【Bリーグ】B1ファースト・シーズンの群馬クレインサンダーズ、川崎戦連勝を起爆剤に上位浮上なるか

 

【Bリーグ】B1ファースト・シーズンの群馬クレインサンダーズ、川崎戦連勝を起爆剤に上位浮上なるか
2017年、Bリーグ・オールスターで躍動する五十嵐圭(C)Getty Images

 

■「個で戦っているイメージ」と苦言を呈す五十嵐圭

これだけの選手たちをそろえながら、なぜ群馬は前半戦波に乗ることができなかったのだろうか。ウィスマン・ヘッドコーチはディフェンスの課題を挙げた。GAME1、「試合序盤のディフェンスは良かったが、気が付けば95失点している。修正が必要だ」と語った。これまでの試合を振り返ると、最終4クォーターで逆転され敗れる試合が多々あった。そんな中、今回勝ち切れたことは大きい。追い上げられても「経験から焦らずチーム内で声を掛け合えた」と振り返った。ただ、ディフェンス面の修正は急務だ。

 GAME2も81-73と川崎を退け見事連勝した群馬。しかし、試合後ファンに挨拶をする五十嵐の表情に笑顔は無く、会見に臨む表情にも硬さが目立った。「シュートが入れば勝ち、入らなければ負ける」という波がある点を五十嵐も重く受け止めて、オフェンスディフェンス両面に同じ問題があると感じていた。「外国籍選手、帰化選手含めて能力の高い選手がそろっていて個で得点を取ることができるがチームとしての得点」に大きな課題がある。「アシストの数は多いが、チームとして自分たちが作ったフォーメーションの中から得点を取るといったシチュエーションが少ない」と苦言を呈す。

ディフェンス面においても「失点が多い。自分たちのシュート確率が高く、失点が多くても得点が上回っていれば勝てる。しかしクロスゲームやオフェンスで上手くいかない時は、平均得点が低いチームにも100点以上取られてしまっている」とこれまでを振り返った。30試合以上を戦った中で、「個で戦っているイメージ。個で守り、チームで守ることもできていない」こと「僕自身が群馬のバスケットボールを理解できていない」ということにとても焦りを感じていた。何度も「チームとしての連動性」を強調していた。

 ただそれだけではないようにも思う。五十嵐は後輩たちに「何かを伝えたい。チームを引っ張っていきたい」と強い思いも持ち移籍してきた。しかし残念ながら、現状では練習中も試合中も「何かを伝えるということにまで至っていない」という。「このチームになぜ来たのか、何をしたいのか」自身の考えや思いと「ヘッドコーチが求めていることに開きがある」と複雑そうに語った。さらに「群馬がどういうチームなのか理解できていない。迷いがある」といい、チームにフィットすることが「難しい」と厳しい表情を見せた。加入後、ヘッドコーチから五十嵐に対して「求めることの話は特になかった」のだという。

 今後については「伝えるよりも前にチームスタイルというものを確立していきながら、できることを伝えてプレーで見せていきたい」と語る。後輩たちへプレーで見せたいがそれが叶わないもどかしさを感じているようだった。五十嵐やパーカーのような経験豊富な選手たちの存在はチームにとても価値がある。「伝える以前の問題」を解決していくためには、コーチ、チームと選手とのコミュニケーションがより求められる。

 群馬は16日にホーム太田市運動公園市民体育館滋賀レイクスターズを迎え撃つ。その後日本代表戦のためにバイウィークとなり、次の試合は3月5日だ。バイウィーク前最後の試合で、連勝を伸ばし気持ちよく終えることができるか。連戦の体を休め、課題に取り組むだけの十分な時間はある。チームとして「どういう方向性に進みたいのか」、選手も「何を求められているのか」ということを「一人一人が確認していかないと勝利数は伸びていかない」と五十嵐も危機感を持っていた。チームとしての歯車を噛み合わせる大きな役割を果たせるか、五十嵐の挑戦は続く

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後半戦、チームの連動性を高め戦う群馬の姿に期待したい。

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■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。

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