6日から、沖縄県の琉球ゴルフ倶楽部で、日本女子プロゴルフツアー開幕戦ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントが開催される。
注目は稲見萌寧。昨季は、23年のTOTOジャパンクラシックを制したことで得た米ツアーシード権を行使し、米ツアーに挑戦。しかし、ポイントランキングが104位でシード権獲得ならず、日本復帰となった。
稲見は元々、目標としていたのは永久シード権獲得となる、日本ツアー30勝。
現時点で13勝。あと17勝と考えると遠く感じるが、本人も話しているようにまずは1勝だ。
昨季、米ツアーを主戦場にしたことで、今季のポイントランキングによるシード権はない稲見。東京五輪銀メダルで得た5年シードを行使し、気持ち新たに25年シーズンを迎える。
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■今季のポイントは体調面か
持ち球がフェードの稲見は昨季、ドローボール習得に挑戦。しかし、試行錯誤を続けたものの、納得できる精度を得ることができなかった。さらに、スイングを変えたことがパットのストロークにも悪い方に影響し、ゴルフ全体を崩した。
このような技術的な問題も、昨季の米ツアーでの苦戦の理由として挙げられるが、体調面の問題もある。
6月の全米女子プロを途中棄権し、その次の出場が9月の日本女子プロとなるなど、体調不良に苦しんだ。結果、出場試合数は米ツアー18試合、日本ツアー5試合、計23試合にとどまった。
米ツアー挑戦前は腰痛に悩まされてきたことをふまえても、今季日本ツアーで存在感を示すには、より多くの試合に大きな体調面の問題を抱えずに出場し続けることが求められるだろう。
■出場した3大会すべてでトップ10
ダイキンオーキッドレディスには過去3回出場。21年大会が7位タイ、22年大会が10位タイ、23年大会が2位タイと、3回すべてでトップ10入りしており、大会との相性の良さを感じさせている。
稲見といえばショットメーカー。19年と20-21年シーズンでパーオン率1位に輝いた。19年のパーオン率は78.2079%。昨季パーオン率1位で8勝と圧倒的な強さを見せた竹田麗央が77.2515%であることからも、稲見の記録が驚異的であることがわかる。
21年と22年大会ではその持ち前のショット力を発揮。パーオン率は21年大会が6位タイ、22年大会が4位だった。
23年大会はパーオン率が38位タイと、ショットは精彩を欠いたようだが、パット数が4位。ショットの不調をショートゲームでカバーして優勝争いに加わった。
琉球GCでは、ティートゥグリーンもグリーン上も苦手意識なく戦えるのではないだろうか。
■歴代賞金女王ではあるが
稲見は20-21年シーズンの賞金女王だが、メルセデスランキング(以下MR)では2位だった。MR1位は古江彩佳。
現在はMRのみが選手評価として採用されており、年間女王やシード権はMRによって決められる。しかし、20-21年シーズンは、賞金ランキングとMR両方のランキングを使って選手評価をし、シード権を決めていた。その中で、賞金ランキングの方が優位性があったため、20-21の女王という称号の獲得者は稲見萌寧となった。
ただ、19年までは賞金ランキングのみ、20-21年が賞金ランキングとMRの両方、22年以降がMRのみ、となったことで稲見の20-21年シーズン“女王”に疑問符がつき「真の女王は古江なのではないか」という意見も聞かれた。
稲見は自身のことを、黄金世代(畑岡奈紗や渋野日向子など)とプラチナ世代(西村優菜や吉田優利など)の間にはさまれた“はざま世代”と言うが、制度が移り変わる“はざま”によって自身の評価にモヤがかかってしまったという見方ができる。
メルセデスランキング1位になり年間女王になることで、そのモヤは晴れるかもしれない。
ダイキンオーキッドレディスには今季から米ツアーに主戦場を移し、ホンダLPGAタイランドで最終日11アンダーを叩き出すなどして優勝を争い2位に入った岩井明愛が、妹の千怜とともに出場する。
岩井姉妹と同じく今季から米ツアーを主戦場にする竹田や22、23年、2年連続年間女王の山下美夢有は出場しないが、手強い相手が揃っている。
実力者だけでなく、次世代の日本女子ゴルフ界の顔になり得る力を持った若手の前にも立ちはだからなければならない。稲見が好相性の大会で健在を印象付けられるか注目だ。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。