中町公祐は、新天地でどう受け入れられているのか…ザンビアでサッカー観戦してきた

2019年に横浜F・マリノスから移籍した中町公祐選手。同年2月、2018年シーズンのザンビアン・プレミアリーグでチャンピオンとなったZESCOユナイテッドFCに入団した。

ZESCOユナイテッドFC本拠地のンドラは、ザンビアの銅の産地であるカッパーベルト州の工業、商業、行政、流通の中核都市。

僕は、2月17日に行われた中町選手が所属するZESCOユナイテッド(以下、ゼスコ)対、ルサカが本拠地のチーム、ZANACO FCの試合を観戦しに行った。

中町選手は出場しなかったが、ゴールを見ればとにかくシュートを放つ姿勢や、弾丸コーナーキックを直接オーバーヘッドで枠に入れるといった離れ業を堪能することができた。

カシーとスタジアムへ

試合前日はスタジアムへの交通手段もチケットの買い方も分からない状態。でもゼスコのユニフォームも購入したかった。ゼスコユニフォームを着た街の人に片っ端から声をかける。

そのうちの一人、普段はパソコンやスマートフォンの修理をしている、カシーという名の男性が、我々をスタジアムまで連れていってくれるという。

試合時間は午後3時から。午後2時に待ち合わせした。

「チケットも、ユニフォームも買いたいのだけれど1時間前で大丈夫?」と問う。問題ない、とのことだった。一抹の不安。

現地に住む青年海外協力隊の方から、「チケット売り場は非常に混雑しており、ザンビアの人は大抵後半から入場してくる」と聞いていたので、心配もひとしおだ。

翌日2時にカシーの元へ行くと、案の定、「いま作業してて少し忙しいから、あと30分待ってくれ」と。最悪後半から見れればいいか……。と覚悟を決める。

結局出発したのは2時40分だった。5人乗りの車に、成人男性7人で乗り込むため、速度が出ない。

スタジアムに到着。2時54分。試合開始6分前。スタジアム入口に走っていく人々の姿を見た。直前に走るくらいなら早めに向かえばいいのに……。

ザンビアの誇るレヴィー・ムワナワサ・スタジアムは 収容人数49800人。中国の支援により建設された。なんとなく埼玉スタジアムに似ている気がした。

事前に伝えてくれていたのか、車から降りるや否やユニフォームを男性が売りにきた。250クワチャ(2019年4月18日現在、1円=0.11クワチャ。)が言い値。

事前にユニフォームを着ている人に「いくらで買ったの?」と聞き相場を掴んでいたので、220クワチャで入手する。彼は200クワチャで購入したと言っていたが「まぁ急いでいたのでいいだろう」とすぐに購入し、着て、走る。

チケットは20クワチャ。カシーがチケット売り場に群がる人を押しのけ、皆の分を纏めて購入した。

入場ゲート周辺も人に塗れている。カシーが皆を牽引する。ゲートに群がる人々は、あわよくば隙を見て無料で入場できないか狙っているだけのようだった。

ここから並んで1時間くらいかかるのではないか……。と思われた関門、入場ゲートはまさにハリボテで、ほんの1分で通過することができた。

スタジアム内には、何故か浮浪者たちのグループが。7人ほどだっただろうか。格好や態度から察するに、チケット代を払ってスタジアムに入場しているとは思えない。おそらくだが、スタジアム周辺に住み着いている。

試合会場に入る。3時13分。試合は始まっていたものの、思ったよりも早く到着した。

前から5番目ほどだっただろうか。選手との距離も近い。とはいえスタジアム自体は広いため、触れられるように錯覚するほどではない。なんと、また別のグループの少年たちが前に座っている。

試合中の写真を撮影しようと一眼カメラを取り出した時から、彼らのギロっとした目は、僕に釘付けで少し気を張った。リュックの位置を奥側にずらす。

一人の少年が僕の隣に座った。おそらく、僕のリュック狙い。カシーたちが「Get out!」と叫ぶと、前の方へとすごすごと退散していった。

これがアフリカクオリティ

ハーフタイム。カシーたちに「ビールを飲もう!」と告げられ、階段を登る。

左に曲がり、階段を登る。軍服を着たセキュリティが立ち並ぶエリアに、複数の丸テーブル。奥にはたちょっとしたバー。ビールを売るお姉さんに群がる観戦客。10クワチャでビール1本。

一人のセキュリティはカシーと顔なじみらしく、握手を交わし合っている。カシーが僕らのことを紹介してくれる。僕らにも「ニーハオ」の次に、「こんにちは」と日本語で挨拶してくれた。

ビール瓶で飲めるのはこのエリアのみで、試合会場にはプラスチックカップに入れて持ち込む必要がある。酔った客が瓶で暴れるのを防ぐためだろうか。

ひとしきり飲んだあと、席に戻ろうとしたところをカシーに呼び止められた。

「VIP席に行くぞ」

耳を疑った。僕らが購入したのは20クワチャのおそらく自由席の安チケット。

VIP席に入れる値段ではないだろう。しかしそこは地元のサポーター。チェックするはずのセキュリティと顔馴染みなのだから、VIP席を購入する必要などないのだろうか。

「オーケーオーケー」と白い歯を見せるセキュリティの横をするりと抜け、VIP席に辿り着いた。

秩序立ったザンビアとはいえ、こういうところはアフリカクオリティ。とにかく、彼らのおかげでリッチな観戦気分を味わえた。

試合内容は白熱したものとなったが、結果は0-0。縦にボールを放り込むスタイルのZANACOに対して、ボールをつなぎ崩していくゼスコのサッカーの方が見ていて面白かった。

