【毎日王冠/血統展望】東京芝1800mで“ベタ買いOK”の種牡馬 「現役屈指のギアチェンジ能力」で巻き返し期待

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【毎日王冠/血統展望】東京芝1800mで“ベタ買いOK”の種牡馬 「現役屈指のギアチェンジ能力」で巻き返し期待

今週末は、第75回毎日王冠(GII、東京芝1800m)が行われる。

同一レース連覇を狙うディープブリランテ産駒エルトンバローズ、重賞連勝中のマインドユアビスケッツ産駒ホウオウビスケッツ、宝塚記念以来の実戦となるハービンジャー産駒ローシャムパークなど、多彩な血統構成の馬が集結。

ここでは、馬券検討のヒントとなる「血統」で本競走を攻略する。

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■東京芝1800mはキズナ産駒が“ベタ買いOK”

とにかくこのレースと相性が良いのが父ディープ×母父ストームキャットの配合パターン。これまでにのべ5頭が出走してエイシンヒカリ、リアルスティール、19年ダノンキングリーの3勝に加え、サトノアラジンと21年ダノンキングリーの2着が2回。

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【3.2.0.0】で勝率60.0%、連対率100%なわけだから、これは相性バツグンと呼んで差し支えないだろう。

また父ディープ×母父ストームキャット配合の代表で、後継種牡馬の筆頭たるキズナの産駒も、昨年初めてソングラインが出走しハナ差の2着と好走。1人気だったのでさもありなんという感じかもしれないが、やはり好相性は健在のようだ。

毎日王冠に限らず、ディープ×ストームキャット配合の種牡馬は東京芝1800mを得意にしていて、このコースにおけるキズナ産駒の通算成績は、【12.14.15.64】で勝率11.4%、複勝率39.0%。回収率も単勝149%&複勝128%とベタ買いOKの数字となっている。

同じく「ディープ×ストームキャット」種牡馬のリアルスティールも【5.3.6.26】複勝率35.0%と高水準の産駒成績を記録している。

大種牡馬ディープインパクトは天に召されたわけだが、ディープ×ストームキャットはその後継種牡馬の産駒によって毎日王冠で輝きを放ち続ける可能性は高いと見る。今年も該当種牡馬の産駒にはマークが必要になりそうだ。

■展開も重要な今年の毎日王冠

今回注目したいのは、ディープインパクト&ストームキャット持ちの馬。ここでは該当馬のシックスペンスをピックアップする。

父はキズナ。母フィンレイズラッキーチャームはアメリカでダート7FのGIマディソンS勝ち。母父トワーリングキャンディもダート7FのGIマリブS勝ちの実績がある。

母の血統を見てみると、ダンジグ4×4やクリプトクリアランス4×3があり、いかにも短距離のダッシュ力に優れた配合という印象。ダートの短距離で実績を残したのは納得の配合形だ。

その母にキズナが配されたシックスペンスに抱いているのは、母譲りのダッシュ力や加速力が活きる中山向き、小回り向きの小脚型という印象。スプリングSで超スローからラスト2F10秒9→10秒8の流れを抜け出したように、一瞬でトップギアに上げられる、ギアチェンジ性能に優れた回転力のあるマイラーに見える。

普通に考えれば直線の長い東京コースではあまり買いたくないタイプなのだが、今年の毎日王冠ならば狙う余地があるのでは?

というのも今年の毎日王冠には明確な逃げ馬がいないから。逃げ候補はヤマニンサルバムとホウオウビスケッツになりそうだが、2000mベストのヤマニンサルバムの逃げはそれほどガンガン行く形ではないし、ホウオウビスケッツは前を見ながらの番手策でここ2戦結果を残しているので、わざわざハナを取りに行くのかは疑問。

ハイペースで流れるとすればマテンロウスカイがかつてのように暴走気味に逃げたときだろうが、逃げて早々に失速した前走ドバイターフをもってしてもなお鞍上が逃げにこだわるとは思えず。馬の気分に任せての競馬になるはずで、無理に出していくことはないだろう。

■シックスペンスはギアチェンジ能力なら現役屈指

となると、前半1000m通過が59秒台、下手をすると60秒くらいかかる2010年代に多かった毎日王冠の流れを想定。リアルスティールが勝った17年(前半100m60秒0-上がり600m33秒5)やアエロリットが勝った2018年(同59秒0-33秒8)のような、上がりだけ速いレースになるパターンを考えるべき。

スローペースで流れた毎日王冠は小回り向きの機動力を備えた馬がラスト2Fの脚の回転力だけで抜け出してしまうことも少なくない。

カンパニーがウオッカを下した2009年の毎日王冠が代表例で、この年は前半1000mの通過が60秒0で流れ、ラスト2Fが11秒1→11秒6の22秒7。このペースで”府中の女帝”ウオッカを交わしたカンパニーは、中山記念の連覇や産経大阪杯制覇など、小回り中距離での活躍が目立つベテランだった。

ちなみにこの勝利の後、カンパニーは天皇賞・秋でもウオッカを下すのだが、その天皇賞・秋の上がり2Fも22秒9(11秒3→11秒6)と最後まで失速しない形だった。

カンパニーが8歳で大成したのはトニービンとノーザンテーストのハイペリオンによるところが大きい一方、本質的なカンパニーは祖母クラフティワイフの北米的な軽いスピードとバレークイーンのフェアトライアル、レディジュラー的な機動力で走る馬。

毎日王冠と天皇賞がスローペースのダッシュ力勝負になってくれたがゆえに、それまで散々敗れ続けたウオッカに対して往復ビンタを喰らわせることができたのだろう。

基本的に小回り向きの機動力、脚の回転が速い馬は、高回転数を長時間維持できないため、長い直線だとラストで失速する。ただスローペースだとエンジンを早い段階で吹かすことなく残り400mを迎えることができる。しかもペースが緩いので、馬群はバラけずひとかたまり。

ここからヨーイドンで追い出すと、エンジンの点火に時間がかかる大箱向きの馬に比べて、ピッチ走法で走る小回り向きの馬の方がトップスピードへの移行は早いので先に抜け出せる。しかもスローペースの恩恵で道中なし崩し的に脚を使わずに済むので余力はタップリ。最後の減速も抑えることができる。

そのためストレッチランナーの差しが間に合わず、結果的に小回り向きなのに大箱で勝ってしまうという状況になるわけだ。

東京では大箱向きの馬を狙いたくなるものだが、ペースによってはあえて小回り向きだとアタリをつけている馬を狙うのも手になる。

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今回のシックスペンスはまさにそのパターン。ラスト2F10秒9→10秒8の流れを余裕綽々で抜け出したスプリングSは圧巻で、ギアチェンジ能力なら現役屈指。スローからのラスト2F加速力勝負で決着をつける絵は十分に描ける。

東京芝1800mと相性の良いキズナ産駒でもあるし、ここは巻き返しに期待したい。

あとは枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論に至りたい。

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著者プロフィール

ドクトル井上
【重賞深掘りプロジェクト】血統サイエンティスト。在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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