「大人も子供も笑顔で跳べる」廣田遥が語るトランポリンの可能性

トランポリン競技を専門とし、全日本トランポリン競技選手権大会10連覇を現役時代に達成。アテネ五輪、北京五輪の二大会にトランポリン種目で日本代表として出場した廣田遥さん。

スポーツコメンテーターやトランポリン教室の講師、最近ではトランポリンを使ったエクササイズの動画をYouTubeに投稿と、幅広く活動している廣田さんに、トランポリンとの出会い競技にのめり込んだきっかけなど、現在までの歩みを伺った。

※本インタビューはオンラインにて実施しています

トランポリンとの出会いはホームステイ

ーートランポリン競技に興味を抱いたきっかけをお聞かせください

廣田遥さん(以下敬称略):もともと小学生の時に抱いてた夢がトランポリン選手になりたいというものではなくて、映画の翻訳家になりたいという夢だったんです。戸田奈津子さんに憧れてそういうお仕事をしたいと思ってたんです。

ーーそれはどういった経緯で?

廣田:通っていた小学校では、一年生の頃から英語の授業があったんですよ。英語に触れる機会が多く、日本語じゃない言語で話せるっていうのがすごく楽しくて。

そこからNHK教育で放送されていた「フルハウス」を毎週見ていて海外というものに憧れがどんどん膨らんでいったんです。その影響で小学六年生の春休みに、オーストラリアにホームステイをしに行きました。

そしたらそのホームステイ先の家の庭に、偶然にもトランポリンがあって(笑)。ホストファミリーと一緒にトランポリンで遊んでた時に「楽しいなぁ」って思ったんです。

ーーすごい角度からトランポリンと出会っていたんですね(笑)。そこから競技として取り組んでいくようになったのは、どういった流れなんですか?

廣田:そもそもその当時、私は器械体操を真剣にやっていました。

小学二年生の時に、床の演技で二回宙返りはできたので、「トランポリンを使ったら4回くらい回れるんじゃないかな?」っていう、いかにも小学生が考えそうなことを思っていて、母にトランポリン教室を探してもらいそこから通い始めました。

器械体操の時と同じように、トランポリンを始めた時も「極めたいな」って思って教室に通っていました。なのでレクリエーションとしてではなく、きっちりと成績を残したいと思い、選手コースを希望して教室にも入りましたね。

ーーもともとそういう志向があったんですね。そこからトランポリンにのめり込んでいったのはどういった理由があったんですか?

廣田:アクロバットな動きがもともと好きで。トランポリンの上で回転できる浮遊感に魅せられましたね。器械体操の床とかと比べると、トランポリンは一回の跳躍で「浮いてる!」っていう感覚を味わえるのでそこですかね。

(ーーちなみになんですが、トランポリンでアクロバットな動きをして目が回るようなことってないんですか?

廣田:ないですね(笑)。遊園地のコーヒーカップとかもうめちゃくちゃ回してましたし(笑)。小学生の時とか母が送り迎えしてくれていたんですけど、車の中で宿題やったりとかもしていたので酔わないですね。)

トランポリンの道を選んだきっかけ

ーー競技として取り組んだトランポリンで、初めて出場した大会の成績はいかがでしたか?

廣田:すごく鮮明に覚えていて、『全日本ジュニアトランポリン競技選手権大会』というジュニアの中で一番大きな大会があって、中学校一年生の時にその大会に初めて出場できたんですけど、その時は47位でした

ーーそこから初めて「結果が出た」とご自身で感じたのはいつ頃ですか?

