■ニューヨーカーに語り継がれる「奇跡のホームラン」
この試合、メッツは4回に新庄剛志の犠牲フライでもぎ取った1点のみ。2対1とブレーブスにリードを許していた。だが8回裏、ロサンゼルス・ドジャーズ時代に野茂英雄の女房役として日本でも人気だったマイク・ピアッツァが起死回生の逆転2ラン。スタジアムは総立ちの喝采に包まれた。これによりメッツはテロ後、ニューヨークで開催された初めての試合で勝利を掴み取った。この一本はいまでも、ニューヨーカーにとって「奇跡のホームラン」として語り継がれている。この時、メッツの監督はボビー・バレンタイン。なにかと日本にも縁がある一戦だった。
◆【実際の動画】傷ついたニューヨーカーを奮い立たせた「奇跡のホームラン」今も語り継がれる“感動”の一発!

9・11後のニューヨーク初試合で「奇跡のホームラン」を放ったマイク・ピアッツァ(C)Getty Images
■人々を鼓舞するように快進撃を見せたヤンキース
日本の野球ファンにとって2001年の記憶と言えば、イチローのメジャー・デビューだろう。イチローは新人王、首位打者、盗塁王、ゴールデングラブ賞、シーズンMVPと大車輪の活躍。シアトル・マリナーズはレギュラー・シーズンで当時の年間最多記録となる116勝を果たし、ワールドシリーズ(WS)制覇最右翼に挙げられていた。
だが、そのマリナーズに待ったをかけたのが、ヤンキースだった。ブロンクス・ボンバーズは95勝で地区優勝すると、傷ついたニューヨーカーを鼓舞するかのようにポスト・シーズンで快進撃。特にアメリカン・リーグ・チャンピオンシップでは、最強マリナーズを4勝1敗でうっちゃり、WS進出を果たした。
WSでヤンキースはカート・シリング、ランディ・ジョンソンと2人の絶対エースを擁するアリゾナ・ダイヤモンドバックスと相まみえた。お互い全試合ホーム・チームが勝利する「内弁慶」シリーズは、第7戦までもつれ込みヤンキースは9回に逆転サヨナラ負け。4連覇を逃すが、シリーズは「死闘」として現在も語り継がれている。7戦中実に3戦が「サヨナラ」試合、ファンに9・11の悲しみを忘れさせるような野球の魅力が詰まった戦いだった。
当時のコミッショナー、バド・セリグは「野球には人々を鼓舞する力がある」と称賛したものだ。もちろん「野球」を「スポーツ」に置き換えられてもおかしくない。
■「今スポーツに何ができるのか」を考える
先日、東京オリンピック・パラリンピックが閉幕。開催については賛否あるところ。東京五輪招致に携わった者としても正直、何が正解だったのか「わからない」としか応えようがない。
「大会開催に感謝します」とアスリートが口にすれば、「アスリートのエゴではないか」という非難が聞こえて来る。「この状況でスポーツどころではない」と口にする人々がいる。
東日本大震災発生時、アイスリンク仙台で被災した羽生結弦が「スケートなんかしている場合か」と苦悩したエピソードは有名だ。しかし、それでも今日に至るまで羽生の大活躍に励まされる人々も多い。また当時・楽天イーグルスの嶋基宏による「見せましょう、野球の底力を」というスピーチに奮い立たされた被災者もあったことだろう。
スポーツの力で、新型コロナウイルスを撲滅することはできない。しかし、人は「衣食住」のみにて生きるにあらず。コロナ禍においても世界各地でスポーツイベントが開催されている。そして日本人が日々、大谷翔平の活躍に一喜一憂するのは、そこに「raison d’être」あればこそだ。
米同時多発テロからちょうど20年が経ち、事件に打ちひしがれたひとりとして、スポーツがニューヨーカーに与えた「希望」を今一度思い起こす。そして、スポーツのサポーティング・キャストとという立場から「今スポーツに何ができるのか」、こんな時期だからこそ思い巡らしたい。










