飛距離1位のローリー・マキロイはヘッドスピード“7位” 米ツアー選手のデータに見る飛ばしの要素とは

 

飛距離1位のローリー・マキロイはヘッドスピード“7位” 米ツアー選手のデータに見る飛ばしの要素とは
ローリー・マキロイ(C)ロイター

米ツアーでは昨季、ドライビングディスタンスが300ヤードを超えた選手が98人いた。ツアー平均は299.9ヤード。全選手の平均が300ヤードを超えるまであと一歩だった。

ただ、パワーゲーム化されてきているゴルフではあるが、このような飛距離増の理由については選手の‟パワーアップ”の一言では片づけられない。

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現在活躍している選手はジュニア期など、早い段階からトラックマンなどの弾道測定器を使いながらスキルを磨いてきた。

好成績を出すために必須の飛距離を満足いくものにするためにはパワーアップが必要である、ということを頭に置きながら、パワーアップして上がったヘッドスピードを生かすクラブ操作方法を見つけて今の地位を築いてきている。

米ツアーのレーダーデータを見ると、パワーが直結するクラブヘッドスピードと飛距離は必ずしも比例するわけではないことがわかる。そこに、飛ばしに必要な要素が垣間見える。

ボールスピード、打ち出し角、スピン量、この飛距離三要素の融合が、ロングドライブを繰り出す条件となる。

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■昨季飛距離1位ローリー・マキロイはヘッドスピード7位

昨季、ドライビングディスタンスで2位に約5ヤードの差をつけて1位になったのは、メジャー4勝、現世界ランキング2位のローリー・マキロイ。34歳のマキロイは30歳を過ぎてもドライビングディスタンス上位の常連であり続けている。

鍛えあげられた肉体がその飛距離の源ではあるが、パワーを生かす技術力がマキロイの飛距離を支えている。

マキロイのヘッドスピードは7位。インパクト後のボール初速を示すボールスピードは6位。マキロイよりもボールを強く叩ける選手はいるが、マキロイが最も飛距離を出せているのだ。

パワーで上を行く選手よりも飛距離を出せるのは、打ち出し角とスピン量が高いレベルで融合しているから。

そしてそれは、インパクト時の打点が良く、ヘッド軌道、インパクトロフトが、最高水準で融合しているからこそ可能になる。

ローリー・マキロイの飛距離三要素データ

ローリー・マキロイの飛距離三要素データ

■飛距離三要素のレーダーデータ

パワーがあればヘッドスピードを高めやすいため、ボールスピードが高まりやすくなる。ただし、ヘッドスピードだけが高水準でも大きな飛距離を出し切ることはできない。

打ち出し角とスピン量を高いレベルで融合させることで、ヘッドスピードを生かした飛距離を出すことができる。

飛距離を出す上でボールスピードの値は大きければ大きいほど良いが、打ち出し角に関してはヘッドスピードやスピン量次第でベストな値が変わる。スピン量も、ヘッドスピードや打ち出し角次第でベストな値が変わる。

2022-23シーズンのドライバーショットの打ち出し角のツアー平均は10.49度で、スピン量のツアー平均は2570.6回/分。

この2つの項目をセットで考えた場合、この値の前後が米ツアーレベルのヘッドスピードの場合の基準値として問題ないが、単独ではベストな値を設定することはできない。

打ち出し角とスピン量の値にどのような関係性があるかといえば、打ち出し角が小さいほどほどスピン量は大きい値が求められ、打ち出し角が大きいほどスピン量は小さい値が求められる。

打ち出し角上位10名のスピン量と、スピン量上位10名の打ち出し角を見てみると、その関係性は顕著に表れている。

2022-23シーズン、打ち出し角3位のグレイソン・シグのスピン量は168位で、打ち出し角10位のハリソン・エンディコットのスピン量は185位だった。

スピン量2位のアダム・シェンクの打ち出し角は192位で、スピン量3位のニック・ワトニーの打ち出し角は193位だった。ランキングされているのは193位までなので、大きいスピン量2位と3位が小さい打ち出し角1位と2位、ということになる。

PGAツアー選手の打ち出し角とスピン量ランキング

PGAツアー選手の打ち出し角とスピン量ランキング

ここに名前がある選手は、全員が飛ばし屋というわけではないが、シーズンを通して規定ラウンド数に達した選手たち。米ツアーでそれだけの数の試合に出場したということは、高い水準の技術力の証明になる。

その選手たちのデータに見えた関係性は、スイングやクラブのエネルギーを余すことなくボールに伝えて飛距離を出すためのポイントを示しているとして良いだろう。

■米ツアーでは10年で10ヤード飛距離アップ

2013-14シーズンのツアー平均は288.8ヤード。10年で10ヤード以上伸びている。

これは、ギアの進化や各選手のフィジカルの増強によるものが大きいだろうが、打ち出し角とスピン量を整える方法をつかんだ選手が増えたこともあるかもしれない。

一般的に最も飛距離が出るのは「高打ち出し&低スピン」と言われている。

ただ、ヘッドスピードの値が大きいほど打ち出し角は小さめの値が求められ、ヘッドスピードの値が小さいほどスピン量は大きめの値が求められる。これは米男子ツアーと女子ツアーのデータを比べても明らかである。

また、スイング調整はアイアンでのスイングとの兼ね合いもあるため、ドライバーショットの飛距離だけを考えてスイングを作ることはできない。

よって、打ち出し角とスピン量の組み合わせに個性が表れている選手がいる。

昨年、ゴルフの統轄機関であるR&AとUSGAが2028年からボールを規制すると発表した。ボール規制のないレーダーデータ測定は2027年までとなる。

あと4年、どのようなデータの傾向が見られるのか、注視していきたい。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。