【東京五輪/サーフィン】五十嵐カノア、大原洋人もメダル候補 勝負の分かれ目は「一発のビッグエア」

五十嵐カノア(C)Getty Images

コロナ禍という厳しい状況に直面する中、23日に遂に開幕した東京五輪。8月8日までの17日間を通じて、日本各地で熱い戦いが繰り広げられる。開幕までに数多のゴタゴタがあったとはいえ、いったん始まってしまえば平和の祭典の前ではスポーツが持つ魅力を純粋に楽しみたい。

東京五輪で行われる33競技の中で新たに追加種目となった5競技の一つであるサーフィン。自然を相手にするため、二度と同じコンディションで行われることなく、選手は一つ一つの波に対して集中力を鋭敏に研ぎ澄ます。勝者の決定方法はフィギュアスケートのような採点方式。通常5人のジャッジが、技・種類・難易度・スピード・パワーなどの要素を踏まえて採点する。全てのライディングの点数のうち、得点が高い方から2本の合計スコアで勝敗を競う。1本のライディングに対しての満点は10点。

今大会はラウンド1を4人で競い、上位2人がラウンド3へ、下位2人がラウンド2へ進む。ラウンド2はいわゆる敗者復活戦。そこでは5人1組で争われ、上位3名がラウンド3へ駒を進め、下位2人が敗退となる。勝ち上がった16名によるラウンド3からは「マンオンマンヒート」と呼ばれる1対1の対戦で勝者が勝ち進み、準々決勝、準決勝、決勝と争われ最終的にメダル獲得者が決定する。

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■流麗なターンよりも一発のビッグエア

サーフィン会場の千葉県一宮町の釣ヶ崎海岸(志田下ポイント)は、ハワイのノースショアやパリ五輪のサーフィン会場に予定されているタヒチのチョープーのようなビッグウェーブに比べれば、スモールの波。故に、スピード感あふれる流麗なターンよりも一発のビッグエアを決められるかが勝負の分かれ目となりそうだ。

男子の注目は、ガブリエル・メディーナイタロー・フェレイラのブラジル勢。忖度なしに言えば、この2人が金メダルに最も近いだろう。メディーナとフェレイラは、サーフィンの世界最高峰リーグと言われるワールドサーフリーグ(WSL)の中でも、トップ・オブ・トップの限られた選手しか出場できないチャンピオンシップツアー(CT)の最新ランキング(7月23日時点)で1位(メディーナ)と2位(フェレイラ)を独占。27歳のメディーナは、2014年に当時20歳の若さでブラジル人史上初のWSL王者に輝き、2018年には2度目の戴冠。フェレイラも、2019年に王者となった。両者はブラジル人特有の身体能力を生かしたリップから空中に飛び出す難易度が高いエアを得意としている。

2人のブラジリアンに割って入るのが、アメリカ代表のジョンジョン・フローレンス。28歳のハワイアンは、2016年にWSLのCTチャンピオンに輝くと2017年も連覇したレジェンド級のサーファーだ。スピードとパワーを兼備するジョンジョンは、野球で言えば二刀流の大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)のような“怪物”。ひざの故障が気になるが、体調が万全ならばメダル獲得の可能性は十二分にある。

■日本人選手にもメダルの可能性あり

日本人選手も忘れてはいけない。日本のエースともいえる五十嵐カノアは、2019年に日本人初となるCT優勝の快挙を達成。五輪最終予選のワールドサーフィンゲームズ(WSG)では、背中側に上体を倒してターンするレイバックターンを武器に準優勝に輝いた。もちろんエア系の技も繰り出す五十嵐だが、どちらかと言えば鋭いターンが持ち味。それでも、五輪期間中に台風がヒットする予報も出ているだけに、流麗なターンを武器にメダルを狙う。なお、五十嵐と同じ1回戦2組のフレデリコ・モライス(ポルトガル)は、新型コロナウイルスの陽性判定により、棄権が発表されている。

サーフィン会場である一宮町出身の大原洋人は、WSGで4位に食い込み逆転で五輪切符をつかんだ。身長162センチと小柄ながら、サイズを感じさせないパワフルなライディングで他を圧倒する。ラウンド1ではいきなりヒート1に登場し、金メダル候補のフェレイラらと対戦する。先日に結婚を発表したばかりの大原は、今大会参加選手の中で最も志田下の波を知るだけに、地の利を生かして初戦から勢いに乗り、メダル獲得で自ら花を添えたいところだ。

一方の女子は、「アメリカ対オーストラリア」の構図か。アメリカ代表のカリッサ・ムーアは、4度のCTチャンピオンに輝くサーフィン界の女王。今年のCTでは、ここまで6戦すべて3位以内と安定感抜群だ。静岡牧之原市での事前合宿を終えた際には、日本語で謝辞を述べ牧之原市民の心をわしづかみにした。今度は千葉の海で、華麗なライディングを披露して日本のファンを虜にする。同僚のキャロライン・マークスも、伸び盛りの19歳だけに注視したい。

オーストラリアのエースは、ステファニー・ギルモア。女王の座に7度君臨した33歳は、サーフィン界のレジェンド。今年のCTでは勝ち星はなくても、身長178センチのサイズを駆使したダイナミックなサーフィンは健在だ。ギルモアに加えて注目したいのが、同じ豪州代表のサリー・フィッツギボンズ。5月にはCT第5戦を制し、6月のWSGも優勝と、今一番勢いがある女子選手かもしれない。

■都筑有夢路、前田マヒナにも期待

日本からは、都筑有夢路前田マヒナが参戦する。20歳の都筑は、2年前に18歳以下のジュニア世界一を決めるワールドジュニアチャンピオンシップスで日本人初優勝の快挙を成し遂げ、今季は日本人女子としては久方ぶりにCTに参戦して世界の強豪を相手に奮闘している。ラウンド1ではヒート4に登場してジョアン・ディフェイ(フランス)、タチアナ・ウェストン-ウェブ(ブラジル)らCTランキング上位者とのマッチアップとなるが、番狂わせを演じたいところだ。

前田は、大原と同様に昨年11月の第2回ジャパンオープンを制すると、その勢いのままに6月のWSGで五輪出場権をゲットした。ハワイ生まれの23歳は、ラウンド1ヒート2では優勝候補のフィッツギボンズらと同組だが、ハワイ仕込みの力強いサーフィンで上位陣の一角に食い込みたい。

千葉県の釣ヶ崎海岸(志田下ポイント)を舞台に25日から開幕するサーフィン。8月1日までの4日間、各選手がしのぎを削る。歴史的な金メダリスト第1号に輝くのは果たして誰なのか。その行方に注目したい。

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著者プロフィール

一野洋●スポーツライター

青山学院大学を卒業後、米軍厚木基地に就職。その後、NFLを題材にしたライターを目指して渡米。アメリカでは寿司職人を経て、日系フリーペーパーの編集者となりNFL、MLB、NBAなどを取材。帰国後はNFL日本語公式サイト、海外競馬サイトのディレクション業務などに従事した。現在は、NFL、Xリーグ、サーフィン、海外競馬、ゴルフ、テニスなど様々なスポーツを扱うスポーツライターとして活動中。


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