13日から開催されるジェネシス招待に松山英樹がディフェンディングチャンピオンとして出場する。
会場は、ロサンゼルス山火事の影響で避難区域に指定されているリビエラCCから、トーリーパインズGCに変更。
同コースで開催された先月のファーマーズインシュアランスオープンは32位タイだったが、グリーンを狙うショットのスコア貢献度を示すSGアプローチザグリーンは1位となり、松山らしさを見せていた。また、同コース開催の大会ではトップ10が2回と上位に進出した経験がある。
米ツアーの優勝予想は9番手だが、今季2勝目に期待して良いだろう。
ところで、米ツアーを代表するショットメーカーである松山のスイングにはどのような特徴があるのだろうか。今回注目したいのはバックスイングでの右脚の動きだ。
◆昨年覇者・松山英樹は優勝予想9位に選出 本命視はローリー・マキロイ
■松山のバックスイングと歩行
バックスイングで腰が右に流れる、いわゆるスウェーをしてしまうと、バランスよくダウンスイングに入ることが難しくなる。バックスイングではアドレスしたその場所で体を回せると良い。
松山のゆったりとしたバックスイングでの右脚の動きを見ると、右膝の角度が保たれていることがわかる。保つというよりも、バックスイング中に深くなっているぐらいだ。
この右脚の体の回転の受け止めにより、体のブレがないバックスイングができている。
ただ、バックスイングでは誰でも右膝の角度を保つ意識を持つべきかと言えば、答えはノーだ。
バックスイングで右股関節は内旋する。内旋の可動域が広ければ右膝の角度を保ちやすくなるが、そうでなければ右膝の角度を保とうとすることはスイングバランスを崩すことにつながる。
松山の歩行を見ると、つま先を少し内側に向けて(内また気味で)着地していることがわかる。股関節が内旋しやすいのだろう。
つまり、松山は内旋が得意であるため、右膝角度キープが、良いバランスでダウンスイングに入るためにプラスに働いていると見ることができる。
松山の脚部の動きは、松山の股関節の柔軟性や特性があるからこそ、成り立っているものではないだろうか。
■幼少期の父の教え
松山は幼少期、マットをしきつめ全身がうつる鏡が置かれた松山のための6畳のゴルフ部屋で、父子でゴルフスイングを磨いた。素振りを中心に練習していたようだ。
そして、素振りの成果を確認するために、週末に屋外のゴルフ練習場(打ちっぱなし)にお父さんに連れて行ってもらう。そして今度はそこで得た課題を自宅に持ち帰り、素振りを繰り返し行う。
松山はそのサイクルを繰り返すことでスイングの技術を磨いていった。そして、この時、松山がお父さんから叩き込まれたのが右膝角度キープだった。
自著「彼方への挑戦」では、‟とくに厳しく言われていたのは、次の2つだったと記憶している。「頭を動かさないこと」「右膝を動かさないこと」”と書かれている。
■完璧主義者
松山は米ツアーで‟ショットを放った後の反応とショットの結果が一致しない選手”と認知されている。
フィニッシュで片手を離したり、クラブを地面に叩きつけようとするような仕草をして、見ている人に「ミスしたんだな」と感じさせているにも関わらず、放たれたボールはフェアウェイど真ん中をとらえたり、ピンに絡んだりする。
これは、松山が完璧主義者だから。
スイング中にエラーを感じ取り、それに対して瞬間的に体が反応しエラーを打ち消す動きが入ったことで、フィニッシュが乱れる場合がある。
そのような‟エラーを打ち消す余計な動き”を入れて良いショットを打っても松山は納得しない。ショットの結果よりも、エラーが出た、というスイングイメージとのズレの方に目が行くことで、苛立ったような反応が見られるのだ。
素振りを繰り返し行っていた幼少期に“スイング中に起こっていることを感じ取る能力”が大きく育まれたのではないだろうか。
松山は球を打つ練習量が豊富であることで有名だが、スイング中の動きを細かく感じ取れるが故に、些細なエラーも見えてしまうが故に、練習量が増えてしまうのかもしれない。
「ショットは上向き」と表情は暗くない松山。ジェネシス招待でも、バックスイングでの強固な右脚を生かして、ピンに絡むショットをたくさん見せてもらいたい。
◆昨年覇者・松山英樹は優勝予想9位に選出 本命視はローリー・マキロイ
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。