■広く受け止められるべき宇佐美氏の偉業

NPB歴代登板数ランキング(75登板以上が対象。2020年シーズン終了時) 出典:NPB公式サイト

1984年に阪神福間納投手が、1961年に鉄腕・稲尾和久投手が作ったシーズン最多登板記録の78試合を上回りそうになった際には、当時の阪神の安藤統男監督に対し、「稲尾の記録は400イニング以上を投げて作られたもので、中継ぎ登板だけで形だけの記録を作るべきではない」という趣旨の手紙を送ったという逸話さえ残している。

1961年の稲尾は404イニングを投げ抜いている。シーズン最多記録は別表の通り、すでに更新されているものの、100イニングに到達したのさえ阪神の久保田智之投手のみである。

また、稲尾は78試合登板という記録以外にも、1959年の75試合(402.1イニング)、1963年には74試合(386イニング)、1958年には72試合(373イニング)を記録しており、時代は異なれど鉄腕の価値が色褪せるとはない。やはり、その鉄腕が作ったシーズン最多登板数と中継ぎのみの登板数を同列に比較するのは、いささか失敬というものだろう。

サッカーでは、数字で表彰されるのは得点王ぐらいなもの。しかし、野球はスコアシートに記された記録を眺めるだけで、試合状況を脳裏に浮かべることができるほど、他スポーツと比較し数字や記録が重要な意味を持つスポーツである。

プロ野球において記録はそれだけ重要であり、それを書籍のみならず、データベースとして後世に残した宇佐美氏の偉業は、もっと重く受け止められて当然だろう。その宇佐美氏に対し、一票も投じなかった特別表彰委員会の「有識者」ぶりは、いかがなものかと首を傾げざるを得ない。

Yahoo!ニュース個人2014年1月20日 掲載分に加筆・転載

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著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨークで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。

著書に『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』、『麗しきバーテンダーたち』など。