【スーパーGT】最終周回の悲劇再び “最高のレース”を見せたインパルに待っていた衝撃的な結末

写真は2014年の10月5日、SUPER GT第7戦から (C)Getty Images

最終周回の最終コーナーでトップを走っていたクルマがガス欠になり、その結果チャンピオンを逃すという、まるでドラマのようなシーンが展開された去年の最終戦を多くのファンが記憶していることだろう。スーパーGTでは実は、一度だけではない。過去に何度か、こういう出来事が起きている。今回の第7戦も衝撃的な結末が待っていた。

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■勝負強さが光った松下信治

シーズンセミファイナルとなる第7戦は、獲得ポイントに応じ課せられていた“サクセスウェイト”が半減されることで、ランキング上位のチームにとっては、ここでどれだけポイントを積み重ねることができるかどうか、タイトルのカギを握るともいえる一戦。その中で優勝を争ったのが、インパルGT-R平峰一貴松下信治)とARTA NSX野尻智紀福住仁嶺)の、直近2戦で優勝しタイトル候補に名乗りを上げた2チームだった。

筆者が今季のベストパフォーマンス賞はこのドライバーで決まりだと思っているのがインパルの松下で、ヨーロッパ仕込みのバトルの強さを今季は特にスーパーフォーミュラで発揮。第3戦ではヘビーウェット路面のレースでスタート直後に上位が混乱した中、巧みにすり抜けて13位から3位までジャンプアップ。第4戦でも13位から4位へ、第6戦でも同じようなシーンが繰り返された。混乱の中でのポジショニングが誰よりも上手い上、勝負勘も非常に優れたドライバーだ。

もてぎはオーバーテイクが難しいサーキットとして知られている。したがってオープニングラップは順位を上げる数少ないチャンスであり、1コーナーに向かって数台が入り乱れ、引き続き2コーナー、3コーナーと各ポジションで激しく競り合う展開は必至。今回も予想通り、その場面で2位から中団までが熾烈な争いとなった。そこで2位に躍り出ることに成功し、先行するポールのウェッズスポーツGR Supra(国本雄資)を追っていったのが松下。そして20周目にバトルに持ち込むと、翌周トップを奪った。スーパーGTでも松下の勝負強さは光っていた。

■ギリギリの攻防となった緊迫の13周

そしてピットイン後もトップで折り返したインパルGT-Rを、そこからジリジリ追い上げていったのがARTA NSXの野尻だった。30周目に3秒あったギャップは40周目に2秒に縮まり、50周目には1秒差内に。レースは完全に2台のマッチレースとなり、ここからチェッカーまでの間、抜けないもてぎで手に汗握る接近戦が展開される。ペースは野尻の方が上で、インパルの後半を担った平峰はわずかなミスも許されないという、緊迫の13周だった。

だが平峰は全くミスすることなく、トップを守ったまま最終周回までたどり着いた。ここまでくればさすがに大丈夫だろうと思ったのは、筆者だけではなかったはずだ。その瞬間、3コーナーをクリアしたところでインパルGT-Rは失速してしまった。原因は去年の最終戦と同じくガス欠。ガス欠は燃料をうまくセーブできなかったドライバーのミスということになるのだろうが、このシーンを見る限り、燃費を優先させて2位を確保するか、最後まで燃料が持つことに望みをかけて緩めずトップを守り続けるか、そこはまさにギリギリの攻防。インパルは、敗れはしたものの最高のレースを見せてくれたと思う。

チャンピオン争いはこれで6チーム、12人のドライバーによって最終戦で決着がつけられることになった。舞台はシリーズ中最もオーバーテイクがしやすい富士スピードウェイで、全車サクセスウエイトはなし。今回のような最高のレースが見られるものと期待して間違いないだろう。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター
2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。


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