【スーパーフォーミュラ】第8戦 平川亮とチームインパルが魅せたレースの醍醐味、勝負のラスト7周

怒涛の追い上げでレースの醍醐味を魅せたチームインパル平川亮 (C) JRP

現在ランキングトップにいる野尻智紀(チーム無限)の対抗馬として、後半戦での追い上げがもっとも期待されていたのは前半戦で2勝を挙げている平川亮チームインパル)だった。だが第6戦、第7戦を痛恨のノーポイントとし、その役目はサッシャ・フェネストラズ(コンドーレーシング)へ。その平川が全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦で、久々に輝きを見せた。

前日に行われた第7戦はヘビーウェットのレースで、しかも翌日に第8戦が控えていることから、各ドライバーの“攻め”の部分はややセーブ気味だったと思われた。そして一夜明け、この日は朝から晴天。そうなると勢力図も異なり、ドライゆえスピードもバトルの激しさも増す。前日とはまるで違ったレースが期待された。観る側にとって今回の2連戦には、そんなプラスアルファの価値があった。

【実際の映像】レース終盤、怒涛の追い上げを見せる平川亮に実況も興奮

グリッドは、ポールの大湯都史樹(ナカジマレーシング)からフェネストラズ、野尻、山下健太(コンドーレーシング)という並び。だが第7戦と違い、その中の誰も表彰台を獲得することはできなかった。

■「チーム・オーダーなし」のバトル

スタートでフェネストラズが出遅れ、野尻が2位に上がった以外、上位順位は序盤変動しなかった。展開を変えたのは、昨日なかったピットインだ。もてぎはレイアウト的にオーバーテイクが難しく、ペースで勝っていたとしてもなかなかスムーズに抜くことはできない。この状況を打開するひとつの戦略が、タイヤ交換のために必ず一度行わなければならないピットインだ。

その義務が遂行できるミニマム周回の10周目にまず、5位を走っていた関口雄飛(チームインパル)他2台がピットインし、翌周に7位を走っていた牧野任祐(ダンディライアン)がピットイン。そして、この2台はそこからトップ集団よりも1秒以上速いペースで、数周のうちにトップ逆転の可能性があるマージンを築く。これを察知した上位は15周目にピットインするが、間に合わなかった。

ここから中盤はトップの関口と2位牧野がレースをリード。だがまだ、これで先が読めたわけではない。今度はピットインを引っ張って、燃料の軽くなった終盤にフレッシュタイヤのパフォーマンスを駆使し逆転を狙う数台との戦いが待っている。その中のトップが、平川だった。タイトル争いで崖っぷちに立つ平川は6番グリッドからスタートで得意のジャンプアップを決めに行ったが1つしか順位を上げられず、次に考えたのがこのピットイン戦略。30周目にピットインするまでペースを落とさないようタイヤをマネージメントし続けると、勝負の残り7周を迎えた。

ピット出口にいたのは3位の野尻。タイヤがまだ温まっていないためそこで前には出ることはできなかったが、32周目に野尻、34周目に牧野を抜き去った。あとは関口を仕留めれば大逆転優勝。残りは3周しかなかったが、2台を抜いたパフォーマンスを見る限り、ここがもてぎだということを差し引いても平川の方が完全に有利に見えた。関口は平川のチームメートでもある。

だがそこは、たとえチームメート同士でも“バトル上等”と常々口にする星野一義監督率いるチームインパル。関口も、一歩も引かない。「チーム・オーダー」により、どちらかのドライバーを優先するという考えはない。それが「星野イズム」だ。

この手に汗握る攻防が、このレースのクライマックスだった。そこから2周の間、必死に守り続けた関口はオーバーテイクシステムを最終周回前に使い切った。一方、平川はまだ残していた。そして、もてぎで唯一ともいえる抜きどころの90度コーナーで最後の戦いを挑み、アウト側から強引に捲りにいった平川だったが、惜しくも逆転優勝には届かなかった。

タイトル争いの方は、野尻が4位でフィニッシュしフェネストラズとの差を広げ残り2戦を迎えることになり、さらに有利な状況となった。平川のこの健闘も、そこには影響しなかった。今季は次の鈴鹿2連戦でフィナーレ。こうなると第9戦で野尻がタイトルを決める公算が高い。しかし、それでも最終戦の価値が変わることはない。そう思わせた第8戦だった。

◆第7戦 地元もてぎ初勝利、地元小学生424人を前に山本尚貴に吹いた風

◆第6戦、波乱のレースで笹原右京が初優勝 王者・野尻智紀の首位は揺るがず

◆第5戦、野尻智紀が4戦連続PPでランキング1位堅持  一発の速さが王者決定に影響する熾烈な予選を見よ

著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。


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