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【スーパーフォーミュラ】第8戦 野尻智紀がランキング2位に浮上、トップ宮田智紀との差を6.5ポイントにつめて最終決戦へ

 

【スーパーフォーミュラ】第8戦 野尻智紀がランキング2位に浮上、トップ宮田智紀との差を6.5ポイントにつめて最終決戦へ
野尻智紀(C) JRP

国内最高峰フォーミュラレースシリーズ、スーパーフォーミュラはいよいよ最終局面へ。鈴鹿サーキットで28日に第8戦、29日に最終戦が連続で行われ2023年シーズンの長い戦いは終了する。チャンピオンは第7戦終了時点で94ポイントの宮田莉朋(トムス)、86ポイントのリアム・ローソン(無限)、84ポイントの野尻智紀(無限)の3人の誰かが獲得することが有力視されていた。その中の宮田と野尻が初日の第8戦でフロントローに並んだことは、非常に興味深いことだった。

◆第7戦 “蘇った王者の力” 野尻智紀がポール・トゥ・ウィン「今季最高じゃないですか?」

■対照的なストーリーの両者

2人のここまでの戦いぶりは、宮田がレースで際立った強さを見せ、2勝した以外も高得点を重ねてきたのに対し、野尻は富士スピードウェイでの開幕2連戦をダブルポール&優勝、2位とスタートダッシュを決めながら第3戦はリタイア、第4戦は病気欠場と急失速。一時は宮田とローソンに大量リードを許したが、後半に入り第5戦で2位、さらに直前の第7戦で2度目のポール・トゥ・ウィンを決め戦線に復帰した。そんな対照的なストーリーの2人が最終決戦の初日、フロントローに並んだのだ。

第8戦前日の金曜日にフリー走行が行われた。ここで早くも野尻、宮田は僅差のワンツー。2人に迫ろうとライバルたちが改善を図ってきた予選でも、その強さは揺るがなかった。ポールを決めるQ2は途中赤旗中断により再開後1周のみのアタックチャンスしかない、難しいセッションだったにもかかわらずだ。

だからこそ余計に、この戦いがレースでどう決着するか興味が深まった。ポールにより3ポイントを獲得した野尻は7位に終わったローソンを予選の時点で逆転し、ランキング2位に浮上。決勝もワンツーのまま終われば、野尻と宮田の差は4ポイントに縮まり、さらに最終戦も同様の結果であれば野尻が逆転タイトルを手にする。だが今季は決勝に関しては、宮田の方が強い印象がある。決勝スタートを前に、様々な展開を頭に描いた。

■130Rで起こった大クラッシュ

その決勝は、スタートで宮田が出遅れ1ポジション後退も、翌周には2位に復帰し、早くも一騎打ちの様相となった。このままでもランキングトップは守れるが、宮田は優勝を狙うだろう。ここからオーバーテイクを仕掛けていくのか、それともピットインでアンダーカットを狙うのか、今回は31周と短いレースゆえクライマックスは近かった。

その瞬間に起こったのがバトルポイントであるハイスピードコーナー、130Rでの大クラッシュ。大津弘樹(ナカジマ)と笹原右京(トムス)が接触し、笹原のマシンは大破。笹原を乗せたモノコックはスポンジバリアからさらに、その外側のガードフェンスにも衝突した。

幸い選手は無事だったが、タイヤバリアはその場で修復可能もガードフェンスの修復は時間を要することから、レースは3周終了時点で赤旗終了。結果は野尻の優勝、2位が宮田、ローソンは6位。予定周回の75%を消化していないためポイントは通常の半分が与えられることになり、第8戦終了時点でランキングトップの宮田が103.5ポイント、2位の野尻が97ポイント、ローソンが88.5ポイント。宮田と野尻の一騎打ちの要素はより強まり、明日の最終戦を迎えることになった。

もし、あのままレースが継続していたらどうなったのか――記者会見ではクラッシュした選手の安否やレースの安全性についての話題が第一となったが、やはりそこは気になるところ。二人の言葉は少なかったが、どちらも優勝は簡単ではないと感じていたようだ。二人のバトルは改めて明日、仕切り直しとなる。「望んでいた終わり方ではなかったが、点差は詰められた。これで明日はエキサイティングな戦いになるだろう」。野尻が最後にそう語った。今季の戦いは明日が最後。事故が起きることなく、フィナーレにふさわしいエキサイティングな戦いを31周後のチェッカーまで見せてほしい。

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◆初クラッシュ&初“決勝ゼロポイント”のローソン「野尻さんは僕に対してスペースを残したと思う」

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。