圧倒的な強さでリーグ連覇を達成するも、日本シリーズでは2年連続でソフトバンクに4連敗を喫した巨人。今や名実ともに名将の域に達した原辰徳監督にとって、リーグ3連覇は単なる通過点であり、目標は2012年以来となる日本一しかない。今オフもFAや大物外国人獲得と積極的な補強を行ったが、それを上回る予想外のプラスアルファもあった。
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■FA、新外国人、ドラフトで効果的な補強に成功
毎年の恒例行事のようになっているFA補強では、DeNAから投打の主力選手を獲得した。投手では、手薄な先発陣の一角として井納翔一が加入。野手の梶谷隆幸は、昨年リーグ2位の打率.323をマークした俊足巧打の外野手で「1番・ライト」での起用が見込まれている。
新外国人は、強打の野手を2人獲得した。内野手のスモークは、メジャー通算196本塁打を記録しているスイッチヒッターで、マリナーズ時代にはイチローや岩隈久志らとプレーした経験もある。テームズは、2015年に韓国で47本塁打、40盗塁を記録して首位打者とMVPに輝いた外野手で、メジャー復帰後も19年にナショナルズで25本塁打をマークした。入国制限の影響で来日が遅れているが、合流後は必ず戦力になってくれるはずだ。
支配下と育成を合わせて計19選手を獲得した昨秋のドラフトでは、1位指名の平内龍太に先発ローテ入りの期待がかかる。そして5位指名の秋広優人もキャンプでは注目を集めた。巨人では馬場正平(のちのジャイアント馬場)以来となる2メートル超えの身長に、打席での立ち姿は大谷翔平を彷彿とさせる大器。壁にはぶつかるだろうが、今季の注目株である。
■菅野の残留で先発陣はひとまず安泰か
投手陣の戦力を見ると、ポスティングでの米国移籍が確実視されていた菅野智之が一転して残留したことはある意味、今オフ最高の補強とも言える。絶対的エースの残留で昨季は来日1年目で8勝したサンチェスと、ブレイクした戸郷翔征を加えた三本柱が固まった。4人目以降はFA移籍の井納や、高橋優貴、今村信貴、横川凱の左腕トリオ、日本シリーズでも先発した畠世周、ルーキーの平内、来日が遅れているメルセデスなどが争う。
リリーフ陣は、昨季守護神を務めたデラロサが左足小指骨折で開幕は微妙となり、中川皓太が新守護神に指名された。勝ちパターンの継投には、昨季防御率1点台の高梨雄平と160キロ右腕のビエイラの左右のセットアップがおり、他にも鍵谷陽平と田中豊樹の元日本ハムコンビにベテランの大竹寛、故障から復帰した戸根千明、育成から支配下登録となった高木京介に新鋭の大江竜聖、先発、リリーフ兼用の桜井俊貴などが争う。
■FA梶谷の動向が打線のカギを握る
攻撃陣は1番に梶谷が定着できれば、2番以降の坂本勇人、丸佳浩、岡本和真まで豪華な名前が続く。5、6番には、本来ならテームズ、スモークの新外国人が入るはずだが、出遅れのためウィーラー、中島宏之、松原聖弥らが候補になる。2番に俊足小技タイプの若手を起用し、丸を5番に配置する可能性もある。小林誠司や炭谷銀仁朗、岸田行倫との捕手争いで大城卓三がスタメンならクリーンアップ起用も有力。正二塁手候補の吉川尚輝は7、8番での起用となりそうだ。
外野陣は実績のある亀井義行、陽岱鋼のベテランに、育成枠から支配下登録が有力な山下航汰も面白い存在になりそう。内野争いは熾烈で、北村拓己や若林晃弘の中堅に、田口麗斗とのトレードでヤクルトから移籍した廣岡大志も加わる。代打、代走では石川慎吾や増田大輝など、リーグ連覇に貢献した脇役も揃う。新外国人2人がコロナ禍の影響で来日が遅れることで、若手や中堅選手には絶好のチャンスとなる。
エースの残留で今季も戦力的には優勝候補の最右翼と言えるが、セ・リーグの他の5球団の“巨人包囲網”をどのように突破するか。2014年以来となるリーグ3連覇は、そう簡単なものではないはずだ。
記事提供:ベースボール・タイムズ
データ提供:野球DB