【プロ野球】オリックスの優勝を危うくした福田周平の走塁 無死または一死における二塁走者の難易度

1991年10月27日、ワールドシリーズ第7戦 長打コースと見てヘルメットを飛ばし全力で一塁からスタートしたブレーブスのスミスだったが… (C) Getty Images

紙一重のパ・リーグのレギュラ―シーズンだった。

北海道日本ハム・ファイターズオリックス・バファローズとして行われた9月7日の試合は、オリックスファンと福田周平にとっては忘れられない一戦のはずだ。もしオリックスが最終戦の結果によって2位になっていれば、「あのときの」と後々まで言われるような場面があった。

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■単純な「走塁ミス」で終えるのか

8回表無死一・二塁で4番打者、吉田正尚が右翼フェンス直撃の痛打を放ち、一塁走者でも生還できると思われるような打球だった。しかしこの時の二塁走者・福田は本塁を突くことができなかった。

チームの勝敗やシーズン全体の順位だけでなく、吉田が打点王争いをしていればそれにも影響を及ぼした走塁である。これはたとえ次打者の打撃で吉田が生還したとしても吉田の打点は取り戻すことはできない。プロ野球なのだから個人記録も見逃すことはできない。

いずれにしてもこれで無死満塁となり、悪いことに後続の3人の打者がすべて凡退、さらに悪いことに結局オリックスはこの試合、1点差で敗戦となった。オリックスが最終戦で逆転優勝を飾ったものの、これを逃していれば、この日の痛い一敗で福田の走塁がクローズアップされるところだったと思う。

翌日に福田は登録抹消され、本人も後日走塁ミスと認めているようだが、私は単純に走塁ミスとは言いたくない。

■走塁は勝敗を分ける高度で重要な判断

無死か一死での二塁走者の動きはむずかしい。

三塁走者も近年はギャンブルスタートとかいろいろな動きがあるが、ベンチから指示されていればあとは行くしかない。一塁走者も打球が外野に飛べばかなりのところまでスタートして、捕られたら戻ればいい。ゴロはオールスタートだ。

しかし、二塁走者はなんとしても単打で生還したいと思いつつ、もし捕られたら併殺、チャンスが一気にしぼんでしまう。併殺を恐れスタートが遅れれば本塁にはたどり着けない、という大変むずかしい打球判断を一瞬にしなければならない。何としても1点が欲しい場面でヒット性の当たりが出た場合、併殺、タッチアップで三進、安打で三塁ストップ、生還などの結果が待ち受ける。どれも結果として非常に重い。

この試合の場合も日本ハムの右翼手・万波中正は頭上をはるかに超える打球だとわかっていながらグラブを上げて一瞬振り返り、「このフライを捕れるぞ」というトリックプレーを見せている。これに福田は惑わされ、スタートが遅れたと思われる。三塁へのタッチアップを試みて二塁ベース近くにいたのかもしれない。

打球がどのあたりに落ちそうかは、打った瞬間ではなかなか中継映像でもわかりにくい。観客席の中段くらいから見ていると、「これは明らかに外野手の前で落ちる」と思える打球もあるが、二塁走者は自分の背中側に打球が飛ぶとなかなかスタートを切れないものである。それでも無死か一死で一、三塁か満塁という絶好のチャンスは残るわけで、走者が三塁で止まってもこの時点では大きな落胆を生まないはずだ。だが、この試合のように結局無得点に終わるケースも数えきれないほどある。

つまり、それほど重要な判断なのだが、これを評価する論調をあまり見ない。野手が捕球できそうもない打球にもかかわらず、落下直前までスタートを切らずに三塁で止まったということがあれば、そのあと得点があるないにかかわらず、その二塁走者と首脳陣は話し合い「なぜスタートが切れなかったか」を見極め、次に生かすべきだ。

思い出すのは1991年、ミネソタ・ツインズアトランタ・ブレーブスワールドシリーズ第7戦、両軍無得点で迎えたブレーブス8回の攻撃、無死一塁でそのシーズン首位打者のテリー・ペンドルトンが長打を放ったが一塁走者ロニー・スミスが二塁手のトリックプレーに惑わされ数秒間立ち止まってしまい、三塁ストップとなってしまった。解説者が「That’s a terrible base running.」と叫んだのが今も耳に残る。このときも後続が凡退、ブレーブスは延長の末1対0で敗れ、ワールドシリーズにも敗退してしまったのである。

ブレーブスは90年代最強チームのひとつとされ、91年からリーグ優勝5度ながら、この10年間でワールドシリーズ制覇1度に終わり、こうした走塁はその敗因のひとつに挙げられるほどだ。

走塁が、勝敗を分ける大きな要因である点、メディアもファンも、もっと脚光を浴びせるべきだろう。

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著者プロフィール

篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授

1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。


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