【スーパーフォーミュラ】第7戦 “蘇った王者の力” 野尻智紀がポール・トゥ・ウィン「今季最高じゃないですか?」

 

【スーパーフォーミュラ】第7戦 “蘇った王者の力” 野尻智紀がポール・トゥ・ウィン「今季最高じゃないですか?」
野尻智紀(C) JRP

今シーズンのスーパーフォーミュラは、モビリティリゾートもてぎで行われた今回の第7戦が終われば、鈴鹿での最終2連戦を残すのみ。タイトル争いも佳境だ。

◆【実際の映像】ポールトゥウィンを決めた野尻智紀「3連覇に向かって引くつもりはありません!」

■トップチェッカーを受けた野尻「最高じゃないですか?」

第6戦終了時点でランキングトップは86ポイント獲得の宮田莉朋(トムス)で、2位が85ポイントのリアム・ローソン(無限)。3位は野尻智紀(無限)だが、61ポイントと差は大きい。ここまでの安定感から見て、候補は2人にほぼ絞られたと考えていた。

理由は点差だけではない。第6戦で走り出しからレースまで苦戦し続けた野尻は「トンネルの出口が見えていない」と語っていた。各箇所でのミリ単位の緻密なセッティングを重ね合わせライバルとのコンマ1秒差をひねり出すスーパーフォーミュラだけに、地力のある野尻とはいえその状態から追いつくのは難しそうだった。

その流れが、第7戦で一変した。優勝したのはなんと、その野尻。しかもポール・トゥ・ウィンの完全勝利。王者の強さがすっかり蘇った格好だ。これで、一度は潰えかけたに見えていた3連覇の可能性が再び浮上してきた。

「前回の富士では何をやってもうまく行かなくて自信を失っていたが、チームが頑張って今回のために準備してくれたものにトライしていく中で良い方向性が見つけられた。だからミスをしても良いから攻め切ろうという気持ちもあった。今日は100%、力を出し切れた」。ポールポジション獲得後、野尻はこう語った。だがその時点ではまだ、決勝でもトップを最後まで守れる自信はなかったようだった。

コースレイアウト的に抜き難いもてぎではポールは確かに有利だが、37周の短いレースで必ず1度ピットインしタイヤ交換しなければならないというルールは、戦略で抜くことを十分可能にする。スーパーフォーミュラには、オーバーテイクシステムもある。決勝は決勝で、別の強さが求められる。

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ところが蓋を開けてみれば、今回野尻は決勝でも鉄壁だった。

スタート周回でまず、3番手から好ダッシュを決め2コーナーでアウトから並んできたローソンをギリギリ抑えると、序盤は着実に2位とのギャップを広げ、大湯都史樹(TGM)のアンダーカット、平川亮(インパル)のオーバーカットも阻止。そこからチェッカーまで、2位以下を寄せつけなかった。「まず重要なのが、スタートを決めること。その後はピット戦略など、その後の展開を自分で決められるだけの幅を作りたい」。予選後に決勝のプランを聞いた際、返ってきた答え通りのレースだった。

第7戦後のポイントランキングは、野尻が23ポイントを一気に加えたものの順位は変らず3位。今回ノーポイントに終わったローソンには2ポイント差まで近づいたが、スタートで8番手からさらに大きく後退しながら4位まで盛り返し、8ポイントを加えた宮田とはまだ10ポイント差がある。

こうなると残り2戦に対し宮田に結構なアドバンテージがあるようにも思えるが、チャンピオン獲得の自信について宮田に聞いたところ「全くない、なぜなら無限が強いから」。野尻を深刻なスランプから一気に立ち直らせた無限のチーム力を、ここに来て驚異に感じているようだ。

一方、野尻はトップチェッカーを受けた後、インタビューに「これで最終戦でのタイトル争いは面白くなった。今シーズンのスーパーフォーミュラ、最高じゃないですか?」と、当事者らしからぬコメント。王者の強さが本当に戻ったのかどうか、最終戦で確認したいというワクワクがそこに溢れていた。

リードはあるもののプレッシャーもある宮田、チームメイトとのバトルの末にクラッシュし決戦を前に初のノーポイントを喫してしまったローソン、この2人に対し精神的な面でポイント差を埋める優位性が野尻には十分にあると思える。

◆【実際の映像】ポールトゥウィンを決めた野尻智紀「3連覇に向かって引くつもりはありません!」

◆初クラッシュ&初“決勝ゼロポイント”のローソン「野尻さんは僕に対してスペースを残したと思う」

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。