森田健作! 剣道を愚弄するのもいい加減にしろ!

朝日新聞のデジタルメディアに転載された森田健作の記事

学生時代剣道場もしくは剣道部に所属した者以外で、剣道というスポーツを理解する方は、ほぼ皆無としてよいかと思う。

現代の柔道のように「技あり」や「優勢」などもなく、その勝敗は「一本」をとってのみ決する。そして、この「一本」が、素人目にはまったく判別がつかない。あらかじめ断っておくがフェンシングを貶めるつもりでもなんでもない。しかし、フェンシングのように電気式の判定機器が導入され、ポイントが明らかな剣術競技とは異なり、審判が目視する以外に判定は明らかにされない。少しでもわかりやすく説明するなら「一本」しかない柔道と表現するしかない。

竹刀が少々、に当たった、小手に触れた……このレベルでは到底一本とはならない。お互い相打ちのように見える際も、明らかに相手を「切った」と判断される側のみが「一本」となり勝者となりえる。剣道は、スポーツという形に昇華され、柔道、空手道、弓道などと並び今に残る数少ない武道だ。

■元千葉県知事 「森田健作=剣道」のイメージ

この武道を、もしくはそうでなくてもスポーツを、愚弄する者のひとりに、元千葉県知事森田健作、本名・鈴木栄治という輩がいる。

昭和40年男である私にとって、彼の俳優としての活躍は記憶にない。ドラマ『おれは男だ』のオンエア時期には、まだ青春ドラマを観るような年齢ではなかった。作中、森田は剣道部を結成、竹刀をふるって活躍する……そんなストーリーらしい。それがゆえに「森田=剣道」のイメージは強烈に根付いており、本人も堂々と剣道家を名乗り、経歴に「剣道二段」と記載して来た。剣道の競技人口は21世紀の今でも170万人ほどおり、森田が剣道をしていても、不思議はない。それまでは気にもとめなかった。

しかし、千葉県知事選に打って出た際、これが経歴詐称であると露呈する。この国には政治家の経歴詐称を容認する歴史が綿々と受け継がれており、彼が千葉県知事選で大勝を飾る妨げにもならなかった。それもこの国の文化だ、もはや致し方あるまい。愚衆による政治は、古代ギリシャから続いているほどの歴史遺産だ。タレント政治家が、東京アクアラインの通行料を下げてくれただけで、千葉県民も大満足。彼に県政を3期も一任した。

結果、史上まれに見る超大型台風房総半島を襲おうが、新型コロナウイルスが首都圏を席巻しようが、無策のまま。自身の無力さを知った森田は、4期目の立候補を見送った。

本稿は政治批判が目的ではない。あくまで剣道がテーマだ。

■竹刀の持ち方さえ知らない森田

タレント政治家が去りめでたしめでたし。あとは愚衆を喜ばす茶番にでも出演し、余生を送ってもらえれば、誰も気に留めないと思っていた矢先、スポーツ紙にこんな写真が掲載された。所属芸能事務所の幹部に就任し、芸能界に復帰する……そんなことはどうでもいい。事もあろうか、その写真で竹刀を振り下ろしている。


参照元:森田健作「きちんとした事実を伝えたい」コロナ禍での知事経験語りたい

手習いにでも少し剣道を知る者がこの写真を眺めれば、ひと目でわかるだろう。森田は竹刀の握り方ひとつ知らないのだ。聞けば、叔父という人物が道場主であり、そこに通ううちに「二段を名乗ることを許された」と言う。森田のこの握りは、剣道家の間では「馬糞握り」と呼ばれる持ち方であり、要は剣道を知らないに人間に棒切れを持たすと、自然とそれを握るような持ち方をする点から、こう揶揄されている。

Wikiなので信ぴょう性はないが、どうも中学時代、高校生に剣道で勝利したとも吹聴しているようだ。こうなると、森田の父が剣道三段、叔父が道場主というストーリーも脚色ではないかと疑わざるを得ない。剣道三段の父が、昇段審査も受けない息子が「二段だ」と名乗るのを許すとは到底思えない。いや、そんな事態を看過するような親なら、息子がスポイルされたとしても致し方あるまい。

■老害タレントは剣道を愚弄するのはやめよ!

剣道の段位……残念ながら、これを持っていたからと言って社会で役に立つことはほとんどない。就職に優位に働くわけでもなく、資格手当が付くわけでもない。せいぜい後進の指導に必要な程度だ。それでも、私のように、強くもなく、県大会に名を残したこともなく、一本獲った経験よりも、一本取られた記憶ばかりの剣道経験者として、段位を持つことは唯一のプライドでもある。

冬の朝4時から道場に出て、床を雑巾がけし、寒稽古とやらにひっぱり出され、挙げ句先輩方に容赦なくぼこぼこにされ、初稽古では道着姿で夜中に自転車を漕ぎ、10キロは先にある順天堂大学に通い、何段も上の大学生にしばき倒され、何が目的かもわからなく、ただ辞めずに剣道を続け、その結果、得たのが紙ペラである段位である(未経験者の方へ、特に雑巾がけせずとも、ボコボコにされずとも、真面目に精進すれば段位は獲れます。誤解なきよう)。

それでも、経歴詐称がバレた後まで、竹刀を振って自己アピールに余念のない老害タレントに、これ以上剣道を愚弄されるのは、まっぴらごめんだ。

森田健作よ、これ以上、剣道を愚弄するのはやめよ! 

そして、今後の人生で竹刀も、木刀も握るのは止めてくれ。詐称がバレた後でも、真面目に道場に通えば、年齢と知名度から段位ぐらいすぐにもらえただろう。しかし、君はそうした試みさえ挑まなかったのだろう。「おれは男だ」、雀の涙ほどでも、そう思うなら、もう剣道には近づかないでもらいたい。

なお、諸先輩方に至っては本稿を目にしたからと言って、道場に復帰するような私へのお誘いは予めお断りしておく。五十肩で両手は上がらず、シートベルトを締めるにも四苦八苦するような年齢ゆえ。

今振り返ると、70歳七段の先生と相対した過去など、本当にありがたい稽古だったのだとしみじみ考える。

聞けば昨今、競技人口の減少も著しいという。我が母校、千葉県立四街道高等学校剣道部でも、部員減少により団体戦出場も危ぶまれる年代も多いという。いや、しかし成長期に剣道ぐらいの日本の文化に触れておくべきだ。さすれば、ニューヨークでも大手を振って、アメリカ人に日本文化のレクチャーぐらいできると言うものだ。

そんな剣道さえ知らず、虚勢と虚飾に満ちた森田くんも考えて見れば、不憫でならん。

これを持って、私ながらの剣道礼賛とする。

著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨークで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。

著書に『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』、『麗しきバーテンダーたち』など。

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