■「世紀の一戦」で勝敗を分けた3つのポイントとは
勝負を分けたポイントは、大きく3点あると筆者は考える。
1つ目は、魔裟斗の指摘通り“天心の右ジャブ”だ。距離を詰めるべく、武尊が出る絶妙なタイミングで繰り出すジャブ。武尊のセコンドから「ジャブは捨てろ」との声が上がっていたと天心はいう。それを聞いて、逆に強めのジャブを打ち続けた。この攻撃が起点となって、左のカウンターに繋がったと言える。
2つ目は、“天心の戦い方そのもの”だ。天心は、武尊戦が決まった際、相手との違いを“マインド”と表現していた。筆者はいわゆるそれを、勝ちに対する貪欲さと考えている。
天心は、決して危ないことをしない。打ち合いでいうと「効かせるタイミングを待って打つ」「危険な攻撃は避けた上で打つ」。これを徹底しているのだ。一方の武尊は「死ぬ覚悟で危険な距離で入って打つ」と以前から話している。
武尊自身も、天心にフックをヒットさせるべく攻撃を出していた。しかし、天心は冷静にその攻撃を見てダッキングなどで交わす。その上で、どの攻撃が当たるのかを常に観察していた。当たるタイミングを測った上で、攻撃を繰り出している。
また、戦いにおいて決して熱くならない。武尊がどれだけノーガードで笑おうと、メンタルが一切ブレることはなかった。そのシーンを天心は「ここで乗ったらダメだなと思いました」と振り返っている。どの局面でも、那須川天心の戦い方を貫ける。
3つ目は、“セコンド陣との戦略”だ。ダウンを奪ったパンチについて「最後に確認した」と語っているように、試合前からどのようなパターンで相手を料理するのか、戦略を綿密に立ててリングに上がっている。試合後には「武尊選手が笑ったらどんな攻撃を出すのかも分析していました」というほどの、徹底ぶりだ。
試合前のインタビューで、天心は「(攻略の)イメージ出来ていますね。全てにおいて見える。何パターンも技を用意しています」と話していた。一方の武尊は「特別イメージは持たないようにしています。戦ってみてその時に自分の直感を信じて戦おうと思っています」と語っている。
もちろん武尊が天心対策をしていなかったというわけではない。だが、最終的には「天心の綿密な戦略」vs「武尊のこれまで打ち合いで殴り勝ってきた感覚」。その激突で、天心は戦略勝ちしたというわけだ。
武尊は、打ち合いに来てくれる選手との戦いにめっぽう強い。K-1でしのぎを削って来た相手は、村越優太を除くと打ち合い上等の選手が多い。逆に、危険な打ち合いに付き合わない選手=天心を相手には、自身の力を発揮することが出来なかった。
天心はこの試合を最後にボクシングに転向。武尊はどのようなキャリアを歩んでいくのか。勝敗は付いてしまったが、天心も最強、武尊も最強であることには変わりない。ファンの心に深く深く刻まれる世紀の一戦を戦った両者に、心から拍手を贈りたい。
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文・吉田崇雄










