【スーパーGT】♯36トムスGR Supra、大逆転でタイトル獲得 最終戦で2年越しの伏線回収

写真は2014年の10月5日、SUPER GT第7戦から (C)Getty Images

前回のコラムで、チャンピオン確定のチェッカー直前で♯37トムスGR Supraがまさかのガス欠に遭い逆転でチャンピオンを逃した昨季最終戦のことに触れた。こんなことは滅多にないと思っていたところに、今季第7戦が同じようなドラマティックな展開だったとレポートしたが、続く最終戦も、まるで筋書きでもあったかのようなドラマティックな幕切れとなった。しかもそれは、昨季最終戦の流れを汲む壮大なドラマだった。

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■ギリギリの戦いだからこその“筋書きのないドラマ”

タイトル決定が最後までもつれ込むのは、そのためにウエイトハンデ制があるわけで当然といえば当然だ。だが、その先のドラマは主催者の筋書きにはない。ハコ車のレースで世界一レベルが高いといわれるスーパーGTでは、トップチームとトップドライバーが常に限界ギリギリの戦いをしている。それゆえ起こることなのだ。

トヨタ、ホンダ、ニッサンの3メーカー15台が対決するGT500クラスの今季開幕戦からの流れは、トヨタ優勢で始まり、徐々にホンダの勢力が強くなるというもの。最終戦をランキングトップで迎えたのは、その昨季最終戦のドラマで逆転覇者となったチームクニミツNSX(山本尚貴/牧野任祐)。2位は同じホンダ勢のARTA NSX(野尻智紀/福住仁嶺)、3位もホンダ勢でレアルレーシングNSX(塚越広大/ベルトラン・バゲット)♯36トムスGR Supra(関口雄飛/坪井翔)インパルGTR(平峰一貴/松下信治)ルーキーレーシングGR Supra(大嶋和也/山下健太)も権利は残していたものの、現実的にはホンダ3台の争いになると思っていた。

予選で速さを見せたのは富士スピードウェイをお膝元とするトヨタ勢で、ポールはルーキーレーシング。3位から5位もトヨタ勢で、このレースに関してはトヨタの有利が見えていた。そんな中、ホンダ勢で唯一気を吐いたのが2位のチームクニミツ。最終戦は全マシンがノーハンデということで序盤戦の速さが戻り、トヨタ勢上位と同レベルにあった。こうなればチームクニミツは俄然有利。路面温度が低く、確かにタイヤの面などで難しいレースが予想されるとはいえ、5位まで後退が許される上に6位以下にいるホンダ勢にさえ抜かれなければ良いという条件は、予選での速さを見る限りそう難しくはない。

■大逆転タイトルで2年越しの伏線回収

レースがスタートすると、チームクニミツは間もなく4位に後退し、ルーキーレーシング、♯36トムス、♯37トムス(平川亮/サッシャ・フェネストラズ)の順でトヨタ勢が激しく優勝を争うことになった。そして、トヨタ勢で最もランキングが上の♯36トムスがトップに躍り出る。優勝すればチームクニミツを3ポイント上回ることになるが、それはチームクニミツがノーポイントに終わった場合のこと。チームクニミツの後ろにはランキング2位のARTAがいたが、たとえ抜かれてもこの位置であれば獲得ポイント差は小さく、そうハラハラする展開ではなかった。

そんな中、ドラマは急展開。レースが終盤に差し掛かり、残り12周となったときだった。チームクニミツがここでなんと、GT300クラスのマシンと接触。スーパーGTでは、敵はライバルだけではない。GT300クラスと同時にレースを行い頻繁に交錯するため、こうしたアクシデントが常につきまとう。そのGT300クラスのクルマも優勝が懸かったバトル中で、ドライバーは今季が初参戦の若手というトラブルが発生しやすい状況でもあった。チームクニミツのクルマのダメージは大きく、修復のためにピットインを余儀なくされ、ここでノーポイントが確定的になった。

そのとき♯36トムスはすでに2位に3秒以上の差をつけており、そのまま独走でチェッカーを受け大逆転タイトルを手にした。トムスにしてみれば車両は異なるものの、昨季のリベンジを直接の相手に対し果たしたことになる。毎年見ているファンには、昨季最終戦は今シーズンの伏線で、2年越しで伏線回収がなされた筋書きにも思えたことだろう。いや、まだこれも伏線の途中で、ドラマはさらに来季も続くのかもしれないと期待する贅沢なファンもいるのかも。筆者もそのひとりだ。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター
2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。


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