には到達していないものの、奪三振59はリーグ1位。奪三振率もリーグ最高の13.97。今季はここまで1本のホームランも許していない。

佐々木と同学年の宮城大弥も、開幕から好投を続けている。7試合に登板して4勝1敗、防御率2.01。3年連続の2ケタ勝利(2021年は13勝、2022年は11勝)に向け順調に勝ち星を積み上げている。

ジャイアンツのローテーションの中心にいる戸郷は8試合に登板し、セ・リーグトップの5勝をマーク(2完投、1完封勝利)。防御率2.57はリーグ3位だ。

侍ジャパン最年少だった髙橋は8試合に登板し、1勝6敗。勝ち星には恵まれていないものの、防御率2.86で内容は悪くない。

Advertisement


帰国後、侍ジャパン投手陣の中でもっとも慎重に調整を行ったのが今永だった。4月は二軍で調整を行い、2度の実戦登板を経て21日に一軍昇格を果たした。そこまで時間をかけたのは、NPBで使用するボールへの対応とWBCでの疲労を取るためだった。

4月に2勝、5月は3試合に登板して1勝もできなかったが、30日のセ・パ交流戦初戦の東北楽天イーグルス戦に先発。完投で今季3勝目を挙げた。エースの完全復活なくして、1998年以来のリーグ優勝は実現できない。

2年連続で投手タイトル4冠、リーグMVPを獲得した山本由伸(バファローズ)は5月20日に発熱のため登板を回避した。しかし、交流戦初戦(5月30日)の広島東洋カープ戦に先発し、8回無失点で4勝目を挙げた(防御率1.94)。来季のメジャー移籍が有力視される日本球界のエースはWBCと同様、安定したピッチングを見せている。

■MLB投手陣の活躍にも期待

メジャーリーグに目を向けると、WBCで2勝1セーブを挙げた大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の充実ぶりが際立つ。11試合に登板して5勝1敗。防御率2.91は昨年の2.33と比べると見劣りするが、昨年の15勝を上回るペースで勝ち星を積み上げている。

侍ジャパンのまとめ役を担ったダルビッシュだが、今シーズンは思うようなピッチングができていない。10試合に先発して3勝4敗、防御率4.61。しかし、42歳になる2028年までの6年間、1億800万ドル(約142億1000万円)という大型契約を結んだ彼がこのままで終わるはずがない。

◆侍ジャパンの偉業を振り返る プレーバック一覧

◆大谷翔平、エンゼル・スタジアムで無双継続 1920年以降現役最高防御率

◆米メディアがアニメ『偉大なる大谷翔平』ユニコーンの旅路オンエアへ予告編公開

著者プロフィール

元永知宏●スポーツライター
1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て独立。

著書に『期待はずれのドラフト1位』『レギュラーになれないきみへ』(岩波ジュニア新書)、『殴られて野球はうまくなる!?』(講談社+α文庫)、『荒木大輔のいた1980年の甲子園』『近鉄魂とはなんだったのか?』(集英社)、『プロ野球を選ばなかった怪物たち』『野球と暴力』(イースト・プレス)、『補欠のミカタ レギュラーになれなかった甲子園監督の言葉』(徳間書店)、『甲子園はもういらない……それぞれの甲子園』(主婦の友社)など。