■課題は得点以外のプレー
日本代表は毎日同じメンバーでトレーニングをするクラブチームではない。ザルツブルクのように特異な戦術を浸透させる時間はない。そこで南野の起用法が問題となった。加入直後で右サイドハーフ起用となっているモナコでも同様だ。
日本人のアタッカーが海外移籍後に直面する大きな課題に、「得点力」と「守備力(意識)」、「戦術理解」がある。しかし、南野はそれらを高いレベルで備えている。ただ、自らが結果を残せる半面、アシストやゲームメイク、ひいてはボールに絡む回数が少ない。彼の場合は得点以外のプレーに課題がある。

上記に南野のプロキャリアでのリーグ戦出場記録をまとめた。注視していただきたいのは、「出場率」だ。例えば、年間32試合制のリーグであれば、[32×90分=2880分で、「出場時間」÷2880=「出場率(%)」という具合で算出している。
これを基に考えると、ザルツブルクでは3年目に全体の3割程しか与えられなかったプレータイムでMFながら11ゴール(時間に直すと、1試合1得点ペース)を挙げたことは驚異的だ。一方、絶対的な存在となったのは、最後の半年間のみだったのが実情だ。得点以外でのプレーに伸びしろを残すのは、プレータイムが安定せずに周囲との連携が進まなかったからだ。
また、出場率65%を越えているのはC大阪時代の3年目のみ。この年、チームはJ2降格を喫している。南野は前年に『Jリーグベストヤングプレーヤー』を受賞するなど期待を集めていた。主力の怪我もあってチームが低迷する中、当時19歳の彼が虚ろな表情で敗因を語る姿は痛々しかった。ただ、10代での苦しい経験が彼を精神的にタフにさせた。
現在のモナコでの南野は、サイド突破が武器なポルトガル代表のジェルソン・マルティンスとポジションを争っている。[4-3-1-2]を採用する際は、トップ下に入るロシア代表の司令塔アレクサンドル・ゴロビンとの競争となる。どちらも得点力では南野が上回るが、そのポジションのスペシャリストとしては彼等が勝っている。ポジション争いは激しいが、強靭なメンタルを持つ彼はそれに打ち勝っていけるはずだ。
南野に求められるのは、攻撃面でゴール以外での貢献度を上げることだ。具体的には攻撃の起点になったり、ゲームメイクに絡むなど、MFとしてプレーするうえでの細かいプレーだ。起用ポジションなどは周囲の選手とのバランスも関わってくるため、あとで調整が利く。まずは得意のゴールという目に見える形の結果を出して定位置を掴むことが先決だ。それは11月開幕のカタールW杯に出場する日本代表でも同じことが言える。
南野は高校1年時の冬、モナコへ2週間の練習参加でやって来た。11年経った現在、大きく成長した彼はリヴァプールという世界トップクラブでのプレーも経験し、モナコに即戦力の選手として迎えられた。年齢的にも成熟期にある27歳となった南野拓実はゆかりあるクラブでどのような活躍を見せてくれるのか。
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文●新垣 博之










