【Bリーグ】KBL経験者のシーホース三河・中村太地が持つ「困難にも負けず挑戦し続けるマインド」を紐解く

 

【Bリーグ】KBL経験者のシーホース三河・中村太地が持つ「困難にも負けず挑戦し続けるマインド」を紐解く
シーホース三河のPG中村太地 (C) SeaHorses MIKAWA co.,LTD.

今季からB1リーグ・シーホース三河でプレーする背番号1、ポイントガードの中村太地は2020年、韓国バスケットボールリーグ(KBL)原州DBプロミへ移籍、2シーズンプレーし、KBLで初めてプレーした日本出身選手となった。

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■憧れのKBL挑戦で味わった苦渋

中村は法政大学1年の時、三河にて特別指定選手としてプレー。2年時は富山グラウジーズ、3年時には横浜ビー・コルセアーズで特別指定選手としてコートに立った。そして、2019年に京都ハンナリーズに入団。その後、中村は海を渡った。

中村はKBLについて「とにかく激しく、展開が速く、トランジション(攻守の切り替え)が多い。韓国人選手のサイズの大きさは、日本にはない大陸の体」とその魅力と特徴を語る。日本人選手は韓国ではアジア枠、外国人としての扱いを受ける。そのため「理不尽なことも多いし、嫉妬されたり」と、苦労もあった。それでも挑み続けた2シーズン、徐々にKBLのスピードや体格に慣れ、自身のパフォーマンスを披露できるようになった。

KBLで培った中村太地の「激しいバスケ」 (C) SeaHorses MIKAWA co.,LTD. (C) SeaHorses MIKAWA co.,LTD.

実は「KBLでプレーしてみたい」と学生時代から思い描いていた。

「高校3年生の時にイ・サンボム監督に指導を受けたことがある。大学時代も毎年訪ねていた。どんな土地のチームなのかも知っていた。勝手にここでプレーするのだろうと思ってました。ゼロからのスタートというわけではなく、言葉の壁も大丈夫だろう」と、恩師がおり、挑戦しやすい国だった。しかし、いざ韓国での挑戦が始まると、「人間の小ささと、一人では何もできないと痛感させられた」という。

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もっとも苦労したのはコミュニケーション。渡航前にバスケ用語と自己紹介ができる程度には韓国語も勉強していた。だが簡単にコミュニティに入ることはできず、接し方や対応を苦慮する毎日。その中で揉まれながら、現在では専門用語がなければ日常会話は理解できるレベルにまで韓国語も上達し、帰国後も韓国ドラマをチェック。最近では『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』『ザ・グローリー』がおすすめだと教えてくれた。

■「海外へ出ないと井の中の蛙に」と危機感

その韓国での挑戦を経て、2019-20シーズン以来となるBリーグでのプレー。「エンタメ要素に振り切っていて、観客数も増えていて、リーグの盛り上がりを感じる。外国籍選手のレベルも上がっていて、ここで活躍することは簡単ではないと感じた。日本人選手ももっと(海外へ)出ていかないと井の中の蛙になってしまう。海外で得られる経験は大きい」とフィリピンや韓国出身の選手が増えているリーグの感触を語った。現在、中村に続きKBLの高陽キャロットジャンパーズには、東海大九州出身の森口弥が挑戦中だ。

KBLでの挑戦が中村太地を成長させた (C) SeaHorses MIKAWA co.,LTD.

中村は、自身の移籍を振り返り、「その時にしかできなかったこと。監督やエージェントとの縁や、タイミング、巡り合わせがあった。色々な方の協力があって今がある。すべてにおいて成長し、コートを支配できる選手になりたい」と感謝と抱負を語った。

■挑戦心溢れる中村「刺激が多いところに身を置きたい」

三河で戦う今季前半を振り返り、中村は「連敗をした時に下を向いてしまうことが多かった。戦えているが勝ちきれないというもどかしさを抱えていた。何かきっかけを掴むことができればいい。シーズン終盤へ向けてチームが一つになることが大事。開幕当初、(自身も)長く出場時間を与えてもらっていたにも関わらず、勝ち星に繋げられていなかった」と反省を口にした。

後半戦をにらみ「自分ができることにフォーカスし積み上げていきたい。常にポジティブなエナジーや姿勢をコート内外で見せられるように、自分を律する。シーズン終盤、いかに元気に走りきれるか」と気合いを入れるつもりだ。

その上で「もっともっと(Bリーグや三河を)盛り上げるために仕掛けていきたい。自分がとんねるずさんのYouTubeを見て笑いながら元気をもらうように、(SNSを)積極的に活用し一人一人のファンと向き合う」とファンへの接し方を明かした。

中村は最後に 「先日の滋賀戦では(ヒップホップグループ)nobodyknows+がライブを披露していて興奮した。知らないことだらけという世界に興味が沸く。刺激が多いところに身を置きたい。どこでもいいから機会があればまた海外にも挑戦したい」と締めくくった。試合でのプレーだけにとどまらず、中村の人柄やパフォーマンスが、今後より多くのファンを楽しませ心を掴むことだろう。

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■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)
●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。