東京五輪で金メダルに最も近い競技と言われているのが、24日から武蔵野の森総合スポーツプラザで開催されるバドミントン。男子シングルスの世界ランク1位、桃田賢斗や、女子ダブルスの同1位、福島由紀・廣田彩花ペアなど、バドミントン日本代表は、世界のトップランカーが顔を揃えた、まさに最強の布陣。ここでは、バドミントンの見どころ、日本代表について紹介していきたい。
◆“ソノカム”園田・嘉村ペア、知られざるダブルス結成秘話“風呂場での誓い”。日本バドミントン男子初メダルへの道程
■かつては低迷も、今や日本の新たな“お家芸”に
バドミントンが五輪の正式種目になったのは、92年のバルセロナ大会から(混合ダブルスは96年アトランタ大会から)。男女シングルス・男女ダブルス・混合ダブルスの5種目が行われ、BWF(世界バドミントン連盟)が定める五輪ランキングに基づき、男女86名ずつ、計172名の選手が出場する。
試合は、各種目とも2ゲーム先取制の3ゲームマッチで、1ゲームで21点を先取したほうが勝利。20点以上で並んだ場合、2点差がつくか、30点を先取した方がそのゲームの勝者となる。
シングルスは、1組3~4人ずつ14組のグループに分かれて、総当たりの1次リーグが行われ、各グループで1位になった選手が決勝トーナメントに進出。ダブルスでは4ペアずつ、4組のグループに分かれて1次リーグが行われ、各組上位2ペアが決勝トーナメントに進出し、それぞれ優勝を争う。
これまでの五輪では、中国が圧倒的な成績を残しており、金18・銀8・銅15と、計41個のメダルを獲得。次いでインドネシア、韓国(ともに計19個)と、東アジア勢が強さを発揮していたが、日本は男女とも入賞すらままならず、後れを取ってきた。
風穴を開けたのが、08年の北京。通称“スエマエ”と呼ばれた、末綱聡子・前田美順ペアが、04年アテネ金のヤン・ウェイ、チャン・ジーウェンペアを破って、史上初のベスト4進出を達成。同大会には“オグシオ”の愛称で親しまれた小椋久美子・潮田玲子ペアも5位に入賞し、バドミントン人気に火が付いた。
12年ロンドンで、藤井瑞希・垣岩令佳ペアが、日本人として初のメダル獲得となる銀に輝くと、16年リオでは、高橋礼華・松友美佐紀ペアが、悲願の金メダルを達成。女子シングルスでは奥原希望が銅メダルを獲得と、日本のバドミントンは着実に強くなってきており、今回の東京でも華々しい活躍が期待できる。
■金メダルに最も近い絶対的エース、桃田賢斗
これまでの五輪で、男子はメダル争いにすら加われなかったが、ようやくそのチャンスが訪れようとしている。男子シングルスは世界ランク1位の桃田賢斗と、同13位の常山幹太が出場。なかでもエース・桃田にかかる期待は大きい。桃田は当時世界ランク2位だった16年リオでもメダル獲得を期待されたが、違法賭博問題で出場することができず無期限の出場停止に。復帰後は18、19年と世界選手権を連覇、19年には国際大会で史上最多の年間11勝をマークするなど、日本人初の世界ランク1位に上り詰め、現在敵なしという状況だ。
昨年は海外遠征中に交通事故で大けがに見舞われ、今年は新型コロナウイルスに感染するなど、アクシデントにも見舞われた。しかし、謹慎処分中は筋力トレーニングに取り組み、フィジカル面を強化。持ち前のフットワークに磨きがかかり、元来から持ち合わせていた針の穴を通すような正確無比のシャフトコントロールと、技術面、体力面ともにさらなるレベルアップに成功し、盤石の地位を築いた。
第1シードで1次リーグA組に入った桃田は、初顔合わせとなる世界ランク88位のティモシー・ラム(米国)、過去3戦全勝の同38位ホ・クァンヒ(韓国)との対戦が決定。順当に決勝トーナメントへ進めば、準決勝で同2位ビクター・アクセルセン(デンマーク)や、同11位シー・ユーチー(中国)との対戦が予想され、メダル獲得への関門となりそう。だが、この5年間、さまざまな困難を乗り越え、精神的にも強くなった今、積み重ねた努力を確固たる自信に変え、世界のライバルたちの挑戦を跳ねのけてくれるはずだ。