【ラリーアート】AXCRで復活の三菱・増岡浩総監督、「いつかはダカール・ラリーに帰りたい」と夢を語る 後編

2001年のダカール・ラリーを制した、クラインシュミット駆るパジェロ  (C) MMNA

帰ってきたチーム三菱ラリーアートの指揮を取るのが増岡浩総監督。

11月21日からスタートするアジアクロスカントリーラリーAXCR)は、タイを出発しカンボジアまで1700キロ、ジャングルの中も走破する過酷なレース。自然との戦い、地球との戦いに挑む中、三菱自動車ならではのアドバンテージもあると語る。

◆【ラリーアート】AXCRで復活の三菱・増岡浩総監督が語る地球との戦い「それがラリーだ」 前編

■「三菱のクルマはどんなところでも走り切る」

「三菱のクルマはどんなところでも、卒なく走り切る。それは強みだからね。(取材当日、メディア試乗会に使われたAXCR出場車トライトンのように1トン近くある)あんな大きなクルマでも自由自在に向きを変えられる。(自身が第一線でラリーに出場していた頃は)クルマをねじ伏せるように走っていたが、今はドライバーがコマンドを与えるだけで走り切れてしまうレベル」と、そんな難しい環境だからこそ、クルマの強みが発揮できる自負も覗かせる。

メディア向け「トライトン」試乗会のテントで穏やかに、しかし熱く夢を語る増岡浩・総監督 撮影:SPREAD編集部

「7年ぶりといってもAXCRはそんなに敷居が高くないはずです。我々の『量産車+α』でなんとか乗り切れると思います。復帰からまずはアジアで試して、AXCRで頑張って、3年腰を落ち着けて、完全なものを仕上げる。考えるのは、それからですよね」

総監督としてラリーアートとの当面のミッションを踏まえつつも、その将来にはやはり理想を抱くようだ。「やっぱりできればダカール・ラリーのような頂点を目指したい。他メーカーさんと同じ土俵で戦えるところまで行きたい。でも、世界が相手となったら(7年のブランクを)取り戻すのはすごい大変。しかもこれからの時代、世界に出ていく際は電動でしょうね」と、遠くを見すえる。

前身のラリーアートに入社、ラリーに身を投じて来た監督としては、レース活動休止期間中には忸怩たる思いもあったようだ。「三菱は25年もラリーを継続して来たのに、途中でやめてしまった。ラリーを辞めて10年以上。今回がぎりぎりの復活だったと思います。社内の若いエンジニアを育てるのも、若いお客さんを新しく開拓するにも、限界の年月だった。三菱のレース活動を忘れられてはいけない。自分は選手から監督になったが、これまで受け取ってきたものを受け継いでいかなければなりません。いいクルマを整えるから、『思い切ってアクセル踏んで来い』と言えるようにね」と静かな情熱が感じられた。

■「将来的にはトップカテゴリーで走る」

しかし監督しての最終目標は、やはりラリー・ファンが描く最終地点と一致するようだ。「ファンの期待に添えるよう、いつかはダカールに戻りたいね。やはり将来的にはみんなの夢、TOYOTA Gazoo Racingのように、コンプリートカーでトップカテゴリーを走るのが夢ですよ」と目を輝かす。

もちろん、難易度が高いのは承知の上だが、11月には12年ぶりに日本に世界ラリー選手権WRC)「ラリー・ジャパン」が帰って来る。

ランサーWRC05(C)三菱自動車

ひとりのラリー・ファンとして、いつかは三菱もこの舞台に戻って来るのか。実は三菱は初開催となった2004年のラリー・ジャパン直前に、WRC参戦を取りやめた過去がある。それをぶつけると「それには小型セダン高性能四駆がないとね。WRCに戻るには、ヤリスのようなクルマがないと。もうインプレッサやエボ(ランサー)の時代じゃない。ただ(WRCは)いつもヨーロッパの連中がレギュレーションで決められちゃう。あいつら自分の都合で決めるから。まずはクルマ作りからだから難しいよね。うちはまずクロスカントリーラリーから」と、こちらは夢のさらに夢との見方を示した。

ファンにとって「ラリーアート」は、やはり夢の象徴。三菱がそのファンをいかに魅了し、その夢を再び叶えてくれるのか、勝手ながら、楽しみは尽きない。

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たまさぶろ

エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨーク大学などで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。


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