【SGT】“フルコースイエロー”で、GTレースはどう変わるのか

写真は2014年の10月5日、SUPER GT第7戦から (C)Getty Images

新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年、未開催だったスーパーGT500kmレースが、今年は2年ぶりに復活した。

例年シーズン第2戦としてゴールデンウィーク時期に富士スピードウェイを舞台に行われる同レースは、シリーズ中最も観客を集める一戦。残念ながら今回は観客数が制限されスタンドのファンは拍手で応援するのみと、いつもほどの盛り上がりはなかったが、500kmというレース距離とドライバー交代をともなう2度のピットイン義務というルールが生み出す多様な戦略性により白熱のバトルは健在だった。

■“フルコースイエロー”の影響とは……

Astemo NSX-GT塚越広大/ベルトラン・バゲット)の最大の勝因が速さでも耐久性でも戦略でもなった点。それはズバリ「フルコースイエロー」。今回初導入となったルールがこれで、大きくクローズアップされることになった。

海外のレースではオーソドックスなフルコースイエローは、アクシデントやトラブルでクルマがストップ、またはコース上に障害物やオイルがあって安全にレースが進行できない際に発動され、全車が互いのポジションを変えずに一律に減速し、その間に撤去作業を行うというもの。スーパーGTでは今までこのルールがなく、そうしたケースではセーフティカーが用いられていた。だがGT500クラスとGT300クラスが混走するスーパーGTでセーフティカーが入れば、隊列を整えるために多くの時間を要することで見る側にとってはレースの流れが停まったようになり、参戦する側にとってはそれまでのギャップがなくなる等有利不利が生じると、デメリットが多かった。

スーパーGTでは以前からセーフティカーに代わる措置として検討されており、管理システムが整ったことで今回初導入となった。そしてレース序盤の32周目、1台のクルマがコース上にタイヤを脱落させたことで早速発動。このあたりは最初のピットインタイミングだったのだが、発動されればピットインはできない。そんな中、発動を予測してか、はたまた偶然か、Astemo NSX-GTは直前にピットインし一気にトップに立った。まさに“神タイミング”のピットインだった。

ちなみにその後Astemo NSX-GTは2度目のピットインで作業に手間取り、接近してきた後続から猛攻を受け一時トップを明け渡すことになるも再逆転。このあたりの戦いぶりは確かに勝者に値するものであり決して運だけの勝利ではなかったと思うが、勝利の最大の要因はやはり、フルコースイエローだったと言える。

レース後、海外でフルコースイエローを何度も経験しているドライバーにスーパーGTでの運用について聞いたところ「海外ではフルコースイエローは短いスパンで作業が終えられるケースで導入され長引きそうだとセーフティカーになるので、セーフティカーの代わりとしてはどうかと思う。あまり長いとタイヤもブレーキも冷えて、リスタート後が危険になるし。また今回はフルコースイエローによって大逆転劇が生まれている。そうした有利不利をなくすことも目的であるはずが、セーフティカーと同じことになった」と、まだまだ改善の余地はありそうだ。

すべて納得のいくルールというのは難しい。だが少なくとも観る側としては、レース3度も発動されたのにレースが停まった感がなく、おかげで盛り上がりは持続したと思えた。有利不利についてもAstemo NSX-GTが大きな幸運を得たことで目立ってしまったが、セーフティカーのようにあちらこちらでそれが生じることはなかったはず。導入はスーパーGTにとって少なからず“前進”だといえるのではないだろうか。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター
2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。


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