ロサンゼルス・エンゼルスは29日(日本時間30日)、ルーカス・ジオリトらベテランを中心に6選手をウェーバーにかけた。公示から48時間以内に獲得希望球団が現れれば、移籍が成立する。トレードとは違い、選手を放出する球団は交換要員を迎え入れることもできず、実質的には年俸削減という意味しか持たない。
エンゼルスは事実上、プレーオフ進出を断念し、解体的出直しを図ることになった。
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■球団の狙いは総年俸の抑制
ウェーバーにかけられたのは計6選手。投手陣ではジオリトのほか、マット・ムーア、レイナルド・ロペス、ドミニク・リオーネの4人。野手ではハンター・レンフロー、ランデル・グリチェクの外野手2人。球団の目的として、総年俸の抑制以外には考えにくく、もし全員が去った場合、700万ドル(約10億2500万円)以上を節約できる計算になる。
主力級の大量放出が見込まれるチームは、同日に行われたフィラデルフィア・フィリーズとの一戦を7-12で落とし、借金は7に膨らんだ。試合後、フィル・ネビン監督は「(ウェーバーは)フロントオフィスの判断であり、チームへの影響はない」と述べ、今回の件で選手たちと話すこともなかったと明かした。ただ、選手たちは試合前には何が起きたか知っており、MLB公式サイトも「クラブハウスには気まずい雰囲気が生じた」と記した。
選手自身がウェーバーにかけられたことを知ったのは、報道や代理人からの電話を通じて。手続きは本来機密だが、あっさり漏洩したことに「これはクレイジーだ。通常は外部に漏れない。普通は舞台裏で進むもので、何が起こったのか、なぜそうなったのか本当に分からない」(グリチェク)と憤った。
■大谷との再契約資金確保か
終戦ムードが漂うなか、今オフにフリーエージェント(FA)となる大谷への影響を指摘する声もあがる。「USA TODAY」のボブ・ナイチンゲール記者は「大谷が今回の資金節約の動きをどう見ているか、それは時間が経てば分かるだろう」と言及。
その上で「彼は右肘じん帯を損傷しているにもかかわらず、DHでプレーし、勝利のためにすべてを捧げている。しかし、彼がプレーしているチームは野球界に対して、もはや勝利を目指すつもりはなく、ましてや競争するつもりもないと通告した」と記し、今回のエンゼルスの行動に疑問を投げかけた。
また、同記者は「もしかしたら、節約されたお金は、大谷との再契約に利用されるかもしれない」としつつ、「その動きこそが、エンゼルスに残りたいという彼の思いを消し去ることになるかもしれない」と推察。大谷が、自身の再契約資金確保のために主力級放出に踏み切るチームを見限る可能性に言及した。
「ヒリヒリする9月を過ごしたい」「勝てるチームでプレーしたい」「このチームでプレーオフに行きたい」と口にしてきた大谷。ウェーバーにかけた6選手のうち4人は今夏のトレードで獲得したメンバー。功を奏さない編成や総年俸削減に走る球団に対して、大谷はどのような思いを抱いているのだろうか。今回のウェーバーが、FA移籍に傾かせたとしても不思議ではない。
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文●SPREAD編集部