近鉄OBが重宝される理由
2001年の優勝メンバーで、近鉄最後の選手会長だった礒部公一は、2009年に現役を引退したあと2017年までイーグルスのコーチをつとめた。その礒部が言う。
「近鉄の野球は豪快で、『いてまえ打線』で有名でした。でも僕は、細かいところをしっかり押さえたうえで強気で攻めるのが『いてまえ』だったと考えています。近鉄には、野球エリートと言われる人はほとんどいなくて、ほぼ全員が叩き上げ。雑草から育った選手ばかりです」
短所もある無名の選手を猛練習で鍛えあげ、一人前の選手に育てる。そのときに個性を壊さず、武器にしてきたという伝統があった。ただ才能に頼るのではなく、コーチとともに選手は成長していったのだ。
礒部は続ける。
「過去の選手を思い浮かべたとき、みなさん、力強くて、うるさいくらいに個性が強くて、ちょっとだけ欠点もあって、どこかで勝負弱くて……不格好かもしれないけど、カッコいい」
チームには、ベテランもいれば中堅も若手もいる。不動のレギュラーも、その座を奪おうとする選手もいる。野球選手としての出自も実績も違うのだから、「みんな一緒」のほうが難しい。
近鉄というチームは、それぞれの考え方を持ち、個人個人のペースで試合に臨みながらここ一番でがっちりとまとまり、勝負強さを発揮する集団だった。
そこで育った選手たちが他球団で多くの監督やコーチと出会い、コーチとして腕を磨いていった。
近鉄バファローズが“消滅”して16年。球団は消えても、“近鉄魂”を持つかつての選手たちがいまも、ほかの球団で選手を支え続けている。
著者プロフィール
元永知宏(もとながともひろ):スポーツライター
1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て独立。
著書に『期待はずれのドラフト1位』『レギュラーになれないきみへ』(岩波ジュニア新書)、『殴られて野球はうまくなる!?』(講談社+α文庫)、『荒木大輔のいた1980年の甲子園』『近鉄魂とはなんだったのか?』(集英社)、『プロ野球を選ばなかった怪物たち』『野球と暴力』(イースト・プレス)など。
愛媛のスポーツマガジン『E-dge』の編集長もつとめている。














