すべてのスポーツは「競い合う」という宿命を負っている。しかし、それがトップレベルになればなるほど、戦いの後には宿敵同士が互いの健闘を褒め称える。そんなシーンを目にしたことがあるだろう。
好敵手、ライバルあっての自分、いろいろな言い方があるが、どんな戦いも相手があるからこそ戦える。その「当たり前」すぎる真実が、とても有難いことなのだと我々に気がつかせてくれるのもまた、スポーツ・エンターテイメントの重要な役割のひとつなのかもしれない。
日本発世界初のプロフェッショナル・ダンスリーグであるDリーグは、1月10日の開幕からレギュラーシーズンの全12試合を終え、7月1日に、9チームの中から勝ち進んだトップ4チームによる頂上決戦となるチャンピオンシップが開催された。この最終王座決定戦に惜しくも勝ち進めなかった5チームも含め、開幕から2週間隔で12種のナンバーを踊り分け、この前人未到の超過酷なスケジュールを戦ってきた全チームの全ダンサーの偉業を、まずは敬意をこめて心から称えたい。
■チャンピオンシップは、4チームによる”過酷”なトーナメント
この日、チャンピオンシップで戦ったのは、レギュラーシーズンのトータルランキング順に、FULLCAST RAISERZ、avex ROYALBRATS、SEGA SAMMY LUX、KOSE 8ROCKSの上位4チーム。いずれも甲乙つけがたく、しっかりとした個性とスキル、そして迫力や雰囲気を押し出すことに長けた面々だ。
チャンピオンシップは、ジャッジによる得点で順位を決めてきたレギュラーシーズンとは違い、トーナメント制がとられ、準決勝の2試合で勝ち進んだ2チームが決勝戦に臨み、負けた2チームで3位決定戦が行われるというルールとなる。つまり、各チーム同日で2度対戦するわけだが、ここで特筆すべきは、その2試合の演目を「別のナンバー」で戦わなくてはいけないという、これまでの過酷さにさらなる“過酷”を上塗りしたような厳しいルールであろう。
【動画】チャンピオンシップでのavex ROYALBRATSによる圧巻のパフォーマンス
それがどのくらいの過酷さか、少し想像力を働かせてみてほしい。レギュラーシーズン最終の“ラウンド12”が行われたのは6月21日、即ち、7月1日までのわずか9日間で頂上決戦に挑む2作品を踊りきる準備をしなくてはならないのだ。
二週間隔で12種のナンバーをこなすレギュラーシーズンが、全ダンス・コンペティション史上前代未聞、容赦無しのハード・スケジュールだということは、これまでも何度も触れてきたが、9日間で2ナンバーは、いくらプロでも厳しさの度が超えている。もしも、自分がそこに身を置くダンサーだったとしたら・・・・・・と、数秒考えただけで、末席ダンサーの筆者などは居たたまれなくなり足がすくんでしまう。
だが、さすがにDリーグで半年鍛え上げられたプロ・ダンサーは違っていた。全員が怯みや迷いをいっさい見せない踊りで、これまで以上の圧倒的な熱量と共に、この日、8種の素晴らしいナンバーが披露されたのだ。
開幕時に比べて、メンタルの強さが数倍アップしていると感じさせる各チームの演技は、風圧を伴い、嵐を生みだした。それは、ゲストジャッジの秋元康氏も言っていたように、演技を見たと言うよりは、「目撃した」という表現のほうがぴったりと来る、ドラマ性に富んだものだった。