【スーパーフォーミュラ】第4戦を制し2勝の平川亮とランキング首位を堅守する野尻智紀のチャンピオン争いを左右するもの

 

【スーパーフォーミュラ】第4戦を制し2勝の平川亮とランキング首位を堅守する野尻智紀のチャンピオン争いを左右するもの
2勝目を挙げた平川(左)とインパルの星野一義監督(右)(C)JRP

本州以外の唯一の舞台、九州のオートポリスで行われたスーパーフォーミュラ第4戦は、土曜日と日曜日の気温差が大きかったことから、タイヤマネージメントがカギになると思われた。

トップチーム、トップドライバーが2種類のエンジン以外はワンメイクのマシンで争うスーパーフォーミュラはそもそも、ラップタイムにあまり差がない。加えて今回のレース距離は200kmということで、タイヤ2セットのライフは十分。

つまり戦略幅は広く、ドライバーが勝負所をどう見据えプッシュするのか、チームがピットインタイミングを含めた戦略をどう組み、状況をどう判断するのか、些細な違いが勝負を決めることになる。去年は大雨で途中赤旗終了になっているだけに、九州のファンも期待していたに違いない。

◆【実際の動画】平川亮を「優勝しました、強い!」と喜びが爆発させ、称える星野監督

■勝負の分かれ目は

その点で、今回のチームインパルと平川亮は完璧だった。

平川は今季、予選がうまく行っておらず、優勝した開幕戦こそ3番手もその後は8位、12位。今回も8番手からレースを迎えることになった。だがレースでの強さは健在で、今回もまずオープニングラップで一気に3位まで浮上。何かアクシデントが起きたわけではない。スタート後の1コーナー先ではまだ6番手だった。その後も決して危険な接近戦を仕掛けていったわけではなく混乱をただ、次々とすり抜けていった。これがここ2年、常に上位で戦ってきたことで培われたポジショニングの巧さと勘の良さだ。

タイヤだけでなくオーバーテイクシステムの使い方も今回、平川は巧かった。オープニングラップで3位に浮上した後にセーフティカーが出たことで2位の牧野任祐(ダンディライアン)に接近すると、そこから牧野がトップの野尻智紀(チーム無限)に対しオーバーテイクシステムを使い攻めている間には使わず、牧野が使えなくなったタイミングで発動させ、2位に浮上する。

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これで残るはトップの野尻のみとなり、5周目にまたセーフティカーが入り10周目のリスタート後は一騎打ちに。ピットストップ・ウィンドウが開いたことで、ピット戦略を各陣営は仕掛けてきた。16周目に先に野尻が入ったのはおそらく、先に入った後にペースを上げていた3位牧野の逆転を阻止するため。これが野尻にとっては仇となった。

■ポイントの面白さ

平川は野尻と同時には動かず、そこから猛プッシュした後に21周目にピットイン。やや作業に手間取ったが、なんとか野尻の前でコースに復帰すると、後は5周分タイヤが有利であることを活かし徐々に引き離していった。一方、トップを守るために早めにピットインした野尻は終盤ペースを落とし、最終的に4位。予選で圧倒的速さを見せ3戦連続ポールを奪った野尻は、レースでも大きなミスはなかった。だがそれでも逆転されてしまうという、スーパーフォーミュラのレベルの高さが凝縮されたレースだったと思う。

これで今季は平川が2勝で野尻が1勝。ところがランキングを見ると、まだ7ポイントで野尻がリードしている。これもスーパーフォーミュラの興味深い点で、野尻はここまで4戦中3回ポールを獲得しており、予選ポイントが9ポイント加算されている。平川の予選ポイントは1点のみということで、こうした結果になっている。

今回の予選を見ていると、調子が良くポールが狙えた数人のドライバーが攻めすぎて細かいミスをしていたのに対し、野尻の集中力の高さは抜きんでていた。レースで全てが決まるわけではなく予選の重要度も高いスーパーフォーミュラだからこそ、この差は大きい。残り6戦のうち、今季一度ずつポールを獲っている富士と鈴鹿が3戦あることで、予選ポイントに関しては今後も野尻は有利だと考えられる。先行の野尻か、まくりの平川か、両極端のキャラクターの2人によるタイトルを争いは、レースに詳しくない人にとっても面白いのではないだろうか。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター
2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。