サッカー日本代表のエースナンバー「10」を背負う南野拓実は今夏、出場機会を求めて世界屈指の強豪リヴァプールからフランスの名門ASモナコへ完全移籍した。1500万ユーロ(約21億円)の移籍金は今夏のフランスリーグ全体で3番目の高額投資であり、クラブの期待も大きい。
先日行われた、PSVアイントホーフェンとのUEFAチャンピオンズリーグ(以下、CL)予選3回戦、南野は2試合ともに先発出場。しかし、決定機を逃して結果を残せず。チームも敗れ、CL出場を逃した。リーグ戦では未だ出番がなく、本領発揮とはいっていない南野だが、11月にカタール・ワールドカップを控えた中、勝負をかけた新天地モナコでの今季の起用法には注目が集まっている。
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■真骨頂はFW顔負けの得点力
南野は森保一監督が率いる現体制下の日本代表で、FW大迫勇也(ヴィッセル神戸)と並ぶ最多17ゴールを挙げている。2016年リオデジャネイロ五輪出場など、年代別代表でも不動のエースとして活躍してきた。昨季は世界屈指の攻撃陣が揃うリヴァプールで出場時間が少なかったものの、公式戦10ゴールを挙げてチームの国内カップ2冠に大きく貢献している。
南野は純粋なFWではないが、ストライカー並みの得点力を誇る。ペナルティエリア付近でのターンや素早い身のこなしは専売特許だ。日本代表では[4-2-3-1]システムのトップ下として得点を量産して来た。しかし、鎌田大地(フランクフルト)の台頭や[4-3-3]へのシステム変更もあり、左サイドが定位置となった。それを機に彼の得点が大幅に激減しているのだ。ゴールから遠いポジションでは彼本来の持ち味が発揮されていない。
しかし、南野はセレッソ大阪でのデビュー当時からサイドハーフとしてプレーしてきた。欧州移籍後のザルツブルクでも右サイドハーフとしてポジションを掴んでいる。守備意識の高さも彼の魅力だ。
■欧州最先端戦術の申し子
ザルツブルク時代の南野は攻撃時にサイドに張るのではなく、頻繁に内側のスペースに入って中央でプレーしていた。ただ、守備時は持ち場の右サイドに戻って守備ブロックの一員として機能していた。ここまでは現在の日本代表でのプレーとほぼ同じだ。
近年の欧州サッカーの戦術トレンドを産み出したとされるザルツブルクは、ボール奪取から一気呵成に直線的にゴールへと向かう超高速カウンターを武器とする。「嵐を引き起こす」という意味合いで、「ストーミング」と形容される最先端戦術で、ボールを奪う位置は相手ゴールに近ければ近いほど理想的だ。
これを成立させるうえでは、自分達がボールを奪われた瞬間に奪い返しに行く必要がある。そのため、攻撃時に中央で密集を作ることが必須で、その素早い攻守の切り替えで南野は活きる。「サイドハーフなのにサイドにいない」、一見すると奇妙に見えた南野の動きは、チーム戦術として確立されていたのだ。
ザルツブルクだけでなく、南野がこれまで在籍したC大阪やリヴァプール、サウサンプトンは全て同系統のスタイルを持つチームだ。これらのクラブ間での移籍が多いのも、それを証明している。つまり、彼は欧州最先端戦術の申し子なのだ。