野中生萌が語る“クライミング”や“オフタイム” 東京五輪は冷静にその先を見すえる

 

野中生萌が語る“クライミング”や“オフタイム” 東京五輪は冷静にその先を見すえる
一般クライマーが上れなかった高難度の岩を一撃(1回で完登) ©Suguru Saito / Red Bull Content

2020東京オリンピックの新種目、スポーツクライミングでメダル獲得を目指す東京生まれの22歳、野中生萌(のなかみほう)選手。自宅で飼っている猫のことや、プールや海が大好きだけど泳げないなどオフタイムのことから、東京五輪への想いまでたっぷりと語ってくれた。

話を聞いたのは11月9日と10日。野中選手が考案したボルダリングコンペの決勝戦、『Red Bull Asura Exhibition Session(レッドブル・ アシュラ・エキシビションセッション)』のイベント時だ。

三重県熊野市にある熊野ボルダリングエリアで行われた本イベントは、今年が3年目の開催。「自然の外岩にさわりながらクライミングの気持ちよさを知ってほしい」という野中選手の想いを受け、エナジードリンクブランドのレッドブルが主催した。

紀伊半島の熊野地域にある自然の岩に上る ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

女性を少なくとも1人は加えなければならない3人1組のチーム形式による大会で、この日は宮城、東京、長野、名古屋、大阪、福岡の予選を勝ち抜いた21チーム63人が集結した。

「毎年のようにみなさん楽しんでいるようですね。岩をさわった感じでは、今年はオープン(難易度が高いエリア)の課題が難しい。脚(を置くポイント)が見つけにくい。どちらかというと上半身寄りに上る必要があります。上る前に見ているときよりも、いざ上るとホールド部分が悪いというところが多かったです」

野中選手は今季の国際大会最終戦、中国オープンから5日前に帰国したばかり。この一般参加イベントは年に一度のオフタイムの始まりで、この後は温泉やおいしいものを楽しんで「ちょっとだけリラックスしたい」と話す。

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「大会を連戦しているとシーズン中は外の岩に来ることができないので、自然の中で気持ちいい時間を過ごしたい。たくさんの岩にさわって楽しみたいです」

野中生萌選手を見守るのは男子の原田海選手 ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

通常は街中に設営された人工壁に挑むので、トップクライマーの野中選手にとっても貴重な時間だという。外岩は上るルートを読み解く力が重要になってくる。上りながらもどう切り抜けるかを処理する能力も求められ、すべてのものをコントロールしながら上ることが必要。だから面白いという。

「普段のクライミングジムで上るのとは違って、選手によって乗る脚(足場)、手で突起部を持つ場所が違うので、それを見るのも楽しい。ワイワイやりながら上るのもクライミングの楽しさだなと思うんです」

パワーあふれる上りで知られる野中生萌選手 撮影=山口和幸

2人の姉に触発されて動き出した競技人生

野中選手は1997年生まれで3姉妹の末っ子。9歳のときにお姉さん2人とともに父親に連れていってもらったジムでクライミングに出会った。2人の姉が簡単に上っていく姿に触発され、負けず嫌いな性格から自然と自身を練習で追い込んだことでクライマーとしての才能が開花する。

「ワガママです。末っ子のいいとこ取りを常にしている」と素直な笑顔で自己分析をしてくれた。

「負けず嫌いで、一番甘やかされていましたね。家族でクライミングジムに行って全員でやったけど、結局続けたのは私だけです。姉2人はどっちもスポーツはやっていないけど、それぞれ自分の夢に向かっていて、逆にそれが刺激になっています。みんな応援してくれています」

その後の活躍はメディアで報じられるとおり。2018年ワールドカップ年間ランキング1位。2019年のジャパンカップではボルダリング、スピード、コンバインドですべて1位を獲得した

(c)Getty Images

自身の身体と常に対話しながらベストパフォーマンスを

ウォーミングアップジャージを着込むとスリムだが、鍛え抜かれた筋力は見事だ。コンディショニングトレーナーや栄養管理士などのアドバイスを受けつつ、自分の身体と常に対話しながらベストパフォーマンスを目指す。

「食事に関しては、こういうときになにを摂ったらいいかという知識はあります。それでもクライミング選手は他のアスリートと比べると食べる量は少ないんです。回復のために食べたほうがいいんですけど、体重が増えてしまうと上れなくなってしまう。栄養バランスがいいからとたくさん食べると、重くなってしまいクライミングには不利。だから食べる量とバランスを考えています」

海外の連戦では美しい景色を楽しむと同時に、エネルギー量を念頭に置きながらもおいしいものは欠かさない

「大会が限られているので、行くところも同じような場所なんですけど、ドイツに行ったときにはシュバイネハクセ(料理の名前)ですね。メッチャ大きい骨がついたお肉を食べます。それにソーセージとか。お肉が好きなんですね(笑)

撮影=山口和幸

オフタイムの過ごし方

音楽は移動中だけでなく家でも聴いてリフレッシュする。プライベートな時間で一番リラックスできるときは? と聞くと「」と即答。家族とともに住む自宅には、生後一週間のときに捨てられていた黒猫を含めて3匹と同居する。

アカとムーとコナです。もうかわいくて」と語るときには、壁面に挑むトップクライマーの気迫あふれる表情はない。

 

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他のスポーツはやらないというが、もともと身体を動かすのが好きなので、なにかの機会があればやってみたいという。

プールと海がすごく好きですが、泳げないんですよ。ガチな泳ぎはできませんが、水遊びは大好きです」

地元開催の五輪で「チャンスをつかみたい」

東京五輪のスポーツクライミング日本代表は男女各2人。日本山岳・スポーツクライミング協会は2019年8月の世界選手権のコンバインドで日本勢最上位だった男子の楢崎智亜選手と女子の野口啓代選手を五輪代表に決定した。

ところが国際スポーツクライミング連盟の規定変更により、世界選手権で日本勢2番手に入った男子の原田海選手と女子の野中選手に五輪出場権を与えたと発表。

日本協会がスポーツ仲裁裁判所に提訴するというニュースも報じられ、現在は渦中の存在となってしまったが、野中選手は冷静にその先を見すえる。現段階では五輪2枠目は未決定だが、野中選手の五輪にかける想いはぶれることはない。

「スポーツクライミングが東京での五輪で開催される。東京出身の私にとって完全にこれ以上のチャンスはないと思っているので、そのチャンスをつかみたいたいと思いますね。絶対に悔いのないように頑張りたい。メダルを絶対に取りたいです」

≪山口和幸≫

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