■思春期にはちょっとした親子のトラブルも
練習していてやる気が感じられなかったりすると、よくお父さんに怒られていたようだ。永井氏は「どうしてもだらけてしまう時期があるから、その時は親が厳しく接して引っ張っていく必要があるんだな、と岩井親子を見ていて思う」と語る。
とはいえ、厳しく接するが故のハプニングも。中学2年生のある日、お父さんに怒られた千怜が、泣きながらキャディバッグを背負いクラブハウスを飛び出し、それを聞いたお父さんが慌てて車で千怜を追いかけていったところ、かなりの距離を自宅方向に進んでいた、ということがあったらしい。
これも今となっては、気持ちの強さや基礎体力の強さを表す一つのエピソードだろう。
■練習終了後、打席から一礼
時に厳しく接するお父さんの教育や、二人が切磋琢磨していく中で礼儀礼節の心も育っていき、今でも練習終了後、打席からフィールドに向かって一礼しているという。
それを見たジュニアの中には岩井姉妹の真似をして、練習終了後一礼してから帰るようになった子もいるらしい。さらに一般客の中にも一礼するようになった人がいるとのこと。
アットホームな練習場の雰囲気が、こういったところからも伝わってくる。
■プロになるまでスクールに入っていた
「プロになるまでスクールに入っていたよ。最終プロテストに向かう日の前日もスクールに来て、‟明日からいってきま~す”なんて言いながら帰っていった」
永井氏は、今や女子ゴルフ界の顔とも言える存在となった二人が、たった3、4年前までジュニアスクールで普通にレッスンを受けていた時の状況を、そのように笑いながら話す。
だが、2021年の最終プロテスト当時は笑えない状況にあった。
というのも、明愛の方は日本女子オープンでローアマを獲得したことで、この最終からのエントリー。一方、千怜は一次予選からの挑戦で、一次予選はトップ通過だったものの、二次予選はカットラインまでわずか3打という成績での通過だった。4日間であと4打悪ければ最終に進めていなかったのだ。
「どっちかが受かってどっちかが落ちたらどうしよう。アキちゃんは最近の調子から見ても大丈夫だろうけど、チーちゃんだけ落ちるようなことがあれば、さすがにかける言葉がないな、って思ってた」
それもそのはずである。プロテストは年に1度しかない(コロナ禍のこの年は、未開催だった前年分が繰り越しとなり2回開催)。落ちれば次のプロテストは来年である。
プロテストに合格しなければツアー予選会(QT)に出場できない。当然実力があってもツアーへ出場することができない。
小学2年生から指導してきた二人の立ち位置に、ここで開きが出ることを想像すると辛かった。
アマチュアの大会では成績が悪くても「次に向けて」と言える。だが、合格者たちが「もう二度と出たくない」と口をそろえるほどプロテストは過酷で、落ちた時に周囲は容易に「次!」とは言えない。
もしかしたら二人よりも永井氏の方がプレッシャーを感じて最終プロテストの4日間を過ごしていたかもしれない。
■プロになっても続く、勝ったり負けたり
永井氏の心配は杞憂に終わり、二人は一緒に合格した。それも余裕を持って。
プロテスト合格年の2021年、千怜が先にステップアップツアーで優勝した。すると、オープンウィークを挟み、今度は明愛が優勝。姉妹で2大会連続優勝を飾った。
レギュラーツアーのルーキーイヤーとなった2022年は千怜が2勝をあげ躍進。2023年は千怜の2勝を超える3勝をあげた明愛が年間女王争いに加わるほどの活躍を見せた。
このように、プロ入り後も、二人はライバルとして勝ったり負けたりしながら成長し続けている。
近い将来、主戦場を米ツアーに移してもそんな感じで‟世界のIWAI”に向けた階段を上り続けているのではないだろうか。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。
