試合が終わると、驚愕した。VIP席の後ろから、前半の際に座っていた席の周辺にたむろしていた少年たちがぞろぞろと出てきたのだ。セキュリティ、ガバガバじゃないか……。

おそらくカシーたちといたから最後までついてくることはなかったが、僕らだけでいたらずっと狙われ気を張っていたことになったであろう。

ザンビアの子どもたち

スタジアムを後にすると、外の駐車場にはゼスコのバスが。バスの前の土手には、選手の出待ちをしている少年たちがずらりと座っている。

事前に知ってはいたが、この試合に中町選手の出場機会はなく、ベンチ入りもしていなかった。とはいえ、もしかしたら中町選手も出てくるかもしれないと、僕も少年たちと出待ちをすることに。

13歳の物売りの少年が、人懐っこい。ザンビアでは、こうした境遇の少年でも英語を操ることができる。

彼と話していると興味からか、まさに30人を優に超えるであろう少年たちが僕らの周りにずらりと集まってきた。

スタジアム内にいた少年たちと違い僕の物を狙っているような気配は特になかったが、もし囲まれたらこの人数には勝てないな……。といった思いがよぎる。

控え目な様子で、「お金をくれないか……?」とねだってくる子も。

40分後ほどだろうか。選手が現れた。ゼスコのバスに乗る選手は5人ほど。選手の1人に、「今日、中町選手はこのバスに乗りますか?」と問いかけてみる。どうやら乗らないとのことだった。残念。

帰ろうとすると、近くにプロ選手がいるにも関わらず、数多の子どもたちが僕らの元に集まってきた。

100人ほどいたのではないだろうか。いくら危険な香りのしなかった子どもたちとはいえ、中には隙を見て何かを盗もうという子どももいるかもしれない。

流石に少し焦る。

更に僕の焦りを加速させたのは、明らかに酔いのまわった守衛が僕らを「助けよう」として登場した瞬間だった。

少年たちをなりふりかまわず威嚇し、「What do you want?」と彼らを煽る。子どもたちも「Money!」と応戦。

たちまち「What do you want?」「Money!」の大合唱になる。この守衛、完全に逆効果だ。穏やかな様子だった子どもたちが、守衛に煽られ興奮していく様子が見てとれた。

僕がもっとも焦りを覚えたのは、守衛が石をわしづかみにした瞬間だった。運良く子どもたちは退散したが、それに呼応するように守衛、つまり僕らの方向に石を投げようとする子どももいるかもしれないではないか。

結果的には何とか無事に流しのタクシーを拾い、街に戻ることができ、ホッとした。

ナカマチのいる街

さて、中町選手は街ではどのような迎えられ方をしているのだろうか。

街でゼスコのユニフォームを着た人から、宿のスタッフまで、色々と中町選手について聞いてみた。

流石にゼスコファンはみな、中町選手がチームに移籍してきたことを知っていたものの、街で話を聞いた人は7人中1人しか中町選手のことを知らなかった(2月17日時点の話なので、今は状況が変化していると推測される)。

当時は、試合に出場もしていなかった同選手。知られていないのも無理はない。なお、3月13日に中町選手はついに83分から途中出場し、デビューを果たしたことが報じられている(ゼスコ・ユナイテッドは1-2で敗戦した)。

一人のファンはこう語っていた。

「まだナカマチのプレーを見ていないから何とも言えないけれども、彼のプロフィールを見る限り、いい選手だろうと予測はつく。ここでも活躍してくれることを期待しているよ」

「ナカマチの影響によってゼスコが、アフリカのみならずアジアにも知られることができれば、君たちのようなナカマチファンが、どんどんゼスコを応援してくれるはず。インターナショナルなチームにゼスコがなっていくのは、とてもいいことだ」

ザンビアの地元メディアは、中町選手のゼスコへの加入は、「ゼスコのみならずザンビアサッカー界全体に大きな影響をもたらす可能性がある」と指摘する。日本のマーケットをザンビアに呼び込めることへの期待が込められているようだ。

3月7日には現役選手初のJFA国際委員に選任された中町選手。

自身のインスタグラムで意気込みを語ったが、こうした姿勢を持つ日本人選手が活躍することは、ザンビアならず、アフリカサッカーのプラスになることは間違いないだろう。

中町選手は「確かな一歩を踏み出しました。しかし更に信頼を得れるように、毎日積み重ねて結果を出していくしかないですね!」とも語っている。

チーム・街から今後どのように受け入れられるようになっていくのか、今後の中町選手の活躍から目が離せない。

≪参考記事≫


《文・撮影=大日方航》

この記事が気に入ったらフォローしよう

最新情報をお届けします