【スポーツ回顧録】ロッテ吉井理人投手コーチのロッキーズ時代を振り返る コロラドは「頭が痛い」

古巣ニューヨーク・メッツを相手に力投するコロラド・ロッキーズの吉井理人投手(2000年8月17日) (c)Getty Images

本稿は、ニューヨーク・メッツからコロラド・ロッキーズに移籍した吉井理人を2000年5月24日にCNN.comにて取材、そのインタビューの再録となる。吉井は1985年に近鉄バッファローズに入団、リリーフエースとして活躍後、東京ヤクルト・スワローズに移籍。3年連続で2桁勝利を挙げ、ヤクルトの日本一に貢献。FA宣言すると長嶋巨人から3年13億円と言われる誘いを蹴り98年、メッツに年俸わずか2400万円で入団。FA宣言しながら、初めて「巨人を蹴った男」とされる。99年には12勝を挙げた後、トレードでロッキーズに。現在では「名伯楽」とまで呼ばれるようになった吉井コーチの原点が見え隠れする。

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コロラド・ロッキーズの吉井理人が24日、CNNで行われたライブ・チャット・コーナーに登場。通訳を通じて、CNN.comの読者からの質問を受けるとともに、本サイトに向けインタビューに答えた。

吉井が今シーズンから移籍したコロラド・ロッキーズのホーム・グランド「クアーズ・フィールド」は標高約1600mと高く、ボールがよく飛ぶ球場とされる。吉井にとって近鉄時代の盟友でもある野茂英雄が、ロサンゼルス・ドジャーズ時代の96年、日本人として初めてノーヒットノーランを達成した球場として日本でも知られる。ピッチャーにとってかなり不利と言われ現在、同球場で使用されるボールはMLB機構の許可により加湿した上で「試合球」とされているほどだ。

その点を訊ねると「まだ、2回しか投げたことがないんでよく分からないですけど、個人的にはあまり違いは感じないですね」と投手としての感覚に差はないとしながらも「ただ、(クアーズ・フィールドでの試合では)どちらのチームも得点が多いので、その点は(客観的に)やはり違うのかなと思いはします」と述べた。

ただしその標高のため、実際にコロラド州デンバーの空気はうすいと感じる。「ピッチングの時よりも、普段の生活の中で時折、頭が痛くなったり、練習しているとすぐに息が上がったりするので(標高を)感じるときはあります」と、生活の難しさを口にした。コロラド州は日本からのマラソン選手などが高地トレーニングなどで訪れる土地。そんな街で日常を送る違和感はあるそうだ。

メッツからの移籍に関しては、(元ロッテかつ当時メッツの)ボビー・バレンタイン監督のもとで投げることにも「特に固執してないですよ」と特に違和感はないとのこと。「ただ、(アメリカで暮らす中で)ニューヨークという街がすごく好きなんで、ニューヨークを懐かしむことはありますね」と、デンバーの田舎町に住みつつ、いまだビッグ・アップルに惹かれる気持ちを表現していた。

97年の渡米当初、米『ニューヨーク・タイムズ』紙に「ピッチングよりも部屋探しに苦労している」と書かれたくだりは有名。わずか2400万円の年俸ながら、メジャーリーガーとしてニューヨークでの部屋探しは、かなり難易度が高かったようだ。それでも、世界一有名な都市で2年を過ごすうち、そこに居心地の好さを見出したという。

CNNのチャット・コーナーでは、「日本のプロ野球の選手とは、まだ連絡を取っていますか」と熊本の女性から英語での質問もあり「(近鉄の)赤堀元之)と(ヤクルトの)伊藤智仁)とよく連絡をとってます」とぼそぼそと低い声で応えた。
 

■メジャーリーグで投げる「難しさ」とは……

アメリカで野球することの難しさについて問われると「日本にいたら、なかなか対戦することのないスーパースター……例えばマーク・マクガイア選手(98年に70本塁打し、61年にロジャー・マリスが樹立した61本のシーズン最多本塁打記録を更新。その後、サンフランシスコ・ジャイアンツバリー・ボンズが73本とさらに更新)などと対戦する時、自分のあこがれの気持ちを押し殺して、それを悟られないように投げるのが難しい」と関西弁で本音もチラリ。

吉井は大の競馬ファン。シーズン中は「とにかく家でリラックスするよう心がけている」と答えたが、シーズンオフは「毎週末、競馬にでかける」とか。アメリカの3冠レースは、しっかりカバー。ケンタッキー・ダービーフサイチペガサスが優勝した件にも言及、「勝ったのはうれしかった」とコメントした。

同投手は、今季1勝5敗の防御率4.33。しかし、今季の調子について尋ねると「調整もうまく行ったんです。調子はいいですよ。」と明るく答えていた。今後の目標は、なるべく長く大リーグ投手として活躍を続け、できればワールド・シリーズで勝つこととか。「今は数字的に悪いですが、これからもベストを尽くすので、見ていてください」とその意気込みを語った。

吉井理人●1965年4月20日大阪府出身。近鉄、ヤクルト、メッツ、ロッキーズ、モントリオール・エキスポスなど日米で活躍。NPBでは通算89勝82敗62セーブ、MLBでは32勝47敗の記録を残した。引退後、2008年より日本ハムファイターズの投手コーチに就任、ソフトバンク・ホークス、日本ハムと渡り、現在はロッテで指導する。

CNN.com 2000年5月25日掲載分を翻訳、加筆、転載

佐々木朗希を支える吉井理人コーチなど 元近鉄戦士たちが重宝される理由

著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨークで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。

著書に『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』、『麗しきバーテンダーたち』など。


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