廣田:中学校三年生の時の『全日本ジュニアトランポリン競技選手権大会』ですね。最初の47位の二年後に3位になって初めて表彰台に登れて、そこでトランポリンでもやっていけるかもしれないって思いました。

というのも、47位という成績もあったので、実は高校受験のタイミングで海外に留学しようと思っていたんですよ。翻訳家になる夢があったので。でも、中学三年生の時に結果が出たので、これもしかしたらトランポリン頑張ったら全日本で優勝とかも夢じゃないのかもしれないと思ったので、トランポリンの道を選びました。

ーーそこがターニングポイントだったんですね。そこからトランポリンの競技者として歩み始めるわけですが、成績だけを切り取ってみると全日本選手権10連覇を筆頭に輝かしいキャリアかと思います。そのあたりで何か苦労などされたりしましたか?

廣田:ありました。器械体操の基礎があったから良かった部分もあるんですが、そのクセがあるからこそ、そこはすごく苦労はしました。器械体操はロンダート・バク転・宙返りといった技があって、それらは自分の肩を後ろに倒して技をかけていくんですが、トランポリンは肩を倒さずに、真上に上がらなきゃダメなんです。でも器械体操で後ろに行くクセがついていたので、それを切り替えるのがすごく難しかったです。よく怪我もしましたね。

あとは、トランポリンって一発勝負なんです。やり直しがきかない。そこがトランポリンの醍醐味でもあるんですけど、それに対するメンタルトレーニング等は意識して習得しました。

スランプを抜けたきっかけは母のサポート

ーーメンタルについてですが、プレッシャーや緊張感などをどう乗り越えていったんですか?

廣田:国内の大会で10連覇していく中でも、自分の目標はあくまで世界だったので、世界で戦おうとしている自分が、日本で1位じゃないっていうのはありえないっていうのをまず自分の中で持っていて、日本でトップっていうのは最低限のレベルと捉えていました。なので、日本の大会でのプレッシャーっていうのはそんなに感じてなかったと思います。

世界を見ているという考えが、ある意味保守的にならずに挑戦者でいつづけられた理由なので、プレッシャーを感じなかったのかと思います。

ーーそこから五輪、つまり世界への挑戦になりますが、その時のご自身の心境やそれにかける想いなどはいかがでしたか?

廣田:全日本選手権を高校二年生の時に初優勝して、その頃にはシドニー五輪でトランポリンが競技として初めて採用されて盛り上がっていました。ただその時の実力ではそこまで五輪は視野に入っていなかったんです。というのも高校一年生の時はすごいスランプで、この道を選んだのに「これだったら留学していたほうが良かった」と思うぐらいに。

ただその時にメンタルが重要だと気が付いて、メンタルトレーニングを始めたんです。呼吸法だったり、自分にポジティブな声をかけるアファメーションとか。当時はまだアメリカから入ってきたメンタルトレーニングがそんなに浸透してない時期だったんですけど。

ーーそれはチームとして取り組んでいたんですか?

廣田:いえ、スランプを見た母が、トランポリンはメンタルのスポーツだから本番で自分の力を出すために心の強さが必要なんじゃないかと教えてくれて。そこからそのメンタルトレーニングをできる教室を母がまた探してくれたんですけど、私は練習があって行けなかったんです。

なので代わりに母がそのメンタルトレーニングの教室に通って、そこで学んだものを私に教えてくれました。そのメンタルトレーニングのおかげでそのスランプから抜けて優勝できたんです。

その優勝で世界と戦えるところまで来たのかなと意識し始めましたね。その後にナショナルチームにも選ばれて、ワールドカップにも出場しました。ただ実際に世界大会に出てみたら、自分のレベルはまだまだだなと気づきました。ただその先にアテネ五輪が見えだしていたので、もっとレベルをあげて世界で活躍できる選手になりたいと思っていました。

引退後の活動

ーー引退後の活動について教えてください

廣田:大学を卒業してからは、阪南大学でサポートを受けながら現役生活を続けていました。北京五輪が終わり現役を引退してからは、阪南大学で職員のお仕事を続けながら、トランポリン教室の講師としての活動やスポーツコメンテーターとしてのお仕事もしていました。

ーーそれらを経て、現在YouTubeでの活動なども幅広くされていますよね。

廣田:家庭用サイズのトランポリンを使ったエクササイズを発信しています。トランポリンを跳びたいといったお声は頂きますが、なかなか競技サイズのトランポリンの供給が追いついていないんですね。

それもあって身近に感じて頂けていないっていうのが、トランポリンを普及する側にとっては工夫が必要だなと感じていて、私自身も応援してくれている方々と一緒に何か身体を動かしたりできないかと思っていました。

なので今年夏に開催予定だった五輪に合わせて、トランポリンの普及と側方的な応援の気持ちも込めてエクササイズ動画を配信していこうと計画していた中で、新型コロナウィルスの影響で五輪が延期になりました。また、日本全国の学校も休校になり、子供たちが学校に行けなくてお子さんが運動不足だったりストレスをためているだろうと思いました。そこで、急遽お子さん向けの動画を配信しました

――なぜトランポリンエクササイズに注目されたのですが?

トランポリンの普及ももちろんですが、ダイエットや運動不足解消、ストレス発散に自分のやってきたトランポリンがすごく効果のある運動ということに気づいて、それをもっと知ってもらいたいという部分が大きいですね。

あとこのコロナウィルスの影響で家庭用のトランポリンが売れているという声を聞きますが、普通に跳ぶこと以外に何ができるかわからない方もおられるみたいで、そのような方々にもぜひこの動画を参考にして頂けたら嬉しいです。

ーー動画も拝見したのですが、すごく明るい表情が印象的でした。

廣田:トランポリンって跳んでるとみんな笑顔になるんですよ。人って嬉しい時に「やったー!」って飛び跳ねるじゃないですか。その時の脳波と家庭用のトランポリンを跳んでいる時の脳波が似ていると運動生理学の先生がおっしゃっていて。怒ったり悲しい表情でトランポリンって確かに跳びにくいんですよ。

ーー確かにその感情でトランポリンを跳ぶことないですね。

廣田:そうなんですよ。大人も子供も、年齢性別問わずみんな笑顔で跳べるのがトランポリンの持っている可能性なのかなって思いますね。トランポリンは全身運動なので、楽しんで跳んでいる間に体幹が鍛えられたり、有酸素運動で脂肪が燃焼したり、三半規管が鍛えられたりもします。ご高齢の方が足腰を鍛えるのにも、小さいお子さんの運動機能の向上にも効果があるので、とても奥行きのある健康器具なんです。なので幅広い方々に動画を通じて魅力を知っていただけたらと思っています。

ーー幅広い世代で楽しめるのは非常に魅力的ですよね。そのような普及活動を含め、今後の活動についてもお聞かせください。

廣田:YouTubeでの動画配信を、ダイエットだったり色々なカテゴリーに分けて発信していって多くの方に見ていただけたらと。また、トランポリンのイベントを開催して皆さんと一緒に運動することを楽しみたいのと同時に、トランポリンというもの自体を普及していきたいなと思っています。

ーー最後に、応援してくださっている方やこの記事の読者にメッセージをお願いします。

廣田:コロナウィルスの影響で、ここ数カ月できないことが多かったかと思います。ただこんな時こそ、私もそうですが気持ちの持ちようが大事で、できないことに目を向けるのではなく、できることを探して、前向きな気持ちを持ちつつ乗り越えていけたらなと思います。心と身体がつながっていることは現役時代に身をもって経験しているので、心と身体を元気に保つこと、元気でいられるような状態を作っていくことを意識して「一緒に頑張っていきましょう」と皆さんにお伝えしたいです。

ーーありがとうございました。

自粛ムードの中でのインタビューだったが、廣田さんは常に笑顔を絶やさず受け答えをしてくれたのが非常に印象的だった。

緊急事態宣言が解除はされたがまだまだ気は抜けず、外出がしづらい人にとってトランポリンは絶好の運動不足解消法かもしれない。

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