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【NFL】第57回スーパーボウルMVPマホームズ、元プロ野球助っ人の息子に「史上最高のQB」の呼び声

【NFL】第57回スーパーボウルMVPマホームズ、元プロ野球助っ人の息子に「史上最高のQB」の呼び声
4年で3度目のスーパーボウル進出となったQBパトリック・マホームズ(C)Getty Images

スーパーボウルMVPには前回優勝時に続いてカンザスシティ・チーフスパトリック・マホームズが獲得した。この試合、パスで獲得した距離は182ヤードと、豪腕で知られる彼としては少なかった。が、とりわけ後半に着実にパスを通し、最後のドライブでは足が万全ではないにも関わらず、スクランブルから26ヤードのランプレーでボールを一気に相手エンドゾーン近くまで進めるなど、これまで幾度となく見せてきた勝負強さを発揮した。

◆【前編】第57回スーパーボウルMVPマホームズ、「クロックマネジメント」で10差から劇的勝利

日本の一部のファンの間では、1997年から98年途中まで横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に投手として所属していたパット・マホームズ氏の息子だということでも知られる(彼も日本に滞在していたそうだが「2歳か3歳でなにも覚えてない」と話している)。

◆【実際の映像】元ベイスターズの父、パット・マホームズと勝利の抱擁を交わす

しかしそれよりも、今シーズン、2018年シーズンに次ぐレギュラーシーズンMVPを獲得し、2度目のスーパーボウル制覇を成し遂げたマホームズは、27歳にして早くも史上最高のQBの「系譜」にその名を刻んだといえる。スーパーボウル優勝回数という点では昨日、引退を表明したトム・ブレイディ(タンパベイ・バッカニアーズ)の7度(スーパーボウルには10度出場)にはまだまだ及ばないものの、より「個」の力量が高いマホームズをいまの時点で「史上最高のQB」だとする声すらある。

■進む「NBA」化、しかしチーフスには心配無用

近年のNFLでも「NBA」化が、進んでいる。いまのNBAではスター選手の発言権が強く、優勝が狙えるチームへとすぐにチームを移ってしまう傾向が強くなっている。NBAほどではないにしろ、NFLでも以前と比べるとそうした傾向が色濃くなりつつある。

NFLでは、チームが有能な選手を集めて優勝が狙えるようになった場合、4年間のうちにそれを実現すべきだというのが共通の認識となっている。契約上給与を低く抑えられる「ルーキー契約」下にある有能な選手たちが5年目以降、移籍してしまうと戦力が落ちてしまう可能性があるからだ。

しかし、チーフスにおいてそういった心配をする必要はあまりないかもしれない。まず、2020年に10年で総額5億300万ドル(当時のレートで約540億円)という長期の大型契約を結んでいるマホームズが、今後も中心選手としてい続けられることがその大きな理由だ。

チーフスは今シーズンまで5年連続でAFC(アメリカンフットボールカンファレンス)チャンピオンシップ(プレーオフ準決勝)に進出しており、うちスーパーボウル進出が3度と他を圧倒しているが、ダイナスティ(王朝)を築いたかどうかを問われると「いやまだまだこれから。これからそれを築いていけるようにやり続けないと」(スーパーボウル優勝直後にNFL専門局『NFLネットワーク』のインタビューより)と謙虚かつ意欲が高い。

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アンディ・リード・ヘッドコーチはマホームズには「周囲を上達させる能力がある」(前述『NFLネットワーク』での談)としている。64歳の名将、リードHCが近い将来に勇退するのではないかと囁かれており、あえて言えばそこがチーフスにとって危惧される点。だが、それでもマホームズがいれば今後もこのチームが強豪の地位から転落することは考えにくい。来季以降も、このチームが中心となってNFLは回っていくのではないか。

■今シーズンは有能な若手QBらが台頭か

昨季、マホームズ(左)とブレイディの新旧QB対決がスーパーボウルで実現  世代交代の契機となった(C)Getty Images 

2022−23年シーズンは、NFLにとって新たな世代が台頭する転換期となる年だった。少し前まではブレイディやアーロン・ロジャース(グリーンベイ・パッカーズ、過去4度のMVP)ら30歳以上のQBが優勝を争う傾向が強かったのが、今年のポストシーズンでは1回戦でブレイディのバッカニアーズが敗退し、ディビジョナル・プレーオフ(準決勝)に進出した8チームの先発QBはすべて30歳以下という顔ぶれとなった。

来シーズン以降は、マホームズ、ジェイレン・ハーツ(イーグルス)、ジョシュ・アレン(バッファロー・ビルズ)、ジョー・バーロウ(シンシナティ・ベンガルズ)、ラマー・ジャクソン(ボルチモア・レイブンズ)、トレバー・ローレンス(ジャクソンビル・ジャガーズ)といった、プロ入りからの年数が浅いながらも有能なQBたちが、スーパーボウル優勝を狙う戦いの中心となっていくだろう。

その前に、まずは前述したNFLの「NBA化」により、トレードや3月から解禁となるFA市場でスター選手たちの移籍が盛んに見られるはずだ。4月下旬には、数年前からNFL球団のある都市での持ち回り開催となり一大イベントとなっているNFLドラフト(今年の開催はチーフスの地元、カンザスシティ)もある。

スーパーボウルをもってシーズンが終了し、試合が見られない寂しさはあるが、オフシーズンにもさまざまな催し、動きがあるNFLというスポーツビジネスの巨人が、止まることはない。

◆【実際の映像】元ベイスターズの父、パット・マホームズと勝利の抱擁を交わす

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◆【前編】第57回スーパーボウルMVPマホームズ、「クロックマネジメント」で10差から劇的勝利

◆父をも超える活躍を見せたスーパーボウルMVP、パトリック・マホームズの軌跡

著者プロフィール

永塚和志●スポーツライター

元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。