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山内斗真が駆け抜けた横浜の地 感じた悔しさは「この場だけで」 -アイスクロス横浜2020

山内斗真が駆け抜けた横浜の地 感じた悔しさは「この場だけで」 -アイスクロス横浜2020
山内斗真 ©Lisa-Marie Reiter / Red Bull Content Pool

過激な氷上バトルと呼ばれるアイスクロス。

世界のトップ選手に果敢に挑み続ける山内斗真選手が、2月15日に横浜市の臨港パークで開催された「レッドブル・アイスクロス横浜」で上位進出を果たせず、悔しい思いをにじませた。

初出場となった前回の横浜大会で見せつけた存在感

横浜でのアイスクロス大会は2018年12月に続く2回目の開催だった。山内選手は前回大会で一躍その存在感を見せつけて、この過激なスポーツの中でも注目されていた。

北米やヨーロッパで行われていたアイスクロスの存在を、山内選手が知ったのは中学1年生のころだという。憧れていたスポーツがまさか日本で開催されるとは思わなかった。

同志社大学アイスホッケー部の活動を続けながら練習会に参加し、ダントツの実力で日本初開催となった前回横浜大会に選出されたのだ

2018年12月の横浜大会 ©Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

初出場となった横浜大会では、とにかく大観衆の声援に心が躍った。インラインスケートの第一人者である安床武士選手とともに決勝進出を果たし、緒戦で敗退するものの楽しかったという。

「最後まで笑ってフィニッシュできたのでホッとしています。次はもっと成長したところを見せたい。自分に足りないものを次の大会までにもっと鍛えたい。必ずファイナルに残っていける選手になること。それが応援してくれているみなさんに対しての恩返しだと思います

悔しい気持ちは「この場だけ」

前年まではジュニアカテゴリーに所属し、1年前の米国ボストン大会ではジュニアクラスで3位の表彰台に上った。

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2019年の米国ボストン大会を戦う山内斗真(左) ©Red Bull Content Pool

そして迎えた2回目の横浜大会では最高峰のエリートカテゴリーへ。

敗者復活戦を勝ち上がって決勝進出した日本の男子選手は山内選手のみ。「僕しか残っていないので、やりきるしかない」と闘志を見せた。

64選手が4人ずつ、16組に分かれて戦う。2着以上が次に進める。山内選手と同組となった海外選手のうち2人は格上だったが、「いい組に入ったな」と直感した。

しかしそれほど甘くはない。予選の時から良かったコーナリングでわずかに遅れを取り、ここで敗退

「ゴール後には感情的になって熱くなってしまったけど、冷静になってみると自分に足りないものがあったのかな。ビデオを見てもっと修正していかないと、さらに上にはいけないんじゃないかな。フィーリングや感覚は大事なんだけど、そこに戦略的な部分を入れることがこのスポーツでは大事なんです

ベストな滑りはできたはずだ。緊張もなく、いいフィーリングで走れたことは間違いない。スタートも良かったが……。一瞬のシーンで身体のバランスが崩れたことを敗因だと分析する。

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「あそこで転けたからかな。転けると意味ないですよね。別の選手と共倒れになって3位と4位になってしまったらもう終わりなんです。相手が転けても自分が転けなかったら2位になれる。そんな運もあるのがこの競技。このレースの面白さだと思います

2020年2月の横浜大会 ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

最後まであきらめず1回戦突破を必死で目指した。前を行く2位選手を逆転しようと、ゴールラインに向けて最後に脚を伸ばした。

「じゃないとあそこまで脚を使って追いかけないし、それだけ思いの強かったレースでした。練習でコースの攻略法を練ってきましたが、完璧ではなかった。もっと研究力を付けないといけないですね

得意分野を一つつけるのではなく、どんなコースであろうと対応できる選手になりたいという。

「横浜の熱い応援の中で走らせてもらったなと感じます。応援してくれる観客のおかげで頑張れたんだと思います。この結果は悔しいですけど、仕方ない。それもスポーツの面白さなので、悔しい気持ちはこの場だけですよこの思いが次につながればいい

関西圏から駆けつけた家族には感謝しかないという。ゴール地点でその姿を確認して口に出た言葉は「ごめんね」。

祖母も「次に頑張ればいい」と返した。山内選手はレースが終わったら改めて「ありがとうと口に出して伝えたいと語る

山内斗真 ©Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

「アイスクロス」という競技に対して

4月からは社会人。学生時代のように時間があるわけではなく、短い時間でもアイスクロスの練習をこなしていくことが求められる

時間がなくてもできることはいっぱいある。社会人になるための準備もあって、いったんは次戦のアイスクロスは考えていないというものの、チャレンジをあきらめたわけではない。

「社会人となる次のシーズン。重ねた努力が学生時代のそれを上回ったら、自然と結果が出るんだと思います。これからもアイスクロスをやり続けます。僕たちが活躍していかないと、このスポーツが日本で盛り上がらないと思うんです。日本選手たちが頑張ることが一番大事じゃないのかなと感じています

果敢な滑りを見せる山内斗真 ©Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool

横浜大会で前回に続いて連勝したキャメロン・ナーズ選手は、山内選手にこうアドバイスしている。

とにかくこのスポーツを楽しみ続けてほしい。海外のトップアスリートの姿を見て、その走りを観察し、追いかけてほしい

練習を積んできたから成長できた。ハングリー精神が成長を促進してくれた。端正な容ぼうの中にアイスクロスにかける燃えるような魂を感じた。

≪山口和幸≫