2021-22シーズン、宇都宮ブレックスを2度目の頂点へ導いた安齋竜三ヘッドコーチ(HC)、オフシーズンに宇都宮との契約満了が発表された際には、その去就に大きな注目が集まった。
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■ヘッドコーチはやらないと決めていた
安齋が選んだ次なる挑戦は、B2リーグでB1リーグ昇格を目指し戦う越谷アルファーズだった。
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拓殖大学卒業後、前身の大塚商会アルファーズに入団しプロキャリアをスタートさせた。彼にとってゆかりあるチームに、チャンピオンリングを携え戻ってきたのだ。今シーズンに限っては、HCはやらないと決めていた。「越谷のオーナーには20年以上お世話になっているし、家族は宇都宮にいる。今も試合後に戻っているので、近いことも大きな理由」だった。
宇都宮では創設期から選手として活躍し、その後コーチの道を歩んだ。淋しさがなかったわけではないが、最後のシーズンに優勝までたどり着き「やるべきことはやれた」と達成感のほうが大きかった。11月6日に行われた福島ファイヤーボンズ戦後には、チャンピオンリング贈呈式が行われた。宇都宮のファンも会場につめかけていた。「嬉しかった。アシスタントコーチでもヘッドコーチでも、リングをもらえることは限られた人しか手にできない」と喜んだ。
現在、越谷ではアドバイザーという立場でチームと向き合っている。「コーチ業とメインは変わらない。プラス、宇都宮で創設から15年いた経験を元に、チームのマネージャーやトレーナー、経営にもアドバイスをしている」。
コーチとしては、桜木ジェイアールがスーパーバイジングコーチとして主に指揮し、安齋は一歩下がった場所に控える。試合中も同様。ただ、ここぞという際には立ち上がり後方から指示を飛ばしている。
■B1昇格へはまず意識改革から
越谷がB1昇格を果たすために、まず意識改革から。「ブレックスと比較すると、意識やバスケに対する姿勢が違う。(ブレックスは)ファンとスポンサーを念頭に置いていて、感謝をプレーで表現するための準備を、日々の練習から意識付けられていた」。もちろん、そこには長く日本バスケットボール界を牽引し続ける田臥勇太らの存在が大きかった。「みんな(田臥を)見習っていた。外国籍選手も努力家だった。練習時間が限られた中で、余計その時間を大切にしていた」と振り返る。
越谷はまだまだプロチームとしても発展途上。「若い選手や経験が多くない選手もいるからこそ、自分のためだけにプレーをするのではない」と、安齋は伝えている。開幕からここまで、既に「まだ足りないが、徐々にプロとしてお金をもらっていることへの意識が芽生えている。練習内容も変わってきた。選手たちで練習について、ミスについて、各々声を掛け合うようになった」と変化が見え始めている。
そんな桜木ジェイアールや選手たちは、すでに安齋が加わってからの変化や効果について語っている。桜木は「試合前日に緊張しなくなった」と明かす。安齋はこれについて「自分で追い込んでいただけかもしれないが、試合になると考えてしまいすぎるところがあった」と分析。安斎自身、優勝を成し遂げた昨シーズンは、佐々宜央、町田洋介両アシスタントコーチに部分的に託したことで楽になった経験から、桜木とも「お互いの感覚で助け合い、任せ合っている」という。
安齋とともに、今シーズンから加入したスモールフォワード菊地祥平もチームに大きな影響を与えている。シューティングガードの長谷川智也は先日、試合後の会見で安齋と菊地からは「勝者のメンタリティーがもたらされている。言葉の重みが違う」と語っていた。