今季の日本女子ゴルフの主役は、すでに年間女王を確定させている飛ばし屋の竹田麗央。
31試合に出場し、国内メジャー2勝を含む年間8勝。トップ10は22回。獲得賞金は2億5913万16円で、2020-21シーズンに稲見萌寧が樹立した最多獲得賞金の記録を塗り替えている。
ドライビングディスタンスも263.06ヤードで現時点1位。このままいけば、この記録も更新する。
◆TOTO覇者・竹田麗央が米ツアーメンバー登録を完了 2025年がルーキー、開幕戦チャンピオン大会の出場権も獲得
21日から宮崎県の宮崎カントリークラブで、ツアーチャンピオンシップ リコーカップが開催される。
この日本女子ツアー最終戦でも、今季の勢いを象徴するようなプレーが見られるのだろうか。今季の竹田と2020-21シーズンの稲見のスタッツ比較、竹田のインパクト時の手元の浮き上がりを抑えたスイング、昨季までと違う点、について解説する。
■今季の竹田と20-21の稲見萌寧のスタッツ比較
2021年の稲見は他を圧倒するほどの強さを見せた。年間8勝、2020年の1勝と合わせて、2020-21年の統合シーズンは9勝をあげた。その結果、稼いだ賞金は2億5519万2049円。
東京五輪銀メダル獲得もあり、2021年の日本女子ゴルフの主役は稲見となった。
今季の竹田は、2020-21シーズンの稲見よりもインパクトがある成績を残しているといえる。
獲得賞金だけを見ると、小さな差だが、稲見は2020-21シーズンで45試合に出場している。1試合平均の獲得賞金は約567万円。対して今季の竹田は、約836万円となっており、ツアーチャンピオンシップで優勝すれば1試合平均が900万円を超える。
稲見はアイアンの名手で、パーオン率が高い。2020-21シーズンは75.7688%で1位。75%超えは驚異的と言われており、このシーズンで75%超えは稲見を含めて2人だけだった。
今季も75%超えは2人。内1人が竹田で順位は1位。そして、記録は77.8999%で稲見を2%以上、上回っている。
竹田は、2打目以降のショットのキレで勝負する稲見とは違い、ドライバーショットの飛距離を生かして(2打目以降の残り距離の短さを生かして)パーオン率を高めているが、今季の竹田の総合的なショット力は、2020-21シーズンの稲見よりも、秀でていると言えるかもしれない。
■竹田のスイング
竹田と言えば飛距離だが、ただクラブを強く振れているから飛距離が出ているのかといえばそうではない。
クラブを振った分のエネルギーをロスなくボールに伝えることで最大飛距離を出すことができる。
竹田のスイングを見ると、バックスイングでは右足への体重移動が大きい。そこからダウンスイングで左脚の力を使っていくわけだが、竹田の場合、左足へ体重を乗せこまず、左脚を上体の突っ込みを抑えるストッパーのように使っている。こうすることで、ビハインドザボールでのインパクトを実現させている。
さらにインパクトでは、前傾角度が深い。アドレス時よりもさらに前傾角度が深くなっている。
これにより、手元の浮きを抑えてクラブのライ角に合った形でインパクトでき、ボールのつかまりがよくなる。
というよりも、より確実にボールをつかまえるために手元の浮きを抑える意識を高めた結果、前傾角度が深まるアクションが顕著に表れるようになった、という方が正しいかもしれない。
■アプローチが向上
今季の竹田は、グリーンまわりからのアプローチショット関連のスタッツが昨季と比べて大きく向上した。
昨季、61.2319%で55位だったリカバリー率が、今季は現時点、69.3370%で6位となっている。さらに、35.1351%で73位だったサンドセーブ率が、今季は現時点、41.2500%で59位となっている。
「絶対寄せたい」とプレッシャーがかかる場面でも、フルショット時のスイングで表れている手元の浮きの抑えが、効くようになっていることで、グリーン周りからのショットの精度が向上しているのではないだろうか。
■米ツアーのコース向きか
竹田は日米共催のTOTOジャパンクラシックで優勝し、来季の米ツアーシード権を獲得したことで、来季の主戦場を米ツアーに移すことになった。
日本ツアーで実績を積んだ実力者でも、米ツアーでは苦戦するケースが目立つが、竹田は持ち前の飛距離を武器に、米ツアーの難しさをルーキーイヤーから乗り越えられるかもしれない。
その理由の一つが、米ツアーの方がフェアウェイが広い、という点。
今季が米ツアールーキーイヤーの、吉田優利、西郷真央、稲見のフェアウェイキープ率を見ると、3人とも、昨季の日本ツアーでのフェアウェイキープ率よりも高い。
吉田は昨季、日本ツアーで70.1173%、今季、米ツアーで73.86%。西郷は昨季、日本ツアーで61.8304%、今季、米ツアーで75.28%。稲見は昨季、日本ツアーで70.9867%、今季米ツアーで76.79%だった。
飛ばし屋揃いの米ツアーで無意識に力みが生じやすい中での、この数字は、フェアウェイの広さを表しているのではないだろうか。
ラフの存在をふまえてみても飛ばし屋のアドバンテージが大きいといわれている中、フェアウェイが広ければさらに飛ばし屋が有利となる。
日本ツアー時代、ドライバーショットは飛距離の方に優位性があり、方向の安定感には難があった西郷は、今季米ツアーでは、ポイントランキングが9位で、ルーキーオブザイヤーのレースでトップを快走する活躍を見せている。
これは、西郷自身の成長もあるだろうが、米ツアーのコースのフェアウェイの広さも手伝っているかもしれない。
竹田も西郷と同じ、方向よりも飛距離をウリにしている選手。‟多少曲げてもフェアウェイキープできる”コースは、味方になってくれるのではないだろうか。
■年間女王だけでなくドラコン女王も
竹田の今季のドライビングディスタンスは1位だが、2位の葭葉ルミ、3位の神谷そら、4位の穴井詩までは1ヤード以内の僅差。
この2位から4位の3名の中で唯一ツアーチャンピオンシップに出場する穴井に抜かれず、2位の葭葉の数字よりも下がらずに、大会を終えることができるのか。
ドライビングディスタンスのタイトルも置き土産に、米ツアーへ羽ばたくことになるのか、最終戦でも竹田の飛距離に注目だ。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。