「再挑戦」「初挑戦」の明確な足がかりつかむか 石川遼、桂川有人、 蟬川泰果の今季振り返りと来季へ向けたポイント

 

「再挑戦」「初挑戦」の明確な足がかりつかむか 石川遼、桂川有人、 蟬川泰果の今季振り返りと来季へ向けたポイント
石川遼(C)Getty images

2023年シーズンは、賞金ランキングトップ3のNSK(中島啓太、蟬川泰果、金谷拓実)ら若手が躍動した。当時アマチュアだった大学4年生の杉浦悠太のダンロップフェニックス優勝からも感じるように、2024年シーズンも新たに若い選手が躍動しそうだ。

新たに出てくる選手の前に立ちはだかりそうなのが、NSKの内の1人である蟬川、2023年は優勝こそなかったものの終盤で上位に顔を出すことが増えた石川遼、そして、2023年は米下部ツアーのコーンフェリーツアーを主戦場にした桂川有人だ。

石川と桂川は、米ツアー再挑戦を目指すため結果にこだわる。蟬川も、主戦場を米ツアーに移せる日が近づくよう、2024年シーズンを戦う。

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■石川遼の今季振り返りと来季のポイント

石川は、開幕戦の東建ホームメイトカップでは3位タイ、4月の中日クラウンズでは4位に入るなど、シーズン序盤からまずまずの成績だったが、予選落ちを喫することもあり、不安定な戦いが続いた。

だが、優勝を争い2位に入った10月の日本オープンから一気に上昇気配を漂わせた。日本オープンの好成績により自力で出場権を獲得したZOZOチャンピオンシップでは、出場した日本人選手最上位になり、2週後の米ツアー、ワールドワイドテクノロージー選手権の出場権を獲得した。

ワールドワイドテクノロジー選手権では体調不良の影響もあり、不発に終わったものの、帰国後も石川らしいプレーを随所に披露。三井住友VISA太平洋マスターズでは9位タイに入り、日本シリーズJTカップでは7位フィッシュ。最終日は最終組でプレーし優勝を争った。

石川の課題はドライバーのショットの曲がりをいかに抑えられるか。その課題克服に向けた取り組みが良い方向に向かっているからこそ表れた、シーズン後半の好調ぶりだった。

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パーオン率が69.144%で10位と向上してきており、‟グリーンを狙えるところ”から2打目を打つ確率が上がってきていることを感じさせた。パーオン率は2022年が69.058%で22位、2020-21年が68.960%で15位、2019年が65.560%で33位タイ、2018年が65.040%で27位、だった。

2023年は、日本ツアーに主戦場を戻してから、順位を含め最もパーオン率が高い結果となった。

ただ、ティーショットが曲がる‟度合い”は抑えられたようだが、シーズンを通して見てみるとフェアウェイキープ率の向上とまでは行かなかった。53.385%で72位。2024年はこの数値にも明らかな向上を見せたい。そうなれば、いよいよ米ツアー再挑戦が現実味を帯びてくる。

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■桂川有人の今季振り返りと来季のポイント

2022年のISPS HANDA 欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント!2022で初優勝を飾り、この年賞金ランキング5位に入った。

そして、米ツアー出場権をかけた予選会に挑戦し、コーンフェリーツアーの限定的な出場権を獲得。2023年は同ツアーを主戦場とした。

コーンフェリーツアーでは16戦して予選通過が7回。最上位は7月のプライスカッターチャリティ選手権の13位タイで、次に成績が良かったのが2月のアスタラゴルフ選手権の19位タイ。25位以内に入ったのはこの2回だけだった。

米ツアー、それも下部ツアーの壁に跳ね返された形になったわけだが、アメリカでもストロングポイントとして戦えるものも見えた。それは、ティーショットの精度だ。

2023年コーンフェリーツアーでのフェアウェイキープ率は1位。ドライビングディスタンスは139位でパワーには圧倒されたが、2022年の日本ツアーでフェアウェイキープ率7位、トータルドライビング1位の精度を見せつけた。

課題はパーオン率。フェアウェイから2打目を打つ確率が誰よりも高かったにも関わらず、パーオン率は55位。2022年の日本ツアーではパーオン率は1位だったことを考えると、これは下部とはいえ米ツアーの厳しさを物語っている。

おそらく、アメリカではティーショットの飛距離にハンデがあることで2打目で使用するクラブがより長めになる。よって、パーオン率が低調に終わっている。

飛距離は短期間で伸びるものではない。米ツアーに戻って活躍するためには、2打目で持つ長めのクラブの精度を向上させる必要がある。それに成功すれば、ファーストパットの距離が短くなるためバーディ数が増え、3パット数が減り、好スコアのラウンドが増える期待が持てる。

■蟬川泰果の今季振り返りと来季のポイント

4月の関西オープンでプロとしての初優勝を飾った。その後は優勝争いに加わるものの優勝へは一歩届かない戦いを重ねたが、最終戦の日本シリーズJTカップで優勝。賞金ランキング2位に入った。

スタッツを見るとドライビングディスタンス6位やバーディ率2位など、攻撃力を表す項目で上位に入っている。結果、メルセデス・ベンツ トータルポイント(※)1位。

だが、分母が少なく好成績に直結しにくいイーグル率やサンドセーブ率のポイントで稼いでいる。

3位となった平均ストロークで、2024年は1位を目指したい。そうすれば、米ツアーを主戦場にする日が、より近づく。

特に上積みが必要なのがアイアン。パー4の累計スコアは3位タイで、パー5の累計スコアは1位。1打目でドライバーを使うホールではスコアを稼いだ一方、1打目で主にアイアンを使うパー3の累計スコアは47位タイと、うまくピンを攻められなかった。

アイアンの精度が向上すれば、パー3のスコアが向上する。それは平均ストローク向上を意味する。また、バーディ率やパーキープ率も向上するため、メルセデス・ベンツ トータルポイント1位が揺るぎ無いものになる。

(※)平均ストローク、平均パット、パーキープ率、パーオン率、バーディ率、イーグル率、ドライビングディスタンス、フェアウェイキープ率、サンドセーブ率の9部門の順位を合計した値。ポイントが小さいほど上位になる。

■米ツアー再挑戦、初挑戦へ

再挑戦と初挑戦。3人の年齢やこれまでの道のりは様々だが、世界ナンバー1ツアーの米ツアーへ向かうという大きな志は同じ。

2024年、日本ツアーを主戦場にしながらも、海外ツアーやメジャーに出場するチャンスはある。この3人は、状況次第でスポットでの海外ツアー参戦を狙っていくだろう。全米オープンの予選会などにも出場しながらメジャーの出場権獲得も狙っていくのではないだろうか。

石川、桂川、蟬川。苗字に‟川”の付く3人が、2024年の日本男子ゴルフ界を盛り上げそうだ。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。