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4億4千万円の片棒を担いだブービー人気テンハッピーローズ、世紀の“一発大駆け”はいかにして生まれたか【ヴィクトリアマイル】

テンハッピーローズ/2024年ヴィクトリアマイル(C)Toshihiko Yanagi
テンハッピーローズ/2024年ヴィクトリアマイル(C)Toshihiko Yanagi

12日、マイル女王決定戦・ヴィクトリアマイルは単勝208.6倍のテンハッピーローズがGIタイトルを手にし、GI単勝配当ランキング4位へ浮上。ビートブラックの天皇賞・春「159.6倍」のインパクトを超え、WIN5の的中票をたった1票にし、4億4605万円という驚異の払戻金の片棒を担いだ。

14番人気テンハッピーローズの一発大駆けはいかにして生まれたか。大きく2つの視点からその答えを探る。

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■瞬発力勝負を阻止した前傾ラップ

まず一つ目は適性だ。今年のヴィクトリアマイルは前後半800m45秒4-46秒4と後半が1秒も遅い、いわゆる前傾ラップだった。前半600mは12秒2-10秒5-11秒1で33秒8。ヴィクトリアマイルで前半600m33秒台が記録されたのは2019年(勝ち馬ノームコア)以来、5回目になる。近年は安田記念でも前半より後半が速い後傾ラップが目立ち、ヴィクトリアマイルもまたしかり。折り合って後半勝負が定番になりつつあるコースとしては珍しい猛ラップになった。

このペースを呼び込んだのはマスクトディーヴァとナミュールだ。どちらも瞬発力に長けており、東京の直線なら間違いなく弾ける。一方で、ブリンカー着用のコンクシェルは瞬発力勝負では太刀打ちできない。2番手のフィールシンパシーも同様で、先行勢が2強を負かすには、厳しい流れを演出して瞬発力勝負を避けるしかなかった。

だが、2強を意識した先行勢の戦略は決して間違っていない。勝ちに行く競馬だったのは事実だ。ナミュールもマスクトディーヴァもそれぞれ敗因はあるかもしれないが、リズムを乱すハイペースが響いた側面はあるだろう。自分の競馬に持ち込むこと、これこそがあえて先を行くものたちに与えられた特権だ。ペースを落とし、わざわざ相手の瞬発力を引き出しては意味がない。

勝ったテンハッピーローズは前進気勢が強く、それが出世を阻んできた。1400m中心のレース選択は折り合えるペースを探してのものだったが、3走前朱鷺S勝利をきっかけに再びマイル路線に舵を切った。今回の前半600m33秒8という流れは1400mを得意とするテンハッピーローズにとって心地よかったのではないか。実際、外めを追走しても折り合いがつき、中団馬群の一番後ろという最高のポジションに収まった。津村明秀騎手も人気薄ゆえに、相手を意識せず、騎乗馬を気分よく走らせることに集中していた。

川田将雅騎手、藤岡佑介騎手ら腕達者がいた競馬学校20期生のなかで、馬乗りで群を抜いていたという、折り合いに長けた津村騎手だからこそ、前に馬がいない状態でもテンハッピーローズのリズムを整えられたのだ。スタートから4コーナーまで無駄に動かずナチュラルな形で運び、4コーナーから押し上げ、外の進路を作りながら前を射程圏内に入れる。完璧といっていいレース運びだ。

■東京の底力勝負で活きる血のあと押し

東京のハイペースで手応えよく4コーナーから動く姿は血の影響も大きい。父エピファネイア、母の父タニノギムレットで父母ともロベルトが濃い。ロベルトといえば、ブライアンズタイムに代表される大舞台に強い血脈だ。軽い馬場に強いサンデーサイレンスに対し、道悪やハイペースの持続力勝負に適性があり、前哨戦で負け、GIの底力勝負で目を覚ます。

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ロベルトはかつて逆転の血として、競馬ファンに頼られてきた。後継種牡馬が育たず、今ではエピファネイアぐらいだが、ハイペースのGIでの輝きはなんら変わっていない。

母の父タニノギムレットもテンハッピーローズの激走をあと押しした。産駒の代表といえば、この日10レースにメモリアルレースが組まれたウオッカだ。そのベストパフォーマンスは2008年天皇賞・秋。ダイワスカーレットが演出した過酷な流れにウオッカの底力が引き出された。タニノギムレットもウオッカもダービー馬。東京の底力勝負の血だ。

元来、左回りが得意なテンハッピーローズはスローの阪神牝馬Sで敗れ、厳しい流れのGIで逆転と、東京マイルのハイペースへの適性はいまや語るまでもない。一方で、適性はやってみないと分からない部分もあり、事前に察知するのは容易ではない。みんなが、テンハッピーローズの適性をつかめていなかった故の「単勝208.6倍の14番人気」だ。