2018年1月に川崎フロンターレから、香港のイースタンSCに移籍した井川祐輔選手。サッカー選手として海外でプレーをしたい夢があったという井川選手は、初めての海外に戸惑いながらも多くの経験を積んでいる。
その一端をインスタグラムで連載中の『香港滞在記』で見ることができる。
当たり前だったことが当たり前ではない
年明けからチームに合流しタイでのキャンプに参加した井川選手だが、さっそく「今までとは何もかもが異なり戸惑う事が沢山ある反面、新鮮さを覚えるのもまた事実」と驚くべき体験があったようだ。
「日本の環境がいかに恵まれていたかを、たった2日で痛感させられています!!今までが当たり前だったことがこちらでは当たり前ではない環境。35歳にして良い経験をさせていただいています」
チームメートとは片言の英語とポルトガル語でコミュニケーションを取っていることも明かし、「この環境を求めて海を渡ったので、おじさん頑張ります!!」と新たなステージに胸を高鳴らせていた。
活躍して当然と見られる助っ人外国人の難しさ
だが、やはり異国でのプレーには戸惑いや葛藤もうかがえる。
1月28日の更新では、「今まで育った日本を飛び出し、香港という文化もサッカーも異なる環境に新たな刺激を受けると同時に、異国で結果を出す難しさをまざまざと痛感しています」と胸中を吐露した。
FIFAランクで見ると60位の日本に対して、香港は142位(2018年4月26日現在)。クラブレベルでも国際大会での成績はJリーグのほうが良く、だからといって慢心があったわけではないだろうが、思い描いていた理想の海外デビューとは少し違うものになったようだ。
「香港に行くまでは色々な輝かしい未来を勝手に自分の枠で思い描いていましたが、現実はそんなに甘くないと思い知らされた1ヶ月でした。この1ヶ月で、異国で結果を出している選手(選手に限らず)は、本当に素晴らしいと思いました」
外国籍選手には「活躍して当たり前」のプレッシャーがある。私たち日本人がJリーグに来る外国籍選手に掛ける期待や求めるインパクトと同じものを、井川選手も香港のファンから求められている。
環境を変えたことで『助っ人外国人』の置かれている立場に気づき、リスペクトが生まれた。
「日本でプレーをしていれば、自分はこちらでいうローカルプレイヤーで、Jリーグに来ている外国人枠選手達には助っ人だから活躍して当たり前と何のリスペクトもなく、あるいは彼らの置かれている立場というものをあまり考えずにいたと気付かされました」
「サッカーのレベルの高い低いに関わらず、その国のサッカーに適応しながら、自分というものを表現しなければならない。海外でサッカーをすることは、簡単な事ではない。日本を離れて初めて気付けた事で、日本にいては絶対に気付けなかった事だと思います」
香港での新生活の様子も垣間見える
やはりサッカーに関することが多い井川選手の香港滞在記だが、ピッチを離れた時間の話題も豊富だ。
「幸いな事に大切な家族達は香港ライフに満足してくれているみたいです」とコメントするように、ご家族は現地での暮らしを満喫している様子。
お子さんとビーチで遊ぶ写真や、香港の町並みを歩く写真も公開している。
4月11日の投稿では「香港は世界一家賃が高い国だと言われています。そして、とても狭い」と住宅事情にも触れ、「西高東低ならぬ、家賃高広狭みたいな。当然、お風呂も小さいので男4人で入るとこんな感じ!笑」と3人の息子さんと一緒に湯船に浸かる様子をアップした。
子供との触れ合いに「疲れた身体を癒してくれる貴重な時間です」と笑顔を見せる。
イースタンSCのチームメートとも打ち解けているようで、3月3日の更新では「子供達はすっかりチームメイトと仲良くなり、みんなが我が子のように接してくれるので本当に助かります!」とランチの様子を載せている。
練習場ではパパよりチームメートのほうに駆け寄り、パパの存在を忘れるくらい懐いているのだとか。
同僚からは「子供達の方がイガより英語が上手だ!」とも言われている。
また、練習後にコーチと選手がランチを共にするのは香港では普通らしく、「距離が近くて家族みたいな感じ」とファミリーに溶け込んでいた。
ベテランでも海外に出ることで初めて気づくことは多い
2001年のプロデビューから豊富なキャリアを持つ井川選手。Jリーグ制覇やAFCチャンピオンズリーグ(ACL)も経験したベテランだが、それでも海外に出ることで気づかされることや新たな学びが多いようだ。
井川選手が語る一連のコメントから、異国で結果を出し続けることの難しさが改めてわかったような気がした。