【女子ゴルフ】“勝っていないのが不思議”な上田桃子 年々進化するパットを武器に国内メジャー初制覇へ 日本女子プロゴルフ選手権

 

【女子ゴルフ】“勝っていないのが不思議”な上田桃子 年々進化するパットを武器に国内メジャー初制覇へ 日本女子プロゴルフ選手権
女子ゴルフの上田桃子(C)Getty Images

女子国内メジャー、日本女子プロゴルフ選手権が7日、長崎県のパサージュ琴海アイランドゴルフクラブで開催される。賞金総額2億円の同大会昨年の覇者は当時19歳の川﨑春花。ツアー初優勝がメジャータイトルとなった。

今年も勢いに乗る若手が勝ち切る可能性はあるが、国内メジャー初制覇を狙う37歳上田桃子に流れがきている。

今季の上田は未勝利ながら抜群の安定感を誇り、平均ストロークが70.399の4位。平均ストロークがトップ10に入っているにも関わらず今季現時点(9月4日時点)未勝利なのは上田のみで‟勝っていないのが不思議”な状態となっている。

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■ニトリレディス中止決定時点で首位タイ

上田は先週のゴルフ5レディスは欠場。その前の週に開催されたニトリレディスでは優勝を争った。

首位と1打差の4位タイで迎えた最終ラウンドでは、前半スコアを伸ばし首位タイに浮上。しかし、そこで悪天候のため大会中止が決定し、第3ラウンド終了時点で首位タイに並んでいた3選手でプレーオフが行われることになり、上田の優勝は幻に終わった。

昨年4月の富士フィルム・スタジオアリス以来の優勝とはならなかったが、調子を上げてきているのは確か。ツアーを休んだ1週の間に、技術面も体調面も万全の準備をして長崎に乗り込んでくるだろう。

■パサージュ琴海アイランド 自身べストスコアタイ

日本女子プロゴルフ選手権の2015年大会会場がパサージュ琴海アイランドだった。ここで上田は優勝を争った。

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第3ラウンドを64でプレーし首位タイに浮上。しかし、最終日は振るわず、同じ最終組でプレーしたテレサ・ルーに優勝をさらわれ、2打差の2位タイで大会を終えた。

優勝とはならなかったが、第3ラウンドの64は上田にとって自己ベストタイのスコア。これまで日本ツアー410試合を戦ってきたが、64でプレーしたラウンドがある試合は5つしかない。コースに対するイメージは良いだろう。

また、日本ツアー16勝、米ツアー1勝(日本開催のミズノクラシック)の実績がありながら国内メジャー無冠の上田は、この時の悔しさを忘れていないはず。静かに闘志を燃やしているはずだ。

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■高水準の飛距離

上田の代名詞はドローボール。飛距離が出やすい種類の球筋で、賞金女王になった2007年頃すでに飛距離の出るドライバーショットを武器に、バーディを量産していた。

この頃はまだ日本ツアーではドライビングディスタンスを計測しておらず、記録や順位は不明だが、米ツアー挑戦元年の2008年、米ツアーのドライビングディスタンスは22位だった。世界各国からパワーヒッターが集まってくる米ツアーでこの順位は‟世界基準の飛距離”を意味する。

日本ツアーで圧倒的な飛距離を披露していた笹生優花は、2021年から主戦場にしている米ツアーでの同年のドライビングディスタンスが12位だった。2019年、全英女子OPを制し一躍時の人となった渋野日向子はこの年、日本ツアーのドライビングディスタンスは12位だったが、米ツアー挑戦元年の2022年、米ツアーのドライビングディスタンスは76位だった。

笹生と渋野のデータを参考にすると、上田の当時の飛距離の水準がとても高いことが分かる。

その飛距離は若手の頃より落としてはいるものの、今もなお高水準を誇り、ドライビングディスタンスは過去5シーズン20位前後を維持している。

2007、8年頃ほどのアドバンテージを得られるわけではない。だが、6,755ヤードという長い距離設定で行われる今回の日本女子プロゴルフ選手権でも、2015年大会第3ラウンドのようなビッグスコア(64)を叩き出せる飛距離をまだ有している。

上田桃子の過去5シーズンのドライビングディスタンス

上田桃子の過去5シーズンのドライビングディスタンス

■年々進化するパット

上田には、パットの精度向上にも目を見張るものがある。過去5シーズンで、平均パット数(パーオンホール)と平均パット数(1ラウンド当たり)が右肩上がりなのだ。

2018年、36位だった平均パット数(パーオンホール)は、今季現時点で5位。40位だった平均パット数(1ラウンド当たり)も、今季現時点で5位だ。

ただ、パットの良し悪しは、パット数だけで判断できない部分がある。パーオン率が高ければ、ファーストパットの距離が長くなりやすいため、平均パット数(1ラウンド当たり)の順位は下位になりやすい。逆にパーオン率が低ければ、平均パット数(1ラウンド当たり)の順位は上位になりやすい。

上田のパーオン率はこの5シーズンで大きな変動はない。ということは、順位通りにパットの精度が向上していると見て良いのではないだろうか。

パサージュ琴海アイランドのグリーンはアンジュレーションがきつい。難グリーンで、その高いパットの精度は生かされる。

好調。好成績(記録)を残したコース。高水準の飛距離に加えて進化を続けるパット。国内メジャータイトルへの渇望。上田に非願成就の瞬間がやってきそうだ。

上田桃子の過去5シーズン平均パット数・パーオン率

上田桃子の過去5シーズン平均パット数・パーオン率

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。