■スーパークラウンへ向け準備万端の織田夢海
◆日本のエース堀米雄斗が見せるスケートボードの魅力と今後の展望 織田夢海がストリートリーグ・スーパークラウンへ向けさらに加速 前編
予選を1位で通過した織田夢海はベストトリックでも他を圧倒する集中力を見せる。
前日の予選終了時から自身の持つ最高難度のトリック、キックフリップフロントサイドフィーブルグラインド(空中で板を縦に1回転させてから、トラックと呼ばれる車軸を斜めにレールに掛けて滑り降りる技)をやると宣言していたが、もちろんそれを1本メイクすれば優勝出来る訳ではなく、ベストトリックでは他に2本決める必要がある。
今回の優勝の裏にはランで7.1点の高得点を獲得した上に(クロエは6.6点、中山は5.3点、上村が5.5点)ベストトリックでも1本目と2本目を安定してきっちり決めていた事で心置きなく、キックフリップフロントサイドフィーブルグラインドに挑めたのも大きかっただろう。
優勝後のインタビューでは、次のストリートリーグ・スーパークラウンでも自分の滑りをし、キックフリップフィーブルをメイクしたいと話していたが、スケーターにとってはオリンピックと同じくらい価値の高い大会と言っても過言ではないストリートリーグ・スーパークラウン。スケートボードはスポーツではないという人でも、ストリートリーグは楽しみにしているスケートボードファンは多い。
そこにはストリートリーグには、コンテストだけでなく実際にストリートの最前線で活躍するスケーターが多数出場している事も関係する。世界中のスケーターが憧れるスケートボード最高峰のコンテストで、日本人スケーターの男女優勝はもう夢ではない。
■堀米が描く日本のスケートシーン
東京五輪での日本人スケーターの活躍は言わずもがなだが、一昔前では考えられなかったストリートリーグやX Gamesなどの国際大会でも日本人スケーターの活躍は止まるところを知らない。
しかし、日本国内でのスケートボードシーンはまだまだ一般の方からの理解などが追い付いていないイメージがある。
いわゆる、スポーツ選手権のような大会ではなくスケートボードが持っている本来の姿や、カルチャーが活かされたような大会やイベントが増えれば、一般の人のスケートボードへの理解や見方も変わってくるかもしれない。
困難だからこそ、危険だからこそ、技を決めた時は何倍も嬉しいし、何度も転んで立ち上がってきた姿が見えるからカッコいい。
だからスケーターは、1つの技の苦労や過程を知っているからこそ、自分越えをした者同士お互いをたたえ合う。
個人的にはスケートボードのカルチャーとはあえて一言で言えば、自由であることだと思っている。
ストリートで生まれ、元々は遊びの延長(どんなスポーツも元は遊びの延長かもしれないが)で服装だったり、音楽だったり、考え方が路上で育まれた文化だ。そういった文化が日本では定着しにくいのかもしれないが、今回のキメラAサイドのような国内での大会を日本人スケーター達が盛り上げてくれる事で、日本独自のスケート文化が良い方向に進んでいけばいいなと願っている。
優勝した堀米雄斗は、賞金の使い道を聞かれた際にこんな事を言っていた。「これから自分でもスケートボードを盛り上げるイベントなどをやって行こうと思っているので、そこに(賞金を)使えたらいいなと思います」。これは先日、堀米雄斗が独自に展開するプロジェクトYST(イスト)が発表された事と繋がる。
YSTホームページ(現在は削除されるが)によると「日本のスケートボードをメジャーへ押し上げるため、世界の第一線で活動する堀米雄斗がそのリソースを次世代へ繋ぐことを目標としています。今後もイベント、教育、スケーター活動支援など、多方面における展開を予定」と記載されていた。
今後も様々な団体が一致団結する事で、日本のスケートシーンがより良い方向へ進み、スケートボードが日本でもメジャーな“スポーツ”であり“遊び”になった姿を一度でいいから見てみたいと思っている。
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■著者プロフィール
小嶋勝美●スケートボードライター
放送作家で元芸人のスケーター。スケートボード歴は一応25年弱